中学3年生の新年度が始まったばかりの、英語の授業でのこと。


新しい男性教諭が教室に現れ、初回の授業で自己紹介を兼ねた少し変わった話題を切り出した。


「実はね、先生の友達に、今テレビでバンバン活躍している有名人がいます。誰か当ててみてください」


その有名人との出会いは、先生がまだ大学生だった頃に遡る。


彼女は先生の大学時代の仲良しグループの一人で、男女数人でよく一緒に遊びに出かけていた。


彼女はグループ内で「イモ」という愛称で親しまれていた。


そのイモは、大学時代から「将来は芸能人になりたいんだよね」と話していた。


彼女がそう宣言した瞬間、先生はつい笑いながら「えー、イモが芸能人?なれるわけないだろ!」と冗談交じりに返したという。


グループの他の友達も笑いながら同調し、場は和気あいあいとした雰囲気に包まれた。


大学を卒業してからは、先生は教員の道に進み、忙しい日々が始まった。


授業の準備や部活動の指導、生徒たちとの向き合い方に追われ、大学時代の友達との連絡は自然と減っていった。


イモとも、卒業後はすっかり疎遠になってしまい、互いの近況を知る機会もなくなっていた。


そんなある日、先生がいつものように学校から疲れて帰宅し、リビングで何気なくテレビをつけた。


画面に映し出された光景に、先生は思わず目を疑った。


なんと、チーターと一緒に全力疾走しているイモの姿がそこにあったのだ。


ここまで話すと、先生は生徒たちに問いかけた。「さあ、もう誰だか分かりますよね?」


そして、こう続けた。「イモトアヤコです」


あの「イモ」は、今やテレビでおなじみの人気タレント、イモトアヤコだったのだ。


テレビでチーターと走る姿は、彼女がレギュラー出演する人気番組『世界の果てまでイッテQ!』のワンシーンだった。


驚き冷めやらぬ先生は、久しぶりにイモトに連絡を取ってみようと思い立ち、「イモ、テレビ見たぞ!めっちゃすごいじゃん!」とメールを送ってみた。


しかし、彼女も芸能界で多忙な日々を送っていたためか、残念ながら返信は来なかったという。


話の締めくくりとして、先生は少し真剣な表情になり、こう語った。「あのとき、僕が『芸能人になれるわけない』なんて冗談で言ったことを、今でもちょっと後悔しています。イモトは本気で夢を追いかけて、それを本当に叶えた。夢って、どんなに大きくても、信じて努力すれば実現できるんだなって、彼女を見て改めて思いました」


このエピソードを通じて、先生はただの自己紹介にとどまらず、夢を追いかける大切さや、軽はずみに誰かの可能性を否定しないことの重要さを、さりげなく生徒たちに伝えたかったのかもしれない。