◆良弁杉由来(ろうべんすぎのゆらい)

 

 

・志賀の里の段

渚の方・豊竹睦太夫

小枝・竹本小住太夫

腰元・竹本碩太夫

鶴澤清友

ツレ、八雲(琴)  鶴澤友之助、野澤錦吾

 

・桜の宮物狂いの段

竹本津駒太夫・鶴澤藤蔵

竹本津國太夫・鶴澤清馗

豊竹芳穂太夫・鶴澤寛太郎

豊竹咲寿太夫・鶴澤清公、鶴澤清允

 

・東大寺の段

豊竹靖太夫・野澤錦糸

 

・二月堂の段

竹本千歳太夫・豊澤富助

 

(人形役割)

乳母小枝・桐竹紋臣

光丸・吉田玉峻

渚の方・吉田和生

腰元藤野・桐竹紋吉

腰元春枝・桐竹勘次郎

花売娘・吉田簑紫郎

吹玉屋・吉田勘市

船頭・桐竹亀次

雲弥坊・吉田簑一郎

先供・吉田勘介

良弁僧正・吉田玉男

弟子僧・吉田玉翔、吉田玉彦

その他大勢

 

 

 

◆増補忠臣蔵

・本蔵下屋敷の段

前    豊竹呂太夫・竹澤團七

切    豊竹咲太夫・鶴澤燕三、鶴澤燕二郎(琴)

 

(人形役割)

井浪伴左衛門・吉田玉佳

加古川本蔵・吉田玉志

三千歳姫・吉田一輔

小姓・桐竹勘昇

桃井若狭介・吉田玉助

その他大勢

 

 

昼の部は、ちょっと地味な演目が並ぶ。

二演目共に明治期に初演されたもので、「明治150年記念」関連なのだそうだ。

 

「良弁杉由来」は、鷲が幼児を攫う物語で、古くからこの類型の話がある中、

石山寺縁起とも結びつけて作られた作品だ。

 

今回は、光丸が鷲に攫われるシーンに始まり、

母渚の方が狂乱の流浪の旅に出て三十年後、桜の宮で正気にかえり、

東大寺の僧正が息子ではないか!?

という情報を得て、非人の身を恥じながらも東大寺に出かけ、

僧正に出会い、身元が判明するまで。

 

序幕は、何といっても本物そっくりの鷲が登場して、これが幼児を攫うところがすごい!

(作ったのはどなたかな?おそらくは、勘十郎さんかと・・・)

文楽ならではの迫力だ。

 

幼子を「悪鳥」に連れ攫われた母は、その場からわが子を探しにあてどなく歩く旅に・・。

残された母は、いつしか狂っていく。

桜の宮に現れた時には、30年の歳月が過ぎ去り、

美しかった風貌は、老いた女乞食になってしまっている。

 

そんな辛い場面だが、「桜の宮狂乱の場」は、

桜が咲き誇る神社に集まる物売りたちが登場して、

客席を群衆に見立てて賑わう様を演出している。

二日に一回交換するという、吹き玉売りの透明玉など、見ていて楽しい。

 

いよいよ女乞食となった渚が、子供たちに棒で追われて登場する痛ましいシーンへ。

この場は、五挺の三味線が圧巻の演奏を聴かせる。

 

最後に渚が、息子の消息?を得て、

志賀の故郷に帰ろうとしていたのを一転、南を目指し、

奈良の東大寺へ・・・

と、心が最高潮に募る場面。

 

この直前に、藤蔵さんが糸を交換されていた。

休憩時にたまたまロビーでお見かけしたので伺うと、

これは「保険」とのこと。

約30分間弾きっぱなしの中で、そこだけちょっと若手が演奏する部分がある。

この先の最高潮に向けて、一段ギアを上げるため、万が一にも糸が切れないように・・

という配慮からだったそうだ。

 

最高潮は糸の音に乗って、

渚の感情も高まりを見せていく。

 

この物語は、やはり明治期の作品らしく、

先行作品(能の「隅田川」など)の影響を受けているなぁ、と思う。

 

東大寺、二月堂と、続いていくが、

あとはハッピーエンドに向けてのおまけという感じだ。

 

渚=和生、良弁僧正=玉男の配役での親子の邂逅は、幕切れ近く。

この良弁の頭は、「僧正」というもので、動きが少ないのだそうだ。

眉も目も口も動かない。(悟りすましたからなのか・・)

それでいて、長年探し求めた母に出会えたという、人生最大のハッピーな出来事を、

どう表現するのか?これは難しい!難役なのでしょうねぇ。

 

そのあとで、「増補 忠臣蔵」が付くが、

これは、忠臣蔵外伝で、二段目「松伐り」のその後で、

本筋からは外れたスピンオフ。

 

加古川本蔵と、主人若狭之助の物語。

本蔵が、判官を抱きとめたあと、九段目の山科閑居へ至るまでを、

想像して創ったもの。

物語は、どこやらで見たような、いろんな話の寄せ集め的なもので、

あまり面白くはない。

 

切場で、咲太夫・燕三の演奏が聴けたことが、最大の収穫だった。

 

12月は、「鎌倉三代記」と、鑑賞教室が「寺子屋」だそうだ。もうちょっと目新しい演目も期待した

かった。