だが、私は家に帰っていない。
「熱はないのか?」
「36.8?高めじゃない?」
「荷物は家の中に入れないで!」
「絶対に持ち込まないで!」
「感染してない?」
「出来ないなら帰ってこないで!」
帰宅するや否や、リビング奥から浴びせられる差別的な言葉の数々。
今に始まったことでもないし、ある程度は覚悟は出来てはいたが、やはり堪える。
この状態でしばらく一緒に過ごすことができるだろうか?
自粛期間の長さが、私の我慢の閾値をすっかり下げてしまっていた。
「なら、実家で寝泊りするわ」
私は玄関で靴を脱ぐこともなく、そのまま荷物片手に、近くの実家へ身を寄せた。