1時だけど眠くならないのでフランツ・カフカの「城」

について書く

 

未完と言われている

未完なのに600P以上ある。なので途中で挫折しそうになりながらどうにか読んだ。

 

主人公 K はある”城”の主から測量士として依頼されて城下町までくる。ところがそのKに対して城は正式に雇ったのか、雇っていないのか、生半可な返事しかいない。また城の内部の官僚機構は硬直的で、どこにKに対する責任の所在があるかはっきりしない。まさに城は現代社会そのものである。(城は物語の中で人格を帯び始める)そのためKは行政的(官僚的)手続きが完了しないままに村に滞在し続けることになる。

 

余談になるが、大江健三郎さんの小説の中に

ーーー父親が息子につけた名前はいかにも御曹司らしく立派で長々しいので、彼は周囲から J とばれている。そのことが彼にいっそう架空の人物めいた印象を与えている

   (文章不正確)ーーーという分がある。僕は大江健三郎さんのこういった文章が大好きだ。そこへもってきての K である。

 

閉鎖的で排他的な村で、Kは宙に浮き、村人たちはKを厄介に思う。

 

ところが、ここからがカフカの真骨頂だと思う

物語の中で、所在のあいまいなKと、村の内部で農民であったり酒屋の主人で会ったり女将であったり教師であったりと、”足場の固まった”登場人物たちとの”存在の確かさ”をかけた対比が進むのであるが、この本を読んだ多くの人は自分が村人たちよりもむしろKに近いことを認めるだろう。

人間はどこからきてどこへ行くのか?これはそのままKはどこからきてどこへ行くのか?という疑問とイコールである

そしてこの小説の結末の無さは、そのまま上の問いかけの解答の無さとイコールである。未完なのもある意味当然かもしれない。

 

カフカは膨大な量の言葉を費やして現代人の不安や理不尽や疑問を正確に摘出しようとする。僕はただひたすらにカフカの残した遺稿をありがたく頂戴するのみである。