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ゴダールよりもデ・パルマが好き

映画監督を目指す大学生、清原悠矢の映画生活

「SUPER8/スーパーエイト」
2011年・アメリカ・Super8
監督:J・J・エイブラムス

ゴダールよりもデ・パルマが好き-スーパーエイト1


















スティーブン・スピルバーグが今までに制作してきた
作品に対してオマージュが捧げられた作品で、
まるで21世紀の「E.T.」であるかのように宣伝されていたので、
過度の期待を抱いてしまっていたのためか、良作ではあるものの、
「E.T.」や「グーニーズ」といった過去のアンブリン作品ほどの
傑作ではないという印象を強く抱いてしまった。

ゴダールよりもデ・パルマが好き-スーパーエイト2








前半はジョーを始めとする小学生たちが8ミリで映画製作を行なうという
映画好きならば、思わず心躍ってしまう設定で展開する。
しかも、彼らが製作するのはゾンビ映画だ。
彼らそれぞれのキャラクターが、手先が器用で繊細な心を持つ
主人公ジョー、監督を務めるデブのチャールズ、
爆薬作りに勤しむケアリー、優等生肌でパニックを起こすと
すぐに嘔吐するマーティンと明確に色分けされていて面白い。

彼らオトボケ4人組に巻き込まれ、マドンナとなるのがアリス。
このアリスを演じるのが「SOMEWHERE」など話題作が絶えない
天才子役のエル・ファニング。映画好きたちは文句なしに、
ノックアウトされているようだが、はっきり言って演技はまだまだのレベル。
前半はジュブナイル映画の定番ともいえるが、それがまた心地よい。
多少過剰すぎるともいえる列車の脱線シーン(*1)がありながらも、
彼らが不可思議な体験を次々にしていくという
ドキドキワクワクとさせられる展開だ。

ゴダールよりもデ・パルマが好き-スーパーエイト3








しかし、後半は極めて凡庸なモンスター映画と化している。
残念なのは、主人公たちの映画製作が後半から
物語の主軸となっていないことで、あくまでも宇宙人の存在に
気づくためのきっかけにしかなっておらず、散々、彼らの
青春物語を描いてきた割には、それらが後半のドラマへと
つながっていないような感触がある。
まるで突然まったく違う映画が始まってしまったようだ。
結局のところ、かねてから噂になっていた
「クローバーフィールド」の前日譚になってしまっている。
かといって、モンスターを見せないようにするために、
すべて寸止めで終わってしまう恐怖演出が邪魔をして、
しかも、何度も繰り返されるので、ただただ思わせぶりなばかり、
モンスター映画としての面白さが低くなってしまっている上、
実際に登場しても凡庸極まりないモンスターの造形に
がっかりさせられるだけという有様なのだ。
モンスターが軍用バスを襲撃し、ついに全容を
現すシーンも驚くほど緊張感に欠けている。

ゴダールよりもデ・パルマが好き-スーパーエイト4








唖然とするしかないほど唐突でカタルシスの欠片もない
クライマックスも、それに感動できるような純粋な心を
既に失ってしまっただけなのか、それとも、ただ単に、
恐ろしく脚本がダメなのか、悩むところだ。
(おそらく後者だろうが。CMは誇大広告)
エンド・クレジットの完成したゾンビ映画(*2)には
ほっとさせられ、ようやくじんわりとした感動がやってくる。
しかし、それは物語全体によって生じたものではなく、
ただ前半の映画製作という一部分に対する郷愁にすぎない。
この作品は撮影や美術、音楽や音響効果などは非常にレベルが高く、
良質な作品であることは間違いないのだが、それらが脚本という
設計図に則って大きなうねりを巻き起こすことが決してないのが物足りない。


〈75点〉


*1 列車の破壊シーンは、予告編と本編ではアングルが全然違う。
   異星人が列車の壁を突き破ろうとしているショットも本編にはなく、
   映画がCMや予告編を見ていることを前提に作られている。

*2 これだけで10点ぐらいは追加している。
   普通にうまくできているのだが、現実的に考えると、
   絶対に撮影がうまくいかないようなショットや
   音が綺麗に録れないようなショットもある。
「幸せパズル」
2009年・アルゼンチン/フランス・Rompecabezas
監督:Natalia Smirnoff
(IMDb:7.0 Metacritic:× Rotten:×)

ついに日本公開が決定しました!
2011年10月1日公開。

ベルリン映画祭にて鑑賞。

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「パズル」というタイトル通り、ジグソーパズルについての映画
であることは間違いないのだが、パズルそのものよりも、
やはりこの作品も「家族」に焦点を当てた作品だ。

主人公マリアは誕生日に家族からパズルをもらう。
それをきっかけにマリアはパズルが得意なことに気付き、
のめり込んで行く。
マリアは有名なパズル専門店へ行き、
そこで、パズル・トーナメントのパートナー募集の張り紙を見つける。
募集をしていたのは金持ちのパズルコレクターの男性で、
マリアは家族の反対を押し切り、
彼とドイツで開かれる世界大会を目指していくことにする。



