台湾子会社の設立を考慮する日本企業は、今後のガバナンスはどうされるか疑問をもっているのでしょう。会社の規模と方針によりますが、台湾子会社が株式会社(中国語:股份有限公司)の場合、3名以上の董事(取締役)と数名の監察人(監査役)を置くパターンが一般的です。今日はその選任方法と報酬の決め方をご紹介します(以下、董事と監察人を併せて「役員」という)。

 

 

1. 役員の選任方法

 

 

役員の選任方法は、日本企業が100%の株主であるか否かにより異なります。100%の株主である場合、より簡易な手続きを適用するということです。

 

(1)  通常の場合

 

台湾法では、役員の選任は「累積投票制」を適用するとされています。即ち、株主は1株毎に選出すべき役員の人数と同数の投票権があり、集中して一人に投票する、又は分配して数人に投票することができ、また、投票権を表章する票の獲得がより多い者が当選するという制度です(会社法198条1項、227条)。

 

選任する前に、基本的には株主が候補者を提案することができますが、法人株主が提案する候補者は2つのパターンに分けられています。即ち、自らを候補者とする(会社法271項、【パターン】という)、もしくは法人株主が指名した自然人を候補者とするか(会社法272項、【パターン】という)、という2つのパターンがあります

 

当選した場合、【パターン①】の役員を務めるのが「法人株主」である一方、【パターン②】の役員を務めるのが「当該自然人」です。但し、【パターン①】の場合、法人株主が自ら役員の職務を行使することが事実上できないため、法人株主は、ある自然人を指定して役員の職務を行使させることになります(27条1項但し書き)。当該法人株主の代表者が当然のごとく役員になるわけではありません。

 

後述(2)の場合を除き、基本的には法人株主による選任でない場合と同じく、株主総会で「累積投票制」に基づいて選任されることになります。

 

(2) 唯一法人株主の会社の場合

 

これに対し、日本企業が100%の株主である場合、特別規定を適用し、前述の選任手続を適用しないとされています(会社法128条の1の4項)。この場合、唯一の法人株主である日本企業は、株主総会を開催することなく、直接書面で役員を指名すればよく、任期中、いつでも別の者を指名して交代させることができます(27条3項)。

 

ちなみに、唯一法人株主の会社では、株主総会の職権(法令や定款により株主総会で決議すべき事項等)は、董事会が行使することになります(会社法128条の1の1項)。株主総会を開催する必要がありません。

 

 

2. 役員報酬の決め方

 

 

会社法によると、定款に別段の定めがなければ、役員の報酬は、いずれも株主総会の決議をもって決めなければならず、事後に追認することはできないとされています(196条1項、227条)。また、法人株主から選任された役員の報酬については、法令上特別な定めがないので、法人株主による選任でない場合と同じく、法人株主から選任された役員の報酬は株主総会で事前承認することが必要です。

 

実務上よくあるのは、日本企業が本社の従業員を台湾子会社の役員として派遣することです。この場合、当該役員は本社の従業員として給与等の支給を受けつつ、台湾子会社の役員報酬をもらえるかという疑問が生じるかもしれません。

 

台湾の会社法上、必ず役員に報酬を支払わなければならないという定めがありません。実務では会社の運営不況により、役員に報酬を支払わないと株主総会で決議したケースもあります。また、法人株主により指名された役員の報酬について、別段の定めがないので、基本的には前述の通り、株主総会が決めると考えます。

 

基本的には当事者合意に委ねるので、各社の状況により一概に言えませんが、筆者の経験では、日本企業(親会社)が従業員を台湾子会社の役員として兼務させる場合、①親会社での従業員給与のみを支払う、②従業員給与に加えて台湾出向の手当等を支払う、もしくは③従業員給与、手当等に加えて毎年の経営状況に基づいて役員報酬を支払う、という幾つかのパターンがあります。ただ、③の場合は役員報酬の決定に株主総会決議が必要であるため、唯一法人株主であればその董事会決議(株主総会の職権を代行する)が必要となります。

 

 

結語 

 

 

日本企業が台湾子会社の100%である場合、唯一法人株主に関する特別な規定を適用し、役員の選任や報酬を比較的簡易な手続で決めることができるのに対し、他の株主(例えば、ジョイントベンチャー)がいれば、結局、株主総会で役員を選任し、報酬を決める必要があります。