その日はやはりこの時期に足音も無くやって来た...



いつものように朝日と共に一日の始まりを迎えた俺は

モーニングコーヒーを飲みながら 「モーニングムーン」 を口ずさんでた。

朝の憩いのひと時の静寂を引き裂くように

「キャリーぱみゅぱみゅ」 の 「つけまつける」 が鳴り響いた!

俺の携帯の着信音である。 (どんだけミーちゃんハ―ちゃん?)

俺は恐る恐る携帯の画面を見た。




    「も、も、もしかして...」




こう言う時の俺は的中率120%!! 

だけどなんで今だけ当っちゃうのかな (T▽T;) (ブナの木の心材は外れるくせに)

画面には 「ゆみちゃん携帯」 の文字が浮かび上がっていた。




   「ああぁ...、出たくない!出ちゃいけない!

    なんで今年も来ちゃったんだよぉ~ (((( ;°Д°))))

    ん?これは夢か? そか!夢なんだね^^ そうだね、そうなんだね、

    もぅ神様のイタズラッ子なんだからっ!  ウフっ❤」




俺は毎度の事ながら、すでに現実から逸脱していた。

電話を気のせいだと言い聞かした俺は出ないでそのまま記憶から消した。




   「んん~!なんて清々しい朝なんだろうか o(^▽^)o

    え~っと、今日の予定は確かヒラリークリントンと会談だったよなぁ、

    そろそろセバスチャンが迎えに来る頃だ。急がないと...」




現実逃避どころか、妄想の世界に飛び込んでるじゃねーかっ!

てか、俺ってなに?いったい何をしてる人の設定??

もしかして日本人じゃなかったの??

そう言えば昨日はスピルバーグと飯食ったっけ...

妄想に妄想を重ねてると、1回切れた携帯がまた鳴りだした。


 「つ~けまつ~けてつけまくるぅ~♪」


なんてマヌケな着信音だ! (自分で選んだんでしょっ)

画面を見るとそこには 「ヒラリークリントン」 ではなく

しっかりと 「ゆみちゃん携帯」 と出ている。

そう、彼女の電話は俺の張った二重の妄想バリケートを

いとも簡単に破ってしまった。






                               つづく








あ~ぁ、ずいぶん続いて飽きてきたな ぷぷぷぷ ( ´艸`)


チーカマサンドで腹を満たした俺達は

いつの間にか寝ていたのだった。

しかしその至福の時もつかの間しかなかった。

昭夫ちゃんが高校から戻ってきたのである。




   「おいおい、お前らいつまで寝てんだよ~!

    起きろよっ! 俺のバナナはどこいったんだよっ!」




 非常にヤバす! ここは寝たふりで過ごそう...


俺は一生懸命に ≪寝たコキ≫ をした。

薄目を開けて見ると動物園のゴリラの様にウロウロと

狭い部屋をグルグルと回ってる昭夫ちゃんの足が見えた。

その先にためさんの顔が...笑ってやがる!!!

こんな時によく笑っていられるよなぁ...

と言う俺も思わず吹き出しそうになった。


 ぐぐぐぐぐぅ、ふんがぁっ!


ブタのようにためさんが吹き出しやがった、もうだめだ!


 ぶははははははぁ~っ!!!


あかん! これ以上は無理だってぇ~、もうタメさんはぁ~!!

よりによって ふがっ ってないだろ、 ふがっ ってぇ...

2人して大笑いしながら飛び起きた。




   「ほらなぁ~、やっぱ ≪寝たコキ≫ じゃ~ん!」




昭夫ちゃんは上から見下ろす様に どや顔 でこっちを見た。


 そんなに威張ることか?


ためさんが口を開いた。




   「だって昭夫ちゃん靴下に穴空いてるんだもんっ!!

    親指出てて毛が生えちゃってんだぜぇ~! ぷぷぷぷぷ!

    絶対ルパン三世だぜそれ~~~~!!!」




俺はすかさず昭夫ちゃんの足を見た。


 うひゃひゃひゃひゃぁ~~!! マジだっ!!!


足の親指だけひょっこりヒョウタン島である。

しかも靴で蒸れたのか、やや色白で毛が生えてるのがよくわかる。


 見たことねぇけど間違いなくルパンの足の親指だっ (なぜわかる?)