あらすじだけ見ると、日本で言ういわゆるスポコンものだといえる。
パズルの大会があることにまず驚かされるが、
パズルを一般的じゃないスポーツだと捉えると、
「ウォーターボーイズ」などの系譜にあることことがわかる。

しかし、それはあくまでも、あらすじだけの事で、
実際、この作品は日本で作られている
スポコンものとは全く違った様相を呈している。

まず、この作品において、
パズルはあくまでも手段であって、目的ではない。
一般的なスポコンものでは、
その競技の大会で優勝することが目的であり、
それに向かって作品は構成されている。

だが、この作品ではドイツの世界大会の前に
作品が終わること、その前の地方大会においても、
パズル大会の様子や戦略などが
ほとんど描写されないことからもわかるように、
あくまでもパズルという競技は目的ではなく、
この作品のテーマを表面化させるための手段でしかない。

視点を変えてみれば、この作品を凡庸なスポコンものとは
一線を画した作品へと仕上げるために、
あえて、パズルとは別のところに目的を置き換えたのだともいえる。

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そこで、この作品のテーマが「家族」なのだ。
パズルに打ち込むマリアとそれによって変化していく
マリアと家族、夫と息子、娘の関係を表す
食事のシーンが平行して描かれていく。

また、パズルのパートナーとなる富豪はマリアに気があり、
それによって、夫婦関係はもつれる。

パズルによって明らかになる家族の分裂と、
そして、その家族関係の修復が描かれている。
冒頭の鳥肌が立つほど秀逸な誕生日シークエンスから、
家族の形骸化が提示されるのは見事だ。
望遠レンズのクロースアップだけでほぼ構成されていることも、
この作品がただのスポコンものではなく、
人間へと関心が向けられていることも感じさせる。

ただ、もう少しパズルに関して、観客が興味を示すことが
できるようなシーンや伏線があれば、
中盤、たるんでいたストーリーの原動力となり、
見やすくなったのではないかと思う。

主演のMaria Onettoの見事な演技、軽快な会話によって、
会場には終始、笑いが耐えなかったが、
スポコンものとしてのカタルシスは肩透かしに終わり、
家族のドラマとしてはコメディ色が強すぎたせいか、
見終わった後に中途半端な印象だけが残ったのは残念だ。

70点

「ダージリン急行」
2007年・アメリカ・The Darjeeling Limited
監督:ウェス・アンダーソン

ゴダールよりもデ・パルマが好き-ダージリン急行1



















間違いなく退屈な映画なのだが、それをわざとやっている節も
多分にあり、ただ「退屈な映画だ」と断言するだけでは、
「そうです。その通りです」と監督から言い返されそうだ。
前2作よりもその意図的なオフビート感は過剰に押し進められており、
もはやお決まりともいえる家族のドラマも今までにも増して
薄いものになっている。しかし、初めから真剣にドラマを
描こうなんていう気概があるはずもなく、すべてが
狙い通りなのだからたちが悪い、というか、ズルイ映画だ。

ゴダールよりもデ・パルマが好き-ダージリン急行2








前2作と比べて登場人物が少なくなったことによって
主人公3人兄弟の個性が際立っているのは良い。
顔の包帯だけでなく、靴がバラバラになったりして
しだいにグチャグチャになっていくオーウェン・ウィルソン、
真面目なように見せかけて奇想天外な行動を
思いがけずに取ってしまうアイマスクのエイドリアン・ブロディ、
何故だかモテるひげ男のジェイソン・シュワルツマンの3人。
彼らのキャスティングが絶妙で、思わず自分も一緒に
インドを旅しているような感覚になってくる。
白人特有の高慢さをコメディとして扱っていることには
辟易とさせられるが。
オシャレな美術もインドを舞台とすることで、嫌味がなく、
物語の舞台としてうまく機能している。
作品全体の雰囲気は今までで一番好きなだけに
自分でもなぜこんなに退屈してしまうのか不思議でならない。

ゴダールよりもデ・パルマが好き-ダージリン急行3







すべてがロケ撮影されたため、トリッキーな撮影が
不可能だったためか、いつにも増してカメラが
やたらとパンさせられているのだが、イマイチ効果がわからない。
もう一つ、ズームイン、ズームアウトの多用は70年代の
異国を舞台とした映画の雰囲気と呼応していて、
キッチュな味わいを出していたのは良かった。
これで物語が面白ければ、ウェス・アンダーソンは
タランティーノと同じぐらい個性的で面白い存在になると思うし、
その予感があるので決して嫌いになれない、むしろ好きだ。
もちろん、大ファンにとっては現状が一番なのだろうが。

〈60点〉