おはようございます。


いつもありがとうございます。


皆さんもご存知と思いますが、先日こんなインシデントがありました。(国土交通省の定める重大インシデントには当たらないそうですが、今回は便宜上インシデントと記します。)



このことについて、今日は説明したいと思います。


そもそも、旅客機は基本的に「常に管制官からの許可を受けて飛行」しています。

あらかじめ管制機関にフライトプランを提出し、そのプラン通り飛行する許可を受けています。


しかし、空港や空域には多数の航空機がおり、管制官は「許可を出したフライトプランをもとに交通整理」をしないといけません。地上移動、離陸、着陸や上昇、降下高度など、常に管制官から「許可」を得ないと旅客機は勝手に動いてはいけないのです。


その「許可を得る手段」が、現在でもアナログの「無線」を使っているんです。


洋上では「CPDLC」といって、テキストメッセージによる許可を得られる機体もあります。しかし空港などタイムリーに指示を与えないといけない場合、昔ながらの「無線」がいまだに重宝されているんです。


皆さんも急いで物事を伝えなければならない時には「LINE」ではなく「電話」をすると思います。

それと同じです。


その「無線」が今回は使えないくなった、ということです。


そもそも旅客機には「無線」が2〜3式搭載されていて、一つ壊れても問題ありません。

私も数千時間飛んでいますが、そもそも一度も「無線」が故障したことはありません。

特に今回はJALの最新鋭機A350です。

非常に信頼性の高い機器なんですが、今回は記事にもあるように「内部のスタックマイク」が原因とのこと。


皆さんもご存知のように、無線は「一方送信」です。


電話のように「双方向通信」ではないので、一度に話す人は一人だけです。

一つの航空機側から「送信ボタン」を押している間は、他の人はその周波数で話すことはできません。


今回はまさにそんな状況だったようで、結果的に「管制官からの指示が全く聞き取れない」ということになります。


さて旅客機はどうやって着陸まで向かうのか?


航空法には、しっかりと「通信機器故障時の飛行方法」が定められています。

それに則って旅客機は飛行し、着陸することになります。


詳細はまだわかりませんが、データからすると降下指示として15000feetまで出ていたようです。

今回は千歳VOR上空まで15000feetで向かい、そこで高度処理をしてVOR-Aアプローチから01Rに着陸したようですね。


フライトレーダーから




通信機器が故障した場合の処置を参照すると、千歳アプローチとコンタクト後に通信機器の故障が発生した場合で天気が悪いケースでは、今回のようにアプローチをすることになっています。


そして着陸許可は「ライトガン」で得ます。


「ライトガン」とは??


日本語では「指向信号灯」といいます。


管制塔から「緑色または赤色、白色のライトを航空機に向けて発射し、管制指示を伝える」ものになります。

私も実際に見たことはありませんが、イメージはコンサートホールにあるピンスポット照明のちょっと小ぶりな感じと聞いたことがあります。


さて、このライトガンの意味はこちらになります。



今回、01Rのファイナルまで進入してきたJAL機は管制塔から「緑の不動光」を受け、無事着陸したのでしょう。


全て規定に則り、何も不安全なことなく不具合に対処した当該乗務員と管制官には感服致します。


素晴らしいお仕事お疲れ様でした。



ということで、以上が今回のインシデントの説明になります。


まだ詳しいことはわかりませんが、こういう報告が上がるたびに私たちパイロットも、改めて「こんな時どうする??」という勉強をし直す機会にしています。


不測の事態に備えて日々勉強を重ねるパイロットですが、今回のインシデントでも改めてその重要性を再認識し、安全運航に活かしていこうと思っています。




改めて言いますが、飛行機は安全な乗り物です。

皆さんも安心して飛行機に乗ってくださいね。


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