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(Number Web)

 ベルリンで行なわれた優勝報告会に40万人以上がかけつけるなど、24年ぶりのW杯優勝にドイツ中が湧き立っている。

 ブラジルとの準決勝で7点を決めて大勝した上に、W杯の通算ゴール数も224点で歴代トップになったこともあり、優勝の理由として得点力や攻撃力が挙げられることが多い。

 しかし、ドイツが優勝を果たすうえで、欠かすことのできない活躍を見せたのがノイアーだった。7試合で喫したのはわずかに4失点で、完封が4試合。86.2%のセーブ率を記録して、大会の最優秀GKに選ばれた。準々決勝のフランス戦の後半アディショナルタイムにベンゼマが放ったシュートをブロックしたシーンなど、彼の活躍したシーンは枚挙にいとまがない。

 そして彼は、新しいキーパーのスタイルを構築した選手としても記憶されることになりそうなのだ。

「ペナルティエリア内やディフェンスラインの裏に出されたボールへの対応も素晴らしいが、彼のエリアの外での支配力も素晴らしい。まるでディフェンダーのようにパス交換に参加することが出来る。チームに落ち着きをもたらしてくれるし、あらゆる選手の中で最高の選手だよ」

 そう絶賛したのはレーブ監督だ。監督が「最高」と称したその特徴が垣間見られたのが、決勝トーナメント1回戦、ドイツが最も苦戦を強いられたアルジェリア戦だった。

GKとは思えぬペナルティエリア外でのボールタッチ数。

 この試合、ドイツは前がかりになりながらもアルジェリアの守備を崩せず、カウンターから何度もピンチを招いていた。

「W杯予選ではしばしば相手が自陣に引いてきた。その結果、我々はカウンターに苦しむことになった」

 レーブ監督は大会前からチームの課題をあげていたが、奇しくもその言葉通りに欠点を突かれたのだ。しかし、その弱点を補ったのがノイアーだった。

 何度もペナルティエリアの外に出て、相手のカウンターを防ぐ。ノイアーがこの試合で記録した56回のボールタッチのうち、なんと21回がペナナイキ フリー ティエリア外のものだった。

『偽の9番』ではなく『偽の5番』というポジション。

 ノイアーはこう語っている。

「もちろん、前に出るのはリスクがあるよ。少しでも遅れてしまえば、相手を倒して、レッドカードをもらうことになってしまう」

 ただ、以前彼はこうも話していた。

「でも、僕はレッドカードをもらったことは一度もないんだよ」

『キッカー』誌は、こう記している。

「ドイツでは『偽の9番』(※いわゆるゼロトップのこと)について、これまで議論してきたが、これから話題になるのは『偽の5番』についてだ」

「偽の5番」というのは、何を意味するのだろうか。『ヴェルト』紙はアルジェリア戦のノイアーについてこう書いている。

「ドイツの4バックのポジショニングは完全に混乱しており、DFラインのコントロールで何度もミスを犯していた。28歳のノイアーはこれまでのキーパーの役割を否定して、大きく進化させた。ドイツにとって彼は強力なキーパーだっただけではなく、屈強な『ディフェンダー』でもあったのだ」

まるでベッケンバウアーのような「5番」の役割。

 ヘベデスの話を聞けば、「5番」の意味はわかるはずだ。

「ノイアーは世界最高のキーパーだ。ゴールライン上での反応は本当に素晴らしい。そして同時に、パス交換に長けた『リベロ』のようでもあり、多くのロングパスでチャンスを作ってくれる」

 そう、「5番」はドイツでリベロのポジションを確立したベッケンバウアーのつけていた背番号なのだ。

 もちろん、ノイアーは前に出ることだけを求められているわけではない。そこで正確に味方にパスをつなぐための足元の技術も必要となる。ノイアーの攻撃での貢献度の高さについては、ドイツ代表のキーパーコーチを務めるケプケが太鼓判を押す。

「彼のところにいつも簡単なボールが来るわけではない。にもかかわらず、彼は攻撃につながるようなパスを出してくれるんだよ」

パス成功数244本は、メッシよりも多い数字だった。

 ノイアーのW杯におけるパス成功率は82%で、5試合以上プレーした選手の中で22位につけている。パス成功数は244本で、全選手の中で26位。メッシよりも多くのパスを通しているのだ。

 ノイアーと同じくシャルケユース出身で、-10--11シーズン終了までシャルケでともにプレーしたヘベデスは、彼の大きな変化を感じている。

「シャルケ時代にもものすごい活躍を見せる選手だったけど、バイエルンへ移籍してさらに成長したんじゃないかな」

 ノイアーは、昨シーズンからバイエルンの監督に就任したグアルディオラのもとで、ドイツ代表につながるような役割を意識させられていると語っている。

「ペップはDFラインを高く保つので、僕もこれまで以上に多くのプレーにかかわることになった。リベロのようにロングボールを蹴り、ゲームの組み立てに参加しないといけないし、ペナルティエリアを出るギリギリのところに立っていないといけないんだ。それにヘディングでクリアする練習も何度もしたからね。ペナルティエリアの外に出てクリアする準備もバッチリさ」

名守護神を輩出してきたドイツサッカーの懐の深さ。

 ケプケGKコーチは、こう話す。

「ドイツには長い間リベロがいなかったんだ。だけど、ノイアーがそういう選手だと言うのは、決してお世辞ではないんだよ」

 自らの持っている能力とペップの下でのトレーニングを経て、ノイアーはW杯で新たなキーパー像を作り出した。

 シューマッハーに始まり、21世紀に入ってからもカーンやレーマンなど、優秀なキーパーを次々と輩出してきたドイツ。今大会のドイツ代表のメンバーからは外れたものの、新シーズンからバルセロナでプレーするテア?シュテゲンはノイアー以上のキックの精度を誇っている。

 ともすれば脇役と片づけられてしまうキーパーというポジションに脚光が当たる。そのあたりにドイツサッカーの懐の深さと、強さの秘密があるのかもしれない。

文=ミムラユウスケ