   「てめぇらいつまでも笑ってんじゃねーよっ!!」




と、言ってる本人も笑っちゃって締まりがない。


 だってお箸が転がるんだもん  by 伊代ちゃん


の世代なんだから仕方ないよね。

ためさんは笑いすぎてチアノーゼ状態になりつつある。

俺も過呼吸状態になり、ひぃ~ひぃ~ と

明石家さんまみたいに大ウケしちゃって酸欠になった。


ひとしきり笑いようやくみんな我に返った。

するとためさんが




    「昭夫ちゃん昭夫ちゃん、いいのがあるぜっ!」




外に出て廃品回収に出す予定の使ってないオンボロ洗濯機の

洗濯槽の中からコーラの1リットル瓶を出してきた。 (懐かしぃ~)




   「おおおおおっ!ため造、これど~したんだっ!!」




昭夫ちゃんの目が変わった。

そう、コーラの瓶の中身はト〇エンだった。




   「それこの前もんちとあそこのレンズ磨き工場の

    倉庫から夜中かっぱらって来んだよ、うひょひょひょ!」




 おいおい、余計なことをこいつは...

 それは苦労して持ってきたやつだろが...

 よりによってタダでやっちゃうのかよ、お前さん...


俺はちょいとムカッときた。




   「マジか!ため造っ、味見していい?」




あ~ぁ、早速始まっちゃいやんの...

味見ってあんたはソムリエかっ!!!

俺は小声で


 ためさん、あれ売っ払ってボンタン買おうっていったじゃ~ん、

 なんで上げちゃうんだよぉ...ふざけんなよぉ!!


ためさんは




   「昭夫ちゃんは三度のメシよりトル〇ン好きなんだぜ。

    これでバナナの事は忘れるに決まってんじゃん! うひゃひゃひゃ

    もし聞かれたらさっき食ったじゃんって言っちゃえばいいよ、

    どーせラリっててわかりゃしねーしさ、ぷぷぷぷぷ」




こいつ本当に小賢しい越後屋みたいな奴だなぁ...

てか、バナナよりボンタンじゃねーか普通??

こいつらのバナナの価値感がまったくわからねぇぞ俺はっ!!


 ためさん、俺やらねーぞ、夜プロレス行かなかきゃねーんだからな!


ためさんは右手で グッド! で答えた。

さて問題はどうやって絡まれないでここを抜け出すかだ。

まぁ30分もすれば 「手が飛んでくる~~」 とか言って

アフォになるだろうから我慢するか、

それとも 「ビニール袋買ってくるよ」 と抜け出すか?

じゃないと俺もやりたくなっちゃうもんなぁ... (ってお前もかっ!)

俺は抜け出すことにした。


 昭夫ちゃん、俺ジュース買ってくるよ


すると昭夫ちゃんはすでに半ラリ男で




   「おおぉぉお、もんひぃ~、俺のFX乗ってっていいろぉ~~」




うひょひょひょ~! チョーラッキー!!!

するとためさんが




   「俺も一緒に行くよ!」




なぬ?2ケツはいやじゃあ~!!


 ためさん、あんたはここの家主だ、居なきゃダメ! 絶対ダメ!


泣き出しそうなためさんを残し俺はキーを持って外に出た。

ためさんちの前でエンジン掛けると怒られるので

俺は200kg近くあるFXを100mくらい押して行った。


 よし、ここいらでいいだろう


俺はサイドスタンドを出してFXにまたがった。

こうしないと足が届かないからである。 (どんだけ短いんだよっ)

キーを刺しセルを回す。


 ボンッ ゴゴゴゴゴゴゴゴ

 んー、モリワキの直管はええのぉ~


さぁ出発だ!!なんとかつま先で立ちスタンドを上げ走り出した。


 まずはジャス前流すかぁ!


     ≪ジャス前とは≫

    ジャスコの前と言う意味で、当時俺のいた栃木県K市は 
    ジャスコと共に明けジャスコと共に暮れる と言われるほど
    ジャスコ意外になんにも無いイナカ町だったのである。


この時間ならジャス前は学生だらけなのだ。

俺は調子込んで信号も止まらずに (止まれないがホント。足が届かない)

ジャス前を目指した。

途中チャリ2ケツの女子発見!

俺は超仕込みMAXで思いっ切り吹かしこんだ!

 
 パァンパパ パァンパパ パンパンパァンパパッッ


ん~なんでいい音なんでしょか ぷぷぷぷ

俺は当然かっこいいと思ってる。

すると



   
   「もんち~~~!!どこいくのぉ~~~!」




 おろっ? なんだチミは? なぜにボクを呼ぶ??


