この頃母はたまに私に会いに来る程度でしたが、
そういう時はとても優しくて、
『あなたは私の宝物だよ』
『お母さんはあなたのために頑張って働くよ』
そんな愛情がある言葉もかけてくれるようになっていたので、
私は母のことが好きになっていったのです。
次第に母と住みたいと思うようになり、
何度も母にお願いしたのです。
でもある晩、
同居していた親族たちの様子がいつもと違くて、
何か後ろめたいことがありそうなのは気づいてたけど、
詮索しないほうが良いんだろうなと忖度したのです。
私は、色んな家庭で居候しただけあって、
空気を読む力がめちゃくちゃあると思う。
そうしてみんながおめかしして、
私だけを留守番させて出かけていったのです。
数日経って同居の従兄弟がうっかり口を滑らせて、
私はあの留守番の日が、
母の結婚式だったんだということを知るのです。
母は、私に結婚相手を会わすこともなく、
一言も連絡もなく、
私にだけ内緒にして結婚式を挙げ、
遠い向こうで新しい家族を築いたのです。
母の結婚はかなりのショックでした。
私は、家族というものが欲しい、
居候じゃない家で暮らしたい。
母にお願いだってしたのに、
それでも私の願いが叶わないなんて、
どうしてなんだろう。
何で内緒にするのだろう。
私は要らない子だからだろう。
ものすごく傷ついて、
悲しかったけれど、
このことを話せる相手は誰も居なかった。
母は結婚して夜の仕事を辞めたので、
収入が無くなったようだ。
私の養育費を払えなくなると、
親族は私を厄介払いしたくなっただろう。
みんな自分に都合の良い話をするので、
本当の事はよくわからないけど、
母が結婚して数ヶ月後に、
次に私が居候になるお宅は、
何と、認知してくれた父の家だった。