全国均衡のあるブロードバンド基盤の整備に関する研究会 最終報告 「次世代ブロードバンド構想2010」(平成17年7月15日) 抜粋。


ディバイドを放置した場合の消極的効果

社会的効果
ブロードバンドに対するニーズは地域を問わず高まっているが、ディバイドを放置した場合には、情報社会に取り残されるのではないかとの不安や不満が住民の間に拡大するだけでなく、地域で様々な活動に取り組もうとする住民や事業者の活動を制約し、機会を縮減することが考えられる。また、例えば都市部の大学等で学んだ地方出身の若年層が、ブロードバンドが利用できないことを理由に地元へのUターンを避け都市部で就職する事例も見られる。更に、企業誘致に関しては、「ブロードバンドが利用できるからその地域へ進出する」という積極的判断基準として用いられるよりも、「ブロードバンドが利用できない地域へは進出しない」という消極的な判断基準に用いられるほど、ブロードバンドの持つ社会経済活動への重要性が増している。
このように、ディバイドを放置することは、こうした地域の経済活性化や地域の再生を阻害する一因となることが懸念される。
経済的効果
中間報告においても論じたように、デジタル・ディバイドを放置した場合、ダイヤルアップやISDN といったナローバンドのユーザにおいては次のような状況が発生し、インターネットの利用に関する便益が著しく低下するのみならず、以下に示すような負の経済効果を生ずることにもなり得る。
① 待機時間の長時間化
ブロードバンドの普及に伴い、OS やセキュリティソフトの最新版への更新をオンラインでのダウンロードで行うことが通例となっているほか、ウェブサイトのページあたりデータ量も増加を続けており88、またユーザにおいても、メガバイト級の大容量データ(画像や図表を多く含むプレゼンテーション資料等)を添付ファイルとする電子メールを送信することも一般化しているため、これらのダウンロード中におけるナローバンド・ユーザの待機時間は長時間化する。
② 作業効率の低下・作業時間の削減
電話回線をインターネット用のダイヤルアップ回線として共用している場合には、待機時間中には電話やFAX も利用できず関係者との一切の通信が遮断され、またダウンロードを終えるまではパソコンそのものを利用できないこととなる。この結果、作業効率が著しく低下し、事実上の作業時間削減と同様の効果が生じる。
これらを定量的に分析すれば、ブロードバンドが利用できないことによる1 世帯あたりの負の経済効果は、2004 年には年間76 万円であったのが、2010 年には年間138 万円に拡大すると試算される。
ディバイドの迅速な解消の必要性
以上論じたように、デジタル・ディバイドによるブロードバンドが利用可能な場合と不可能な場合における社会経済的格差は、時間の経過とともに拡大するものと考えられ、デジタル・ディバイドを迅速に解消することが必要である。