呼ばれたので縁石が有るところで停った。(ここなら足が届くから)

あああああぁ~、

チャリの2人組はボクの彼女のN子ちゃんじゃあ~りませんかぁ!




                      あぁ~、長いからつづく
さてさて続き...


階段を飛び降りて3階へ行くと目の前が4組である。

出し抜こうとして出し抜かれた屈辱感に

怒りを覚えた俺は教室のドアを思い切り開けた。


 ためさぁ~~~ん!! そりゃないべぇ~~~!!


しかしそこにためさんの姿は無かった。

4組の担任、阿部ちゃんの姿も無い。


 おいおい、どしたのこれ?


すると同じ野球部の ウマ河童 (ウマヅラでテッペン薄いから) が




   「あれ?もんち知らないの?

    あのチーカマ事件の犯人ためさんだぜっ!

    阿部ちゃんに職員室に連れていかれちゃったよ!!」




 ドキッ(◎-◎;)!! ドキドキ(◎-◎;)!!

 バレてんじゃん!! てことは俺共犯者?

心臓をワシ掴みされたようにキュ~ンとなった。


  ≪もしかしてこれが恋かしら?≫ (*゚ー゚*)


じゃねーし!

ウマ河童から詳しく事情を聞いた。

話はこうである。

校内放送があって、その時にアフォなためさんは




   「ああぁ! 俺5本あるから2本なら持っていっていいぞ 」




ふぅ~、 アフォ...

で、担任の阿部ちゃんが




   「おい、タメ造、お前なんでそんなに持ってるんだ?

    確か学校に来たの4時間目始まってからだよなぁ?

    で、今日の給食はバナナは出てないぞ!! 」




 あれま、バナナまでかよ...


まるで



   「いまそこで銀行強盗あったんだけどこれ拾いました」




と目だし帽かぶってポケットから札束はみ出させ、

息を切らして落し物だと拳銃を届けてる実行犯じゃないかっっ!!!

なんたるアフォなんだっっ!!!


まあバナナは家から持ってきたとして、(3房も?)

さすがにチーカマも持ってきたじゃ通用しないだろ...

でもアイツならそう言うに決まってる。


 だってためさんって不思議の国からやって来た

 かなりの線でイタい子だもん (ノ_-。)


とにかく俺の身に危険が及んでいるには間違いない。

と考えるとここはもう安全ではない。

とりあえずこの場から立ち去る事が優先だと感じる。

俺の中の鋭い野生の勘がそう叫ぶのだ! (単なるビビッた犯罪者だろ)

そこで俺はウマ河童との話もそこそこに逃げることにした。


 今日はためさんの母ちゃんのパッソルで来たから

 乗って逃げるに限るな、うひょひょひょ!


ためさんの母ちゃんのパッソルは

キーレスエントリーだから誰でも乗り出せるのだ。


 ≪この当時のそんなものない!直結だよ直結!!≫


俺は素知らぬ顔で階段を降りた。

1階に降り玄関に向かおうとしたら何か話声が聞こえた。

給食ワゴン用エレベーターの隙間に隠れて耳を澄ませた。




   「ため造、お前ここからどうやって持っていったんだ?」



おおお!早くも現場検証実施中じゃねーか!

ためさんフテクサレてガムを食ってる。


 アイツはいつも何か食ってやがんの、ぷぷぷぷ


って笑うとこか?

必死で知らん顔しているためさんと目が合った!

アイツはこう訴えていた。

  [ここはアイコンタクトの会話である]



 ためさん 「ここは俺に任せろっ!お前は逃げるんだっ!!」


 もんち  「そんな事出来る訳ねーだろっ!オレ達は

       ゴールデンコンビと呼ばれた仲じゃねーかっ!」


 ためさん 「バカ野郎!2人ともパクられてどーすんだぁ!

       お前だけでも逃げてくれ!俺の死を無駄にするんじゃねぇ!!」


 もんち  「うおおぉぉぉおお~タメさぁ~ん!

       俺はお前を絶対に忘れないぜぇ~~!!」


 ためさん 「じゃあな...たのしかったぜ!

       生きていたらまた会おうぜ!」


 もんち  「ああ、俺も楽しかったぜ...

       アディオ~ス・アミーゴッ!!」



と、アイコンタクトを交わしたのである。

俺はその場からずらかろうとした刹那だった。



   「もんち、どこ行くの?」



間の抜けた声が廊下に響いた。


 おいおいためさん、呼ぶんじゃねーよ...


知らん顔出来ずに仕方なく近づいていった。

もう気持ちは完全に開き直っている。



   「ねぇもんち、オレ達一緒に来たけど

    ここには来なかったよな? なっ、なっ!!」




 やられたぁ~~~~!! 巻き込みやがったかぁ~~~~!!


しかしここでうろたえる訳にも行かない。


 おおぉ、そそ、オレら一緒に来たけど向こうの校舎から

 渡り廊下わたって来たもんな、ここ通ってねーなぁ


すると阿部ちゃんが俺の胸ぐらを掴み




   「もんち!嘘ついたら承知しねーぞ、こらぁ!!」




 おおぉ?なかなか挑戦的だね阿部ちゃん

 校内暴力全盛期の僕ちゃん達を甘く見てやしないかな、もしかして?


でもここは後ろめたい犯罪者である。


 何言ってんの先生、嘘ついたってしゃーないっしょ!

 一緒に来たよ、だけど教室は違うからあとはわかんないけどさぁ


 これでいいんだよな、これでよかったんだよな、なぁためさんよぉ...


しかし予想外にためさんの視線は冷ややかだった。

まるで仲間を売った裏切り者を見る目である。


 ホワ~イ? なぜにそんな目で俺を見るぅ~?


ためさんは俺が救いの手を差しのべると思ってたらしい。

あ~ぁ、なんの為のアイコンタクトだよっ!

てか全然通じてねーしっ!! (まぁ大抵通じないだろ)


俺はすがるようなためさんを残しその場を立ち去ろうとした。

がしかしそれは甘かった。




   「もんち、そのポケット何入ってるんだ?

    ちょっとこっち来てみろ!」



 ヤバい... チーカマやんけぇ~~~~!!!


逃げ場を失った俺は逃走を図った。


 ためさんいくぞ~~!!


ダッシュで外に飛び出した。

ためさんも後ろに続き走ってきた。

2人はチャリ置き場に駆け込みパッソルにまたがった。


 いっけぇ~~~ためさぁ~~んっっ!!


だがエンジン始動はキック式だ。


 カツンッカツンッ パラララララッ


かかった! よし行くぞっ!

見ると正門の方は先生達がゾロゾロ出てきていた。


 ためさん、裏門裏門っ!!


2ケツのパッソルほど遅いものは無い。

ヘタするとマイケルジャクソンのムーンウォークより遅いかも...

それでもアクセル全開である。

2人で足でバタバタ漕ぎながら必死で走った。


 ためさんヤベ~ぞ!中沼が走ってくるぞ!!


中沼は陸上部の顧問だけあって結構速い。

ここでパクられたら ≪俺はパッソルより速い≫ って

アイツは自慢するに違いない。


 急げぇ~~~~!!


なんとか裏門を抜けて校外へ飛び出した。

ここまでくりゃ心配ねーだろ!


俺達はためさんちに逃げ込んだ。


 マジヤバかったよなぁ~。


ホッとしたら腹が減ってきた。

そ~いえば飯食ってねーや。

ためさんもそこに気がついた。




   「もんち、給食食った?俺食えなかったよ...(ノ_-。)

    こんなことなら行かなきゃよかったよ」



どこまで給食命?


 まあチーカマあるじゃん?それ食おうよ、なっ!


するとためさんは母屋へ行き食パンを持ってきた。




   「イイ事考えちゃったもんなぁ~、うひょひょ」



ためさんはパンを袋から出し、その上に

チーカマを剥いて並べ始めた。

更にそこにマヨネーズを掛け上からまたパンでサンドした。




    「チャララチャッチャチャ~~~~~ン!!

     チーカマサンドォ~!!」 (ドラえもん風)




 ううぅ、マジか...?

 パンに直マヨかよぉ...


だが一口食ってみたらこれが開けてビックリ玉手箱!

なかなか、いやっ、マジ美味すぎるのだ!


 ためさん、俺あんたをバカだと思ってたが

 やっぱただのバカじゃなかったんだなぁ...

 食う事に関しては ≪特攻野郎Aチーム≫ 並みにスゲェよ!

 Aチームの コング(ミスターT)に似てるだけあるよ。(関係ねーけど)


あ~あ、チーカマ王にはなれなかったけど

腹一杯チーカマ食ったからいいことにしよう。 ねっ、ためさん♪








                          つづく