背徳的✳︎感情論。


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身体がガクッと落ちる感覚で俺は跳ね起きた。
寝汗が伝う背中が、冬の冷気に震える。
部屋の中はまだ薄暗い。
時計を見ると午前6時37分。

夢… だよな、全部。

さっきまで見ていたリアルな夢を思って喉の汗を拭い唾を飲み込んだ。
そうしながらぐるっと部屋を見渡す。
いつもと変わらない、紛う事なき自分の部屋。
ごちゃごちゃしていてお世辞にも片付いているとは言えないその部屋に、現実に戻ったのだと実感する。

目が覚めたんだから、大丈夫なんだよな?
俺も、文吾も。

夢の最後にあの大きなぬいぐるみのようなウサギに攫われた文吾の顔が思い出され、モヤモヤと嫌な予感が広がって行く。

いや、夢だし。
文吾も今ごろ目を覚ましてる…はず。

もう一度時計をみると長針がちょうど8を指した。

…今日って何曜だっけ…

頭が回らない。
俺はぶるっと頭を振って両手で頬を叩いた。

落ち着け、大丈夫だ。
今日は、土曜日、学校は休み。
でも部活がある、そろそろ起きて、着替えて…

モヤモヤを抑えながら立ち上がった時、
『レオ!』
俺に手を伸ばして呼んだ文吾の顔が浮かんだ。
嫌な予感はどんどん大きくなって、心臓のあたりがギリッと痛くなる。
俺は居ても立っても居られなくなって枕元のスマホを手に取ると、乱暴に充電ケーブルを引っこ抜き、震えそうになる指で文吾に電話をかけた。

プルルルルと響く機械音を1回2回と無意識に数えてしまう。回が増える度、心臓がバクバクと騒ぎ出す。

…土曜日だから… 寝てるだけかも…
文吾は部活ないだろうし…
それとも… まさか…

7回目のコールのあと、電話は留守電に切り変わった。無機質な声がメッセージをどうぞと冷たく言ってピーっと言う甲高い音が耳に刺さった。

まさか… 
そんなことあるワケがない

でも…

俺はスマホをベッドに投げ出し、脱ぎっぱなしにしていたトレーナーを着込むと部屋を出た。
両親も妹もまだ寝ている。
休みの日はみんな好きな時に起きて好きな時に食べるから、下手に起こせばガチで怒る。でもそんな事に構っていられない俺はドタドタと音を響かせて階段を降り、玄関にかけている部活用のベンチコートを羽織り外へ飛び出した。

外は昇り始めた太陽の日差しで眩しく輝いているけれど、12月の空気は刺すように冷たく痛い。
そんな空気に剥き出しの顔を刺されながら俺は文吾の家を目指して全力で走った。
国道に続く、ゆるい坂道を下り切ったところを右に曲がれば直ぐに文吾の家だ。
息を切らせ、右に曲がった途端、手入れされた垣根の先で赤いランプが光っているのが見えた。
それが救急車だと分かった時、息が止まりそうになった。それでも足は止めず、必死に走った。速くなっていた鼓動が一層速くなり、胸をギュッと締め上げた。

「おばさん!」
救急車と門の間に文吾の母親と妹を見つけ、俺はカラカラになった喉で声を張り上げた。焼けたような痛みが走る。
「まぁ、レオちゃん…!」
文吾のお母さんはびっくりした顔をして俺を見たあと、すぐに泣きそうな顔になり、
「文吾が、文吾がね、目を覚まさないの。いつもなら起きてる時間で、 でも起きて来なくて、今日は部活に行くからって言ってたから起こしに行ったの。でも、なにをしても起きないのよ、あの子… どうしちゃったの… 」
動揺で震える声でそう言って俺の腕にしがみついた。
「文吾が… 起きないって…」
問い返す俺の声も震えた。
「分からないの。でもどうやっても起きないから、パパに電話したら、救急車を呼んだ方がいいって。だから」
母親の背中に手を当てながら、妹のモモちゃんが説明を引き継いだ。文吾の父が去年から単身赴任中なのは知っていた。
「レオくんは、なんでウチに?」
何も言えない俺にモモちゃんが尋ねる。
薄桃色のパジャマ姿の彼女のふっくらした頬は、寒さもあって蒼白に見えた。

「…文吾の…夢を、見て… それで、」
本当の事は言えなかった。
言ったところで信じてはもらえないだろう。

「虫の知らせね」
文吾のお母さんが唇の端を少しだけ引き攣らせて言った。

















つづく





月魚









今年
スゴイっす
驚き