『となりの杏』 詩 金子みすゞ『となりの杏』 詩 金子みすゞ 花はのこらず見えました、 雨も、月夜も、ありました。 散ればちらちら垣越えて 風呂のなかにも浮きました。 葉かげの小さい実のころは みんな忘れて居りました。 熟れてまっかになるころは いつかくるかと待ちました。 そして私のもろうたは あんず二つでありました。