『砂漠』~独断と偏見漲る読書感想~ | ~店長の戯言~

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こちらは、最上階に邪教徒と地縛霊が住まい、階下では脱毛サロンと育毛サロンがしのぎを削る、建物自体は古めかしくも抜群の耐震強度を誇る雑居ビルにて、ユーズドクロージングを売り捌く男、基い漢が綴る、愉快痛快奇々妙々なる駄文の羅列でございます。

『砂漠』

砂漠

伊坂幸太郎 著


お奨め度(10点満点)
★★★★★★★★★☆(9点)






~あらすじ~
仙台の某国立大学に入学して知り合った男女5人。全く異なるタイプの5人はしかし次第に親しくなり、麻雀をしたり合コンをしたり、バイトに精を出したり恋を成就させたり、犯罪に巻き込まれたり超能力を駆使したりして、瞬く間に過ぎてゆく(ここがキモ)大学生活を謳歌する。そんな誰もが自分に置き換えて想起できる学生生活の1ページを、春夏秋冬のパートで綴った珠玉の青春小説。


~感想~
以前、アニメ『時をかける少女』の感想 でもさんざっぱら書きましたが、いい歳こいて今だ青春に未練タラタラな私Tです。
青春を性旬とはき違え、そこにあるのはセックスか死か、『Sex Or Die』の旗印の下、暇さえあればそっちのピンクロードに、全13章どころか130章に引き伸ばせるくらい四六時中思いを巡らせていた、生粋の色情狂だったガラスの十代。お陰でその頃をちょっと思い返そうとするだけで、ホットパンツにローラースケート姿の在りし日のシャブ中赤坂君がしゃかりきコロンブスでフラッシュバックしてしまうPTSDを患った次第です。
・・・話を本筋に戻します。伊坂幸太郎。大好きな作家の一人です。初めて読んだ彼の著書は確か『陽気なギャングが地球を回す』でした。初見の感想は、

「けっ!こぉのとっちゃん坊やがぁ!やたらと読点使ってなーにスカした文章書いてやがるんでぃべらんめぃ!」

下町に足を踏み入れたこともないくせに江戸っ子口調でそう批判したのは、東北大学法学部出身という彼のプロフィールに過剰反応したからでした。東北大学法学部。その昔、模試でE判定を下されたほろ苦い過去が、ホットパンツ姿のシャブ中赤坂君とセットで蘇ってきます。
とは言うものの、そのスカした感じが軽妙洒脱とも解釈できた私はそこから一気呵成に彼の著書を読み漁り、今となっては「そろそろファンレターでも認めようかしら?」なんて気味の悪い考えが頭を過ぎるほどでして、そんな思いを決定的にしたのがこの『砂漠』との出合いでした。
こうして伊坂ワールドで理想の青春を疑似体験した私は、損得勘定抜きには人間関係の構築すらままならない昨今の大人な自分に嫌気がさし、久し振りに大学時代の友人に電話を掛けてみました。

「今度、皆で集まって麻雀でもしねえ?」

伊坂ワールドに感化されまくりの私の呼びかけに、受話口から粋なメッセージが返ってきました。

お掛けになった電話番号は、現在使われておりません――。

無機質な女性の声はまるで、青春を青春としてきっちり謳歌してこなかったツケが回ってきたのよこの海綿体野郎、と静かに諭しているようでした。


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