『こわれ帽子』 詩 金子みすゞ『こわれ帽子』 詩 金子みすゞ てんてん手毬、 おてて手から、辷ってころげて、 乞食の子供にひろわれた。 ... 睨みや、睨んではうってくれて、 行くか、帰るか、あち向きかけて、 麦藁帽子をすぽりとかぶりゃ、 すぽり、こわれた、帽子、 つばがすぽりとくびまで抜けた。 くるり、ふりむき、アハハと笑うた、 私もうっかり、アハハと笑うた。 こわれ帽子の、そのゆくみちにゃ、 とんぼ、千も萬も舞い舞いしてた。 手まりは欲しし、怖さは怖し、