「自分たちの税金を、生活保護利用者の酒やギャンブルに使われたくない」は何が問題なのか
この記事の基本的な姿勢というのは、恐らく社会の弱者的な立場の人の現実を訴えることが、目的なのかなぁ、、とは、思う。でも、やっぱりこの記事については、うーん??と思ったので、ちょっとよく考え直してみた。
まず、この方の考えの全体像が、自分にはちょっと理解できないのだけれど、
主張の具体的目的 酒やギャンブルに費消されるのを防ぐために、生活保護の支給の際にプリペイドカード等による購入品の制限に反対。
・理由1 判例で、生活保護給付の使い途は、受給者の自由である。
・理由2 プリペイドカード制度は、依存症の治療にならない。
・理由3 プライバシー侵害
結論 「税金」で行われてきた生活保護制度65年間の蓄積を、無駄にすべきではありません
→ つまり制度は変えるな! 今後も今までと同様に、生活保護費が酒やギャンブルに費消されるのを容認しろ、、と、
え?、、やっぱり嫌ですw
↓以下、反論
この記事の筆者は、判例を根拠に、プリペイドカード導入に反対しています。
「1.保護費の使途は自由なので、酒もギャンブルも自由です
確定した判例(中嶋学資保険訴訟)で確認されています。 」
では、その判例とやらを確認してみましょう。
中嶋学資保険訴訟 をキーワードに検索をかけたら、赤旗の記事がヒットしました。この記事では、「高校進学のため費用を蓄えることは、生活保護法の趣旨に反しない」との初判断を示しました」と判例を説明しています。赤旗の記事では、酒もギャンブルも自由です、というようなことは書いていませんね。
この記事で判決日がわかったので、それを手がかりに判例を探します。
平成11(行ツ)38 保護変更決定処分取消,損害賠償請求事件 平成16年3月16日 最高裁判所第三小法廷
判例概要
平成7(行コ)5 保護変更決定処分取消請求,損害賠償請求控訴事件 平成10年10月9日 福岡高等裁判所
判例概要
判決文を読むと少なくともあの記事の筆者が主張するような
「「保護費の使途は自由だからこそ『自立の助長』に役立つ。だから自由でなくてはならない。したがって学資に使ってよい」という判決が、既に確定しています。
「保護費の使途は自由」なので、酒もギャンブルも含め、「何に使うか」を問題にすること自体がナンセンスです。」
という主張について、学資保険は正当化されていますが、酒やギャンブルについて正当化の根拠となるような直接的な表現はありません。
たぶん、筆者の「自由」の根拠になり得るのは、原告が「これをどのように使用するかは、支給の趣旨目的に反するものでない限り、原則として、受給権者の自由にゆだねられているというべきであり、」と主張して、訴訟としては勝訴したことかと思います。(恐らく、孫引きとか伝聞で得た程度の知識だろう思うけど、、)
しかし、最高裁の判決では、「保護金品又は被保護者の金銭若しくは物品を貯蓄等に
充てることは本来同法の予定するところではないというべきである。」として、そもそも保護費の使途に制限を加えること自体を正当化しており、使途が受給者の自由であるとはしていません。
更に、最高裁の判決では「自由」という文言はなく、「合理的な運営」と認定されています。
、「このようにして給付される保護金品並びに被保護者の金銭及び物品(以下「保護金品等」という。)を要保護者の需要に完全に合致させることは,事柄の性質上困難であり,同法は,世帯主等に当該世帯の家計の合理的な運営をゆだねているものと解するのが相当である。そうすると,被保護者が保護金品等によって生活していく中で,支出の節約の努力(同法60条参照)等によって貯蓄等に回すことの可能な金員がずることも考えられないではなく,同法も,保護金品等を一定の期間内に使い切ることまでは要求していないものというべきである。同法4条1項,8条1項の各規定も,要保護者の保有するすべての資産等を最低限度の生活のために使い切った上でなければ保護が許されないとするものではない。」
現実的に必要な支出を把握するのが困難であるから、「合理的な運営に任せている」のであり、それを「自由」と解釈するのは、現実にはそういう解釈の人もいるとは思うが、かなりの拡大解釈であって、やはり、勝手気ままに使えるとはなっていません。
また、「生活保護法の趣旨目的にかなった目的と態様で保護金品等を原資としてされた貯蓄等は,収入認定の対象とすべき資産には当たらないというべきである。」「本件学資保険に加入し,給付金等を原資として保険料月額3000円を支払っていたことは,生活保護法の趣旨目的にかなったものであるということができるから,本件返戻金は,それが同法の趣旨目的に反する使われ方をしたなどの事情がうかがわれない本件においては,同法4条1項にいう資産等又は同法8条1項にいう金銭等には当たらず,収入認定すべき資産に当たらないというべきである」
とあるように、容認されているのはあくまで学資保険であり、ギャンブルやら酒についての言及はされていません。また、容認されている理由も、あくまで生活保護法の趣旨に沿っているからであり、高裁判決と同様の判断になっています。
筆者の理由3とも相違するのは、考え方として受給者の必要品を正確に把握するという考え自体は正当化されており、現実的に不可能であるから、お任せしている ということです。つまり、受給者の必要な正確な需要品の把握について、技術的に管理できるのであれば、それは制度として可能である、と読めます。
このように判例を検証すると、保護費は何に使ってもオッケー♪ とはなっていないし、受給者の支出の管理も正当化もされています。
あと、理由2ですが、「2.「生活保護でギャンブル」の問題点は、お金がかかりすぎること」
→これについては、だから保護費でギャンブルはダメ。それでおしまいです。
筆者は、受給費でギャンブルが不可能とする措置が依存症の治療にならない、というが、精神疾患であるなら医療給付の対象にすべきであり、制度的にそれを阻害しているような根拠の提示はは見当たりません。
また、現実に保護費での過度の飲酒やギャンブルが可能となっている現状をそのままにしておくのは、行政が依存症の、イネイブラーとなっているのであり、容認できないと思うのです。
追加ですが、「、「自然な感情だから正しい」「自然な感情は認められるべきである」と言い切れるのでしょうか? 」について
高裁判決では、学資保険が認容された理由として、「一般の国民感情に照らして違和感を覚えるようなものであるとは到底いえない。」としています。逆に言うと、生活保護の使途は、一般の国民感情に照らして違和感を覚えるようなものは認められないということです。
以上。
フリーランスの物書きさんに反論するのは、ちょっと心苦しいし、基本的に善意で書いていることだとは思うんですけどね、、、、