僕はとうの昔に絶望したはずだった。
この世界に。
今のこの世の中に。
もうどうでも良くなって、
僕はビルから身を投げた。
だけど。
「残念ながら」
そう、残念ながら。
「ここでお前は生きる」
それは、死の宣告よりも酷な宣告であった。
人間は死ぬと天国とか地獄とか行くもんだと思っていた。でも、実際は。
「まあ、ずっとじゃないがね。君は100の生きている人間を救済するまで死ねない。」
死ねない?死んだのに?
わけがわからない。
ビルから飛び降りて、全身に衝撃を受けた後の記憶はない。気がついたら、ここにいた。
真っ白な椅子に座り、真っ白な部屋の中で。窓の外には青い空と花畑が広がっている。
そして、今、甲高い少女の声が部屋の中で響いている。
「救済って、何をするんだ?」
「僕と一緒に生きている世界に行く。」
「君には姿がないのかい?」
「ずっと君のポケットの中にいるんだけど」
そう言えば、胸ポケットの中がモゾモゾ動いている。
驚いた。
少女だと思っていた正体は小動物だった。
ちゃんと分類すれば、モモンガらしき生き物であった。真っ白な身体に黒くて大きな目。
その目で僕を見上げていた。
「驚くのも無理ないね。僕はリリィ。君のパートナーだよ」
これが僕とリリィの出逢いだった。