ディーンさんが音楽について語るとき、なんて世界は広く深く素晴しいんだろうって思う。特にふくりゅうさんに取材されているときのディーンさん。胸底に溜まっている思いが安心して目の前に引き出されてゆく感じ。そして、その言葉、語彙はなんて豊かで美味なんだろう。DEAN FUJIOKAの音楽現在地。一粒ずつ味わいながら何度も何度もリピ読みしたい。ふくりゅうさんのインタビュー、ありがとうございます。
DEAN FUJIOKAが「地鳴り」にこだわった背景
(一部、というかかなり引用させていただきます。※インタビューの流れがよくわかるふくりゅうさんの素晴しい質問も勝手に要約しています)
着目すべきはミュージシャンDEAN FUJIOKAのキャラクター像と近い、聡明かつ影のあるヒーロー感を持つ設定。主題歌となった「Shelly」は日本語〜英語〜中国語で綴られたトリリンガルなリリックであり、挿入歌「Searching For The Ghost」で鳴り響く、ビリー・アイリッシュ以降を感じさせるドープな音像は日本のヒットチャートとは逸脱した先鋭的なサウンドに仕上げられた。まさに規格外、しかしマスのど真ん中でDEAN FUJIOKAは大好きな音楽を、自分ならではの表現として繰り広げている。
●5曲入りEP『Shelly』が完成しての気持ち
サウンド面で言うと、ビリー・アイリッシュが音楽の世界に提示した音像のアプローチが自分の中で大きかったですね。いろんなものが一周したんだなっていうか。彼女やビリー・アイリッシュのお兄さんフィニアス・オコンネルの存在って、自分はシアトルに住んでいた人間なのでカート・コバーンを初めて知ったときの感覚に近かったんですよ。USやインターナショナルでは、ヒップホップやトラップがマジョリティーのなか、ポスト・マローンやビリー・アイリッシュみたいな人が出てきたのが象徴的ですよね。だからこそ、自分はどんな音楽を作るべきなんのかってことに迷いなく向き合えたのが本作だと思います。
●リード曲「Shelly」の歌詞
歌詞の部分で3つの言語が混じるというのは、1stアルバム『Cycle』の頃になし崩し的に表現した方法論だったんです。振り返ると、当時自分自身がそんな構成の脳みそだったというか。あれが自然だったんですけど、今回はドラマ『シャーロック』の主題歌ということで、逆算してフォーマットとしての必要を感じたので言語を混ぜてみました。この辺も、一周した感じがありますね。まぐれではなくコントロールした形で出せたのは自分のなかではチャレンジでした。サウンドの方向性とメロディーが求める言語感で、自然に出てくる要素を追ったらこのバランスになりました。「Shelly」という曲は、ドラマに出演する登場人物たちを俯瞰している女神のような視点で作りたかったんです。グループだったら数人のヴォーカリストが歌いまわしているイメージで。でも、自分はソロなので言語を切り替えることで手綱を握れた感じがしています。
●音像がドープな「Searching For The Ghost」は、DEANさんのルーツであるオルタナティヴ・ロックをデジタライズした再構築サウンドに感じました。
それは嬉しいですね。最初に、フジテレビのプロデューサーと演出チーフや監督と主題歌「Shelly」の打ち合わせをしていた時に、オープニング曲もお願いしたいって頼まれました。謎解きドラマなので『シャーロック』らしい都会に潜む闇とか悪意、幽霊を捕まえるような感覚で作りました。冒険的なテーマ曲にしたかったんです。ブラスを入れたいなと思って。「Shelly」にはストリングスが入っているんですけどね。トラップのビートであったりループミュージック的な土台がある上でどれだけオーケストレーションというかクラシカルな要素を自分なりにマッチングできるかという実験でした。
最初から地鳴りがするようなブラスアタックが欲しくて。ポップスでも、そんな音の使い方って海外では増えてきている印象があったんです。BLACKPINKなどK-POPでも使われていて。シドニーでライブを観た時に大きな会場でもブラスがバチーンと決まるところが気持ちよくって。とにかく地鳴りをどう生み出せるかにサウンド面ではこだわりました。
●サビ歌い出しの“君の名はmystery”という刺さるパンチライン、ドラマの登場人物が思い浮かぶリンク感
物語の主人公、ベースがちょっとやさぐれている感じ(笑)。いきなり地鳴りがきて、そこから都会の闇、本当の姿が見えてくるというか。迷い込んで謎を解き明かすみたいな雰囲気が、令和の東京にぴったりだと思ったんです。
ドラマで言うシャーロック(誉獅子雄)とワトソン(若宮潤一)、そして仲間たちが、なぜ人は犯罪を犯すのか? という謎や衝動にぶつかっていくために強固なサウンドが必要で。生ぬるい曲じゃダメだったんですよ。それはお茶の間感覚ではなく、生理的に思わせられる強さが必要で。音の選び方にこだわりましたね。エンディングではドリル音を左右に振ってみたり、不気味な感じを醸し出したくて空間を広げたらブラックホールに吸い込まれるみたいにシュッと音で表現してみたり。肥大化する意識と顕微鏡で覗いてる感じの両面、DNAに込められた宿命みたいなものや可能性、犯罪心理学など、いろんな影響を受けて生まれた曲です
●ドラマにおける深いテーマ性を、楽曲の音像として表現しているのがDEANさんらしさですよね。
この2曲を書きはじめた時って脚本が完成する前だったんです。なので、逆に歌詞から脚本に影響を与えられたんじゃないかなって。誉獅子雄のセリフだったり、物事の進み方が「Searching For The Ghost」然り「Shelly」に、逆に当て書きしてくれているような感覚で。有機的に曲とドラマが絡み合ったいいシナジーとなりました。
●今回、影響を受けた音像
いろんな作品を注意して聴くようにしていますね。メロディーのフレーズやコード進行がどうとか、リズムパターンよりも音像が主軸になってきています。それがいいかどうかはわからないんですけどね。でも、そこを踏まえて逆算でビートを組んだり、メロディーの構成やハーモニー、コーラスワークを作ったり。そうしないと到達できない感じになっていて。ライブの会場然り、車の中然り、どんな環境でもこういう風に聴こえるといいなぁと逆算で作詞作曲をはじめる、みたいな。その方が現段階では目指している表現にたどり着けるなって思っています。
●「Searching For The Ghost」が生まれた経緯は音像
表面的に見えていた景色とは違う裏側の世界へという、それが“君の名はmystery”ということなんです。ブラスアタックは強い触媒みたいなものというか、ショックを与えるというか。バースに関してはいわゆる人間の世界。ちょっとうらぶれたバックストリートな感じで。
●キッズ層のファン、男性ファンへもより届きそうなEPですよね。年代的にははじめて実写ドラマにハマったというか、ミステリー作品にハマったという。そして曲もかっこいい
それは嬉しいですね。あらためて、自分がティーンエイジャーの時にメタルをやっていてよかったなと思うんです。メタルをバンド編成でアレンジした経験があるからこそ、このリフが生まれるというかリズムはこうなるんだってわかるというか。重低音に関する直感はメタルで養われてベースミュージック、ダブステップやトラップを経て移行できたんだなって。使っているインストルメント(機材)が違うだけなんですよ。ボーイズドリームっていうんですかね。男の子ならではの夢ってあるじゃないですか。そこに繋がるのは嬉しいことですよ。
●DEANさんといえばコアなリスナー体質でもあると思いますが、最近はどんな音楽にハマってますか?
最近は、ジャケ買い的な音との出会い方ができなくなりましたよね。となるとメディアだったりアウォード、この人が勧めているものだったらチェックするというか。SoundCloud聴きっぱなしにしていたり、プレイリストとか勝手にいい曲が流れてきたりってのもありますね。とはいえ、やっぱり現場で音を聴いたもの勝ちだと思うんですよ。フェスとか行くと特に思いますね。でかい音を体で聴いたら良いか悪いかすぐにわかるんです。
●本来の音楽の価値
やっぱり、正直に自分が信じていることをやり続けるのが大事だと思いますね。(iPhoneで探しながら)ちなみに最近一番聴いているのはH.E.Rかもしれないですね。しかも新しいのというより過去の音源。彼女、素晴らしいですねぇ。あ、でもリストの一番上に表示されているのは2019年にリリースしたH.E.R『I Used To Know Her』でした。次が中国のヒップホップでAIR(艾热)。あとは、mabanuaちゃんたちのOvallとか。Mura Masaも聴いてますね。あ、石川さゆりさんも聴いてますよ。
●すごい。世界へ誇るブルースですよね。
演歌の歌唱って技術としてもすごいんですよ。ヴォーカル力ってブラックミュージックのシンガーに目がいきがちですけど、石川さゆりさんとか超絶技法ですよね。最近は、こんな感じかな。