私の母は、厳格な女性だった。
テレビを自由に見ることは許さず、マンガももちろん禁止。
私の意思に関係なく、命令一つで数々の習い事に行かせ、
母の前で勉強以外のことをすると、すかさず前回の試験のことを持ち出してくる。
母に逆らうと、異常に怒りだした。
「子供は親の言うことを聞いていればいいんだ」
母はそういった。
私は、母を恐れ、母を嫌悪した。
自分は、絶対にこんな大人にはなりたくないと、切に願った。
母は歳をとった。
一日中テレビの前に座り
食事は最大限に手を抜き
部屋は散らかり
すこし意味不明なことを言うようになった。
そして私は、そんな母を、相変わらず嫌悪する。
一日中テレビをつけ、くだらない番組を観、
掃除もせずに
ただ人の欠点ばかりを責める母を。
そうして歴史は繰り返され
『母』は何度も生まれたのだろう。
『母』でいられなくなった母を私は嫌悪し
私は次の『母』となり
わたしが『母』でいられなくなるころ、
私に娘がいれば、その子は『母』になり始めるのだろう。
おそらく母も、母の母から、『母』を受け継ぎ
そうして歴史は、繰り返される。
高校生だった私は、母になることを恐れた。
母が、母の母から、『母』を受け継いだことに気付き
自分も母から、『母』を受け継ぐのではないかと、
自分をばらばらに破壊した『母』に自分もなって
自分の子供をばらばらに破壊してしまうことを、恐れた。
母は、壊れたのだろうか。
壊れて、そして、『母』になったのだろうか。
私は、壊れた。
『母』に、なるのだろうか。