闘蛇との闘争 | リュウセイグン

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『獣の奏者エリン』に出てくる闘蛇。

国防の要であるこの生物は、この時代の戦争においてはチート的性能を誇っていると言って良い。


では戦って倒す術は無いのか?


勿論私は戦術などロクに知りませんけれども、素人なりに苦心して考えてみました。


まず最初に闘蛇は強い
メッチャ強い。体長は巨大なワニくらいはあるだろうから7~8メートルはあろうか。
刀や弓を通さぬほどの強いウロコに、鎧まで纏っている。
しかもその牙や爪は、楽に人間を食いちぎれるくらいの殺傷能力がある。


走力もある。現実世界最大のトカゲ・コモドオオトカゲ は時速18キロメートルで走れるという。
彼らが体長3メートルだから、闘蛇の歩幅は二倍はあるとみていい。
但し重さも相当あるだろうから、時速30キロメートルと仮定しておこう。


馬は時速約60キロメートルほど。その半分である。
しかし歩兵よりは遙かに速い。
その上、普通の馬は移動手段が中心でと攻撃手段としては突進力を生して馬上の人間が槍を振るうなどあくまで間接的である。


しかし闘蛇はそれ自体が兵器としての機能を果たしているのだ。スピードは負けても質量はデカい。イコール突進してきた際の体当たりでもかなりやばいという事でもある。


更に恐ろしいのは、教練場で崖から降りてきた点だ。
平面上の機動力だけではなく、上下移動も得意とあっては行軍速度は段違いになる。
山間部をショートカットして背面から出現なんて事も可能だからね。
本当に恐ろしい生物である。リョザ神王国が大公軍によって支えられているというのも得心だ。


その闘蛇と戦争をしようなんて時点でしらふじゃないが、まぁ兎も角考察なんだから何をやったって問題あるまい。


一応時代設定として医学は相当発達しているようにも見受けられる。
しかし戦争をやるに当たっては騎馬戦主体。
従って銃火器は発達していない。火薬くらいはあるかもしれないが、一般的ではなく未発達。
これは重要な要素です。闘蛇と戦う上に於て銃器の有無は死活問題。

この場合は、無いので

はい
詰んだ。
……とか言ってたら話にならん。

というよりも火器があると闘蛇とも戦えてしまうので作者さんが外した気がするんだね。
じゃあ闘蛇戦争の具体案行ってみようか。



1・獣には獣で対抗する。

これは一番簡単な方法。闘蛇には闘蛇、乃至それ以上に強力な獣を用いて対抗すること。
本作での王獣も、それに類するものだと思われます。
しかしコレにはノウハウは必要不可欠。またすぐに配備出来る訳じゃないから多大な準備が必要。
だからこそ闘蛇の飼育情報は村内から門外不出なのでありましょうし、卵泥棒の黒幕もそれを狙っている可能性が高い。

唯一手っ取り早い方法としては「術を知っている者を引き込む」というのがありますね。
村ごと引き込む、或いは「奏者の術」を知っている霧の民を引き込む。但し前者では必ず密告されると考えて間違いない。後者では掟が遵守されているという訳。多分部外者は「奏者の術」自体を知らないだろう。



2・BC兵器を使う

BC兵器などというと近代戦の面もちですが『無限の住人』なんかには刀を肥やしに漬けて破傷風を誘発しやすくした物が出てきました。要するに毒や細菌でやってしまおうという計画です。
コレにも闘蛇の生態情報が必要。また1ほどではありませんが、予め仕込まないと戦闘中では基本的に遅すぎる。

恐らくこの部分も本編に近い描写があります。そう、ソヨンの命を奪う事になった闘蛇の大量死です。あの時ソヨンはエリンの言葉に何かを気付きつつも、口をつぐみました。意図的な大量死というよりも、飼育闘蛇の限界なんじゃないかなとは思いますが、いずれにせよこれは判明すれば闘蛇に抗しうる有力な手段になるでしょう。



3・水攻め

意外かもしれません。闘蛇は水陸両生の生き物で、特に水の中にいる描写が多くあるからです。
しかし、それこそが狙い目&落とし穴。闘蛇の制御は角を掴む事で行っているようです(これも複数の描写あり)
では、渡河中などに大量の水が流れ込んできたら……闘蛇は大丈夫でも人間は堪えきれないでしょう
ひとたび離せば闘蛇のターン。勝手に暴れてくれます。しかも武装中なのでおとなし笛も効かない。
激流の中で複数の人間が流されれば耳を露出させるアブミも使いようがありません。
従って人間は溺死、闘蛇は暴走。上手く決まれば壊滅的なダメージを与えられるでしょう。
丸太流しなどを用いれば効果は倍増です。



4・火攻め

水ときたら火。基本は大事です。投石器などを応用し闘蛇に油を振り掛け、火矢を放ちます。地面に撒くだけではどれくらい効果があるかは分からない。火を怖がるかどうかは不明ですから。
しかしやはり上にいる人間はタダでは済みません。これまた手を離したら最後……です。


5・落とし穴

落とし穴作戦。闘蛇を誘い込み、深い落とし穴に落下させる作戦です。
深さにも依りますが落下すれば、骨折くらいは期待出来るでしょうしやはり人間のダメージが大きくなると思われます。但し、半端な大きさの穴だと、闘蛇がはい上がってきたり死体が積み重なって被害が減少します。
誘い込みの突進の勢いや穴の大きさ、深さは重要です。



6・泥濘地

お次は「ぬかるみ」での戦いです。闘蛇の重量は相当なものです。また鎧をつけていれば尚更。
その自重を利用して泥濘に誘い込み、身動きを取れなくしてから一気に襲いかかるという作戦です。
但し、もともと沼沢地に生息している生き物ですから案外柔い地盤に適応しやすいかもしれません。
飼育闘蛇の性質と、重量が大きな鍵になります。



7・寒冷地・熱帯地

闘蛇も爬虫類(多分)
従って極端な温度変化には弱いと思われます。そこで寒冷地や熱帯地で戦端を開き、闘蛇の力を発揮させないようにします。ただし、半端な気候では無理でしょう。
またこの場合、戦闘地域が限定される為に戦略的視点も非常に大切な所でしょう。


8・疲労

これまた爬虫類であろう闘蛇の性質を利用する作戦です。
爬虫類というのはどうもスタミナに欠けるそうです(恐らく心臓の構造から)
そこで一旦逃げ回り、闘蛇が疲れてきたところを攻める作戦です。当然ですがこれまた闘蛇を相手にするよりも上の人を相手にします。
陣形や地形選択、迅速且つ落ち着いた用兵、疲れと見るや一気に攻め落とす勇気が必要という非常に将の器を試される戦法です。スパルタのレオニダス辺りならやり遂げてくれるでしょう。



以上、対闘蛇戦術を考えてきた訳ですが、結論を言ってしまうと


マトモにやっても無理

という非常にシンプルな答えが出ました。
搦め手を併用し「闘蛇を射るならば先ず将を射よの精神で立ち向かっていくのが肝要かと思います。