『魚売りの小母さんに』 詩 金子みすゞ『魚売りの小母さんに』 詩 金子みすゞ 魚売りさん、 あっち向いてね、 いま、あたし、 花を挿すのよ、 さくらの花を。 花かんざしも 星のよなピンも、 なんにもないもの、さびしいもの。 ほうら、小母さん、 あなたの髪に、 あのお芝居のお姫さまの、 かんざしよりかきれいな花が、 山のさくらが咲きました。 魚売りさん、 こっち向いてね、 いま、あたし、 花を挿したの、 さくらの花を。 だって小母さん、あたしの髪にゃ、