客一組。
月末だからかな?
厳しいねぇ。
今日、髪の毛引っ詰めて出勤したら
ママに無茶だめ出しされた…
オバサンみたいよ。
だって。
あれ。会社だと逆に喜ばれるのにな。
確かにギュッとしすぎたかもだけどさ。
オバサンて…
もー28ですもん~当たり前やない~
ケープしすぎてパリパリだしな。
しかし
寒すぎだろ。疲れました。
私が絶対になれないもの。
ふわふわの”おんならしい”生き物。
白くて、小さくて、繊細で、華奢で。
瞳は限りなく純粋で。
でも、無邪気な態度。
マルチーズみたいな感じ。
私は
浅黒くて、大きくて、横柄で、横暴だ。
瞳は常に鈍く光り
いつも疑心に苛まれている。
ほんと、不細工だなって思うわけ。
なんだこの顔。
こんなんで
”きれいね” ”かわいいね”
なんて、嘘を言われて照れているなんて
本当に信じられないわ。
銀座はじめてから
これまた化粧が濃くなって
日に日に濃くなっていくだけ。
私は夜蝶になりぞこないの蛾なりたいわけじゃない。
白くてふわふわした女の子らしい生き物になりたい。
電車の窓越しにみる自分の顔に落胆した。
とはいえ、生まれてこの方
この顔で良いことなんてないわけだから
今に始まった悩みではないのだけど
でも最近、
改めてそう感じる時が多くなった。
化粧さえすれば
別に目も当てられないような顔では無いのは分かってる。
そもそも、きちんとすべての機能が正常であることに
親に感謝しなければならないのだけど
でも、どうして
もっと、マシな顔にしてくれなかったのかなって
そう思ってしまう。30にもなる女がですよ。
私は化粧しなきゃ
ほんとうにあり得ない。
外に出てはいけない。
ほんと不細工。
もーどうしよう。
化粧して
なんとか、人前に出れる。
何だこの顔。
白くて、ふわふわで
女の子らしかったら
人に愛された生活が出来たかもしれないのにな。
とにかく、昼間に行動がとれない。
だらけてるとかじゃなくて
なんか色々と怖くてね。
病気なんじゃないかと
おもうけど
ちがう。
私はそんなに弱くないよ。
でも、
彼の家が貸出になったと聞いた。
家を引き払ったんだね。
どういう理由かも知らない。
家賃を折半していたから
独りになって払いきれなくなった?
どうであれ、それを聞いたとき
本当に一つの家庭を壊してしまったことに
ものすごい後悔の重圧を感じた。
銀座のボロい中華屋のカウンターで
その話をしながら涙ぐむ私に親友が
大きな声で叱責した。
ちがうよ!
何言ってんだよ。
馬っ鹿じゃないの。
あたしたちに住所知られたから
引っ越しただけだよ。
あのね。
あんたは何も悪くないの。
そりゃ、悪い事はしたよ。
でも、もう十分すぎるくらいの制裁は受けた。
それに、これから
判決を下されたら償わなければならない。
それで十分でしょ。
あの男はね、間違いなく
あんたじゃなくても、
ちがう女と、いづれこの結果になっていたから。
そういう男なんだよ。
と、チャーハンと餃子をかきこみながら言った。
ああ。
私はこの人が友達で良かったな。
心おきなく、側いれたり
この歳でシングルベットで二人で並んで寝れるくらい
近い存在なのは彼女だけだ。
どんな私でも
いつもこうやって励ましてくれる。
誰かのために
ここまで尽くしてくれる人はいる?
「所詮は他人」
というフィールドに生きながら
ここまで慈しめる関係って素敵だ。
まー他人だけどさ
ここまでくると姉妹とかわらないわな。
そう彼女は言った。
はは。私もそれ数日前に思ったよ。
なんとなく、苦笑しながら私は答えた。
中華屋をでてレトロなコーヒー屋で
深夜3時という時間をきにもせず
二人で
ブラックコーヒーとイチゴタルトをたいらげた。
何年経っても変わらない私たちの関係。
こんな後景を、もう何度見ただろうか。
昔から
少し外れた感覚の私たちは
いつも、こうやって
「普通じゃない女」で暮らしてきてる。
ねぇ。
こんなんだから、だからいけないんだよね。
帰りのタクシーで私は彼女に言った。
ん?
だから、こんな生活をさ
お互い何年ものらりくらりとやってきちゃってるから
いけないんだよね。
だから普通じゃないんだよね。
だから結婚もできないのかな。
タクシーから流れる都会の色を眺めながら
彼女に背を向けて呟いた私に
たぶん、私はずっとこのまま
何年経っても変わらないな。
結婚したってそうだよ。
くだらない考えはよせと言わんばかりに
ため息混じりで彼女が答えた。
自分が悩んでいることが
すこし馬鹿らしく感じた。
少しして、彼女はタクシーから降りた。
独り、家までの道を残された私は
今まで生きてきたことは
間違っていないと
そう、彼女と居た時は思えたけど
でも、孤独が訪れた瞬間
やっぱり
間違っていたんじゃないかと
そんな気持ちでいっぱいになった。
彼の妻のように生きたら幸せだったか?
特に華のないような人生で
平凡な王道を歩み、旦那に浮気される結果が待っていた女。
無い物ねだりか?
きっとそうだ。
でも、
その家庭を壊してしまうような女になりたい
なんて思う女はどこにもいないだろう。
だから、私みたいになりたい
なんて人は皆無だ。
それって、かなり侘しいよね。
メンタル弱いなあ。
もう、だめじゃんね。