B型マカロン
人物
綾瀬優子50 介護施設パート社員
綾瀬春乃14 優子の娘。中学2年生
木下玲奈14 春乃の同級生
綾瀬建53 優子の夫 会社員
安藤理沙50 優子の元同級生
救急隊員30
医師40
綾瀬博25 優子の息子
◯綾瀬家、居間(夕方)
綾瀬優子50が大鉢に盛ったカボチャの
煮付けと箸を4人分食卓に並べている
綾瀬春乃14が来て鞄を床に乱暴に置く
春乃「あーもぅ玲奈ったら腹立つわぁ!」
カボチャを箸で摘まんでパクつく春乃
を呆れたように見ながら優子が言う。
優子「どぅしたのよ、帰るなり。みんなの分
残しといてよ、まったく」
★
◯巻尾マキオ中学2年2組、教室・内
春乃と木下玲奈14が弁当を食べている
玲奈「でさ、駅前に新しくできたマカロン専
門店がね、超いけてるの!今度行こうよ!
春乃「私、マカロンて高いしあんまり好きじ
ゃない、て言ったじゃん。ミスドでいいよ
玲奈が食べるのを止めて春乃を睨み、
玲奈「あぁこれだからB型は‼️ 」
春乃「どういうこと?血液型?」
玲奈「B型は自己中でA型を傷つけるのよね★
呆然とする春乃の顔。
◯綾瀬家、居間(夕方)
春乃が頭を軽く振ってから優子に話す
春乃「お母さんがB型だからいけないのよ」
小皿を並べる手を止め春乃を見る優子
優子「どういうこと?血液型の話?」
春乃「そうだよ。お父さんOだしお母さんが
Bでなきゃ私はB型差別を受けないで済ん
★だのに。Bは自己中だからAは傷つくんだ
ってさ。でも絶対玲奈の方が自己中だよ」
優子「まだ有るの、それ。お母さん外ではO
型、て言ってるよ。あんたもそうしたら?
春乃「もういい。玲奈にはA型の方がよっぽ
ど人を傷つけてる、て言い返すから」
優子「強いねぇ春乃は。お母さん羨ましい」
惚れぼれと春乃を見る優子。
◯マカロン専門店『レインボー』、入口前
★虹の形に並べたマカロンが目を引く新
しい店。優子と安藤理沙50が入る。
◯同、客席
優子と理沙がマカロンと紅茶で談笑。
理沙「この店、来たかったのよねぇ」
優子「私も。誘ってくれてありがとう」
理沙「優子はBなのに昔から気遣いできるね
優子「理沙はA型なのに我が強いよねぇ」
理沙「だから離婚した、て?うるさいよ」
と、笑いながら優子を見る理沙。★
ため息をついてから、優子が話す。
優子「でもね、理沙が羨ましい。私は気を使
い過ぎて自分を見失ってる気がするの。本
当はパートじゃなくて正社員になってバリ
バリ働きたいけど、家族がいるから」
飲んでいたカップを置いて理沙が言う
理沙「私にも息子居ますけどぉ?でも息子は
ご飯位1人で作れるよう教育したし。あん
たは甘やかし過ぎなのよ。家族みんなに」
優子「そうね。もっと我が儘になってみる★
優子は残っていたマカロンを食べる。
◯綾瀬家、
居間(夜)
寝間着の綾瀬建53がTVを見ている。
優子が入ってきて建の前に座る。
優子「少し、話が有るんだけど」
ちらりと優子を見る建。
建「えー何なの。早く終わらせてよ」
ため息をつき、姿勢を正して話す優子
優子★来季から正社員にならないか、て言わ
れてるの。夜勤有るけどやってみようかな
慌ててTVの音を小さくする建。
建「え、今の介護の会社で夜勤も、て事?急
にそんな、困るよ。春乃だってまだ中学生
だし、博も居るし。ご飯とかどうするの?
優子「私が明日事故で死んだら?夜勤は毎日
じゃないしこの機会に自立してよ。私も家
族に遠慮してパートで働くの卒業して、独
身時代みたいにバリバリ働きたいのよ」
建はTVを見たまま答えない。★
◯同、(朝)
春乃が欠伸しながら食卓前に来る。置
かれた5個入りマカロンの箱に気づく
春乃「レインボー、て。これ駅前の店の奴?
優子が台所から出て来て答える。
優子「そうよ。昨日あんたも知ってる安藤さ
んと食べてきたの。美味しかったぁ」
春乃はマカロンを物色しつつ、
春乃「お母さん、これ貰っていい?」
優子「いいわよ。また買ってくるから」★
春乃は制鞄に箱を入れ、出て行く。
春乃「行ってきまーす!」
優子「ご飯も食べずに箱ごと持ってくとは‥
◯巻尾マキオ中学、校門前・内(朝)
春乃が隠れるように外を伺っている。
玲奈が登校してきて春乃に気がつくが
無視して通り過ぎる。
春乃は近づき玲奈の腕を掴み端に寄る
春乃「玲奈、ちょっと‥」★
玲奈は嫌がりつつも校門内の端に行く
玲奈「何なのよ。遅刻しちゃうじゃん」
春乃は鞄を開けマカロンの箱を見せる
春乃「ほら、見て!」
玲奈、箱を見て高い声で小さく叫ぶ。
玲奈「レインボーのマカロンだ‼️」
春乃「うん。後で一緒に食べよ!」
嬉しくて、歌いながら先に歩く玲奈。
玲奈「マッカロン、マッカラン、ラン‥」
満面の笑みで見送る春乃。★
◯綾瀬家、居間(夜)
居間壁際の電話が鳴り、優子が出る。
優子「はい、もしもし。綾瀬です」
救急隊員の声「綾瀬博さんのお母様ですか?
胸に手を当て心配そうな表情になり、
優子「はい、そうですけど。何か?」
救急隊員の声「博さんが交通事故にあわれて
港口病院に居ます。すぐ来られますか?」
優子「わかりました。住所はどこですか?」
★優子は聞きながら紙にペンで書き出す
受話器を戻した優子は目を瞑って手の
平で顔を覆いしばらく考えてから、ま
た受話器を上げて電話をかけ始める。
優子「もしもし、お父さん?博が事故にあっ
て港口病院に居るらしいの。さっき救急隊
員から電話が来たのよ。私、春乃と一緒に
病院行きますから。あなたもすぐに来て」
建の声「俺、今すぐは行けないよ」
優子「何で?息子の命が危ないってのに?」
建の声★仕方ないんだ。(暗い声で)お袋が
前から痴呆が出てたんだけど、さっき警察
に保護されて。迎えに行かなくちゃ」
受話器を握りしめ立ち尽くす優子。
優子「わかった。あなたは来なくていいわ。
お母様うちに連れてきて。後で話しましょ
受話器を置く優子。
◯綾瀬家、階段前の廊下(夜)
階段の下から上へ向かって叫ぶ優子。
優子★春乃、すぐに降りてきて‼️お兄ちゃん
が事故、て。今すぐ病院に行かなくちゃ」
ドアの開く音。春乃がかけ降りて来る
春乃「事故?死んだの?」
優子が春乃の腕を強く叩き、
優子「なんて事言うのよ‼️まだ死んでない、
(やや小さな声で)と思う‥」
春乃は座りこむ優子を引っ張り立たせ
春乃「荷物なんて後でいいから。タクシーで
すぐに行かなきゃ。死ぬ前に」
優子「そうね。まずは行かなきゃ」★
◯港口病院、病室内(夜)
綾瀬博25がベッドで寝ている。足が包
帯にくるまれ台の上に固定されている
医師40が話すのを聞く優子と春乃。
医師「博さん側は青信号でした。横から信号
無視の車が突っ込んで来たんです」
春乃「何で?酔って?居眠り?スマホ弄り?
医師が苦々しい表情で言う。
医師「高齢者の方の運転でした。ブレーキと
アクセルの踏み間違いかと思われます」★
優子「それで、息子は回復するんですか?」
苦笑しながら医師は答える。
医師「幸い脳に損傷は有りませんでした。両
下肢骨折のみですから全治半年位ですよ」
肩から力が抜ける優子と春乃。
◯綾瀬家、居間(深夜)
静かな室内に掛け時計の音だけする。
建と優子がぐったりと座る食卓。
同時に話し出す2人。★
建「あのさぁ‥」
優子「あなた、私やっぱり‥」
建が優子に話すよう手で促す。
優子「あなた、やっぱり私、無理ね」
建「何が?」
優子「パートから正社員になること。急にこ
んな事が同時に起こるなんて。せっかく離
れたけど、またお母様と同居になるの?」
建「徘徊するようだと1人は心配だよ。お袋
も昔ほどきつく無くなったし。ごめん」★
優子「私が悪いのかしら。私が我が儘を言っ
たからバチが当たったのね。私はずっと誰
かのお世話をする為に生きていくんだわ」
優子が俯いて涙を拭う。
建「俺が仕事辞めたら皆食べていけないし‥
優子「これが定められた運命なら受け入れる
しかないかな。家族を見捨てられないし」
優子、諦め顔で笑い、立ち上がる。
優子「パートのいい所はね、休みが取りやす
★い事なの。明日からしばらく休んで今後の
事を考えるわ。さぁ、もぅ寝ましょ!」
建も笑って立ち上がる。
建「ありがとう。優子のその立ち直りの早さ
にはいつも助けられるよ。さすがB型だ」
優子「もぅ血液型で決めつけないの!バカ」
優子、建の胸を拳で弱々しく叩く。建
はその拳を両手で包みこみ耳元に囁く
建「この手に僕ら家族の凧糸が握られてるん
だ。バラバラにならないようしっかり離さ
ないで、ずっとそのまま。愛してるよ」
作者:得 無
※★は各ページの区切りに入ってます。
字数の関係で句読点や「」が省略されています。
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下書きなので、人物表の詳細を省略してあります。