「べっぴんさん」が終了して一週間。
思い返すと最初から最後までしっかり朝ドラ観たのは「ちりとてちん」以来かも。
という訳でせっかく半年も見続けたドラマでしたので、改めて「べっぴんさん」を振り返ってみたい。

 

今回の朝ドラ、まず何よりその見どころは「百田夏菜子がどこまでやれんのか?」というところでした。次に「幕が上がる」でも良い演技をしていた芳根京子がどんなヒロインを演じてくれるのだろう?という期待感。

 

女優・百田夏菜子。
期待もありましたが正直不安いっぱいでした。三振か特大ホームランっていうタイプですから長期のドラマは大丈夫かな?と。
「幕が上がる」の名演も、ももクロでしかできない様なリアルと演技の狭間をいく台本と、黒木華などの配役があってこそハマったと思いますし、今回の朝ドラは主役では無いのでそこまでの奇跡は期待できない。
で、結果は、、


良かったんじゃないですか?
モノノフ目線の加点はあったとしても、充分合格点に達していたでしょ?
女学生時代、激貧子育て時代、キアリス創成期、マダム時代。
それぞれに多田良子、小澤良子としてキャラクターが動いていた。
キアリスメンバーの中で一番年齢の演じ分けができていたんじゃなかろうか?
もちろん龍ちゃんがいて、勝二がいてという部分も大きかったとは思いますが。
それでも、女学生時代の妄想と我儘、子育ての苦労、マダムの落ち着きと、大切な要素をしっかり演じる事ができていたと思います。
朝ドラ見ていて「百田夏菜子」だと思ったことは無かったですからね。
新聞に型紙引いてるシーンは秀逸でした。龍ちゃん叱りつけるとこも。
この調子で大河ドラマ「おんな城主直虎」にも出てくれないかな?遠州弁丸出しの農家のおかみさんとかどうですか?視聴率0.2%ぐらい上がりますよ?


次の注目点の芳根京子。
印象としては、「勿体無い」という感想。
なんだか、芳根さんの魅力を十分に引き出せていない感じがしました。
キアリス創業ぐらいまでは繋がりがあったのですが、最終的にキャラクターの芯もなんだか収まりきらないし、何かと泣きすぎだし、娘への接し方が?だし。
ヒロインだけど全体のサブストーリーのつなぎ役みたいな位置付けになってしまっていたように思います。出産したぐらいまではグッとくるシーンも結構あったのですが。


逆に言うと、百田さんもそうですが、脇役の名演が光ったとも。特に女性陣。
キアリスメンバーを務めた谷村美月さん、土村芳さん。
キヨさん役の宮田圭子さん、悦子様の滝裕可里さん、五月役の久保田紗友さん。
そして何より姉、ユリ役の蓮佛美沙子さんが素晴らしかった!
それと子役の子の子はみんな良かった。


谷村さんはキアリスメンバーの中でも一歩引いた位置にあってキアリスに厚みをもたらしてくれました。クールながら時折みせる優しい表情が良かったです。良子との絡みは特に面白かった。眉毛の演技が印象深い。
土村さんは入院前後の演技が良かった。あとおばあちゃんになってのイヤラしさも。
キヨさんも良かったですねー、絶えず優しさに溢れる演技。忠さんに旅に誘われるシーンは宮田さんご高齢ですがとっても可愛いらしかった。ドキッとしましたね。
悦子様は悦子様!すみれがキアリスを紹介するシーンはこのドラマで一番好きなシーンかも。
五月の久保田さんも独り痩せ我慢で生きる女性から母までを上手く演じていたと思います。キヨさんとの絡みが泣けます。
蓮佛さんは今回のドラマで一番株を上げたんじゃないか?と思うぐらい全編に渡って存在感が在りました。強いけど弱い女性を見事に演じてました。闇市で翻弄される心の動き、母となっての強さ、夫への愛情、素晴らしかったです。キヨさんに弱みみせるところとか泣けたなぁ。


すみれがつなぎ役みたいな位置付けになってしまったのは、夫の紀夫くんと娘のさくら(思春期以降)というすみれ一家の描き方が不味く、主人公としての芯を勝ち得なかったからではないかと思う。


まず、一番スッキリしなかったのが、紀夫くん。
基礎設定は内向的だけど実は熱い所がある人物。親に対して涙ながらに自分の意見を言うすみれに衝撃を受け、そのインパクトと女学生すみれの美しさのインパクトが重なりそれが恋となる純粋な青年である。
婿にいくことを良しとし、すみれと結婚、出征までは良かったと思うのですが、その後の設定と物語の運びがスッキリしない。
ただでさえ内向的でちょっと社会性に難がある性格だったのに、長期の収容所生活で騙されより人間不信になるという追い討ち設定はいらなかったのではないか?
そこまでの設定を付けるのならば、最終週近くまで人間不信が治らないぐらいやらないと、余りにも紀夫くんにとっての戦争体験が軽いものになってしまう。
五十八さんに一喝されてすぐ坂東商店入社しちゃうとことか、何より栄輔との確執は容易に乗り越えれないでしょ。
すみれが戦争未亡人になったと思わせておいて、栄輔と再婚するのかどうかとギリギリまで引っ張ったのも、「紀夫生還」のインパクトが大きくなったし、その後の栄輔に厚みを与えたのだけども、紀夫くんの存在に対しては十分消化しきれずモヤモヤを残す結果になった。


次にさくら。
幼稚園までは紀夫ゆずりの気配りを見せる幼気な子だったのだか、高校入学頃から5週に渡る壮大なる反抗期。
この間に起きた出来事として、五十八さん死去、メリアス工場買収問題、五月の妊娠・出産に、ダイキュウ小山と悦子様の結婚、中西西條くん入社。
思春期独特の暴走感はわかりますが、もう少し描きようがあったのではないか?
この間のメリアス工場の一件もモヤっとしているし、工場とのゴタゴタをもう少し深く描いた方が、五十八さん、栄輔とのことももっとスッキリ物語が流れたのではないかと思う。
さくらの育児についても龍ちゃんは職場で面倒見ながらという場面もあったのだから、さくらも店の片隅でお絵かきしている様子とかが有ってもよかったし、将来デザインに進む伏線にもなったのでは。紙粘土こねたエピソードとかも拾われてないし。


ドラマ全体に月曜日に起承転結の結がくるシーンが多かった様に思うけど、演出家の挑戦があったのだろうか?
何かの結が週頭にあってそれから3つぐらいのエピソードが展開しながら、そのうち主のエピソードが淡々と流れていたと思うと、木曜金曜ぐらいに降って湧いた様な転があり土曜日までに一応問題が解決され、月曜日に大円団的な。



改めて振り返って見ましたが、メインはちょっと疑問点が多かったですが、サブストーリーは良い流れが多かった様に思いますね。
ユリの人生、五月の人生、良子一家。
それと、名言が多かったですね。
麻田さんやヨーソロのママと沁みるセリフが沢山あったと思います。


百田さんをはじめ俳優陣は良い仕事をした。しかしメインのストーリー展開はイマイチだった、というのが総評ですかね。
今後、テレビなんかで蓮佛さんや宮田さんみかけたら、おっと思う様になりそう。
あとはスピンオフを楽しみにして待つ!