統一コリアに向かうコリアン・ドリーム
私たちはつい先日、1919年の三一独立運動104周年を記念しました。ほとんどのコリアンたちはこの日の重要性を認識しています。なぜならこの日を機に、日本の植民地支配からの独立に対する取り組みが開始されたからです。半島の1,500もの街やコミュニティで延べ200万人以上ものコリアンが様々な意見の違いを越えて、コリアの独立宣言を支持して団結したからです。また、この平和的な行進による抗議行動は独立万歳運動とも言及されますが、1919年の3月から4月にかけての期間ずっと、日本によって激しく鎮圧されるまで続きました。
第一次世界大戦終了後の和平交渉が始まる中で、植民地に住む多くの人々は、アメリカのウッドロウ・ウイルソン大統領の「十四か条の平和原則」によって大いに感化され鼓舞されたのです。なぜなら、そこには民族自決に関する条項が含まれていたからです。彼らは、もしもウイルソンによって発表された、この新しい世界秩序の理想的なビジョンが実現されれば、帝国主義の圧政から自分たちが独立していく道が開かれると信じたのです。そのため、多くの国が、コリアも含まれますが、パリで開催された講和会議へ代表を送ろうとしましたが、それは叶いませんでした。
日本が和平交渉を支配的に進めていた主要五か国の一か国であったため、コリアの代表は議論に参加することは許されずシャットアウトされました。その結果、戦勝国が自国の権益に従って世界を再編成するということばかりに主眼が置かれ、ウイルソンが提案した原則は無視されることになりました。戦勝国にとって都合が悪かったからです。このような歴史的状況を考慮すると、コリアン民族が独立運動を、1919年6月28日のベルサイユ条約締結に伴うパリ講和会議の終了前に始めたことは、驚くべきことと言わざるを得ません。
コリアの独立宣言は33人の民族代表たちによって署名されていますが、その署名した代表たちのグループを見てみると、社会的にも宗教的にも、また文化的にも非常に多様でした。しかしながら、それは草の根運動の土台となる一つの道徳的なビジョンを提示して、半島の当時の総人口の10分の1以上の人々にインスピレーションを与えていき、彼らはその運動に参加していったのです。参加すれば過酷な結果が待っていることが明確であったにもかかわらず、です。ここで想起し、しっかり認識されなければならないこととして、この運動は国際社会からのサポートが一切無い中で敵対的な他国の政権下にある、基本的に田舎の農業社会の中で組織されたということです。
この独立宣言は「弘益人間」思想に根付いたコリアン民族の建国の理念からアイデアを得ていますが、その弘益人間思想には、「人類のためというより大きな目的のために生きる」という天命が含まれます。したがって、独立運動は単に国家主権を求めるものではなく、アジアと世界を見据えたより広い含意をもった、より高い道徳的な理想を希求したものでした:「民族の恒久一筋(ひとすじ)の自由の発展のためにこれを主張し、人類の良心の発露(はつろ)にもとづいた世界改造の大機運に順応し、並進させるためにこれを提起するものである。これは天の明命、時代の大勢、全人類の共存同生の権利の正当な発動である」。
独立を求めた他の宣言文の場合、圧政者たちの悪事に怒り苦情を並べ立てるものであるのに、コリアの独立宣言はそれとは違って、「盟約をいつわったとして、日本の信のないことをとがめようとするものではない。(中略)わが久遠(きゅうえん)の社会の基礎と卓越した民族の心理とを無視するものとして、日本の少義を責めんとするものではない。自己を策励(さくれい。『鞭を打ち大いに励ます』の意味)するのに急なわれわれには、他人を怨(うら)みとがめる暇はない」とうたっているのです。さらに独立宣言は以下のように続きます。「厳粛な良心の命令によって自家の新運命を開拓しようとするものである。決して旧怨(きゅうえん)および一時的な感情によって他を嫉逐(とちく)、排斥するものではない」と。
弘益人間思想の天命に深く根差される形で、コリアの独立運動は一つの理想国家を建国しようと尽力しましたが、それを実現することによって東アジア地域のみならず世界的に大きな結果もたらすことになる国家の建国を目指したのです:「今日わが朝鮮の独立は朝鮮人をして正当なる生活の繁栄を遂げさせると同時に、日本をして邪道より出(い)でて東洋の支持者としての重責を全うさせるものであり、中国をして夢寐(むび。『眠って夢を見ること』の意味)にも忘れえない不安や恐怖から脱出させるものである。また東洋の平和を重要な一部とする世界の平和、人類の幸福に必要なる階梯(かいてい。『物事の発展の過程』の意味)となさしめるものである」。
このコリアの独立運動は20世紀の初頭、インドのような他の植民地諸国における民族主義運動に一筋の光を投じました。例えば、インドではイギリスの支配から独立しようとしていましたが、アジア初のノーベル賞受賞者であり、インド人の詩人であるラビンドラナート・タゴール氏は、1929年に「東洋のランプ」という四行詩を遺していて、そこで彼はこう言いました:
「アジアが黄金のように輝く時代にあって、
コリアはかってランプを運ぶ国の一つであった。
そのランプが再び灯されることが願われている、
東洋が光り輝いていくために。」
タゴールは、マハトマ・ガンディーと同時代に生きた人であり、当時のインド独立運動に見られた、行き過ぎた先住民保護運動の傾向を批判していました。つまり、インドには国家主権が認められるけれども、反外国の姿勢を取ったり、西洋が進んでいることを拒絶すべきでないと認識していたのです。ですから、そのような彼が、コリアの独立運動における道徳的な精神やビジョンに惹かれていったということは十分に理解できることです。なぜならコリアの独立運動は、東洋と西洋の両方の最良なものを促進していきながら、よりよい東アジア地域と世界の建設のために圧政者さえも抱擁していこうとしていたというのですから。
悲劇的なことに、コリアは20世紀の独立運動を形成していく上で指導的立場でしたが、その自国の独立運動の実現を通した、一つのモデル的な理想国家を創建するという熱望を実現することは、これからやっていかなければなりません。光復節の後、1945年にほんの短い期間そのような機会の窓が開きましたが、半島が人工的に分断され、冷戦によって地政学的対立状況の狭間に挟まれることによってすぐに閉じられてしまいました。1990年代にはドイツが再統一され、ソ連が崩壊しましたが、コリアン民族はいまだに植民地主義と冷戦時代の不幸なレガシーと対峙し続けなければならない唯一の民族です。21世紀に入ってかなり経つのに今でもそうです。私たちの先祖たちの希望を実現するという、このタスクは、今日に生きる私たちに託されています。
コリアンとして、私たちは、今の時が、私たち民族の歴史にとって最も重要で後世に影響を与える時であることをしっかりと認識しなければなりません。アジアのど真ん中で国家主義的な力が台頭していますが、そのことは東アジア地域及び世界における地政学的な状況がますます、より危険なものになっていることを示しています。ウクライナ戦争は、時代遅れと思われた冷戦の軸を復活させているかのようです。また同時に、中国の台湾に対する脅威も高まり、北朝鮮の核プログラムの脅威も続いていますので、日本の軍事化も含めて、東アジア全体が迫りくる嵐の渦の中に大きく巻き込まれるような状況になっています。
一世紀前に、私たちの先祖たちはコリアンのモデル国家を建国しようと夢見ました。世界にインスピレーションを与えて、平和をリードするような国です。今日、私たちはそのような高貴な天命を自らの手に取り、先祖たちが始めたことを完成させるように努めるべきです。北朝鮮にいる人たちも韓国にいる人たちも私たちが現在置かれている状況を越えた私たちになるべく、私たちに運命づけられています。冷戦のパラダイムは時代遅れのものであり、外国から押し付けられたものとして脇に投げ捨てられなければなりません。そして新しいパラダイムが採用されて、全てのコリアンが一体となって、共に私たちの先祖や私たちの建国の熱望とアライン(一致)した新しい国家を建設していかなければなりません。
私はこれをコリアン・ドリームと呼んでおり、それを「KOREAN DREAM 統一コリアへのビジョン」という私の本の中で記しています。この新しい国家の建国にとって中心的に重要なことは、弘益人間の建国の理念である「私たち民族は全人類に益をもたらすべき」であるべきです。そのようにして、東洋と西洋の両方の最良なものを反映して、東アジア地域と世界をより良くするために圧政者さえも抱擁しようとした独立運動の高尚な道徳的理想を担っていかなければなりません。
コリアン・ドリームの普及はAKUによって韓国全土で繰り広げられています。AKUとは、1,000以上の市民社会団体からなる先例のない連合です。AKUは今後三年間にわたって、コリアン・ドリームを広めていくキャンペーンをこのほど開始しましたが、その最高潮はコリアの光復節80周年にあたる2025年の10月を見据えています。その影響力を想像してみてください。もし、何千万人ものコリアンたちが、韓国だけでなく海外同胞たちも参加していく中で、未来の統一された民族や国家を求めて単一の共通したビジョンを中心に街や都市に溢れていくならば、どうなりますか? 私たちの先祖たちが百年前に起こしたことと非常に似たことが起こっていくことになります。それは第二の三一独立運動をスパークすることになるでしょうし、コリアンたちをこれまで分断してきた物理的な分断やイデオロギー的な分断、文化的な分断、精神的な分断を破壊しうるものです。また、統一への扉を開き、新しい国家の創建への扉が開かれることになります。これが、私たちが展開する運動です。コリアンとして、コリアン・ドリームの主人となることによってこの機会を掴みましょう。
文顯進博士は、グローバル・ピース・ファウンデーションの議長であり創設者です。
※独立宣言文の日本語訳については、日本大百科全書(小学館)に収録されています朴慶植氏訳を引用させていただきました。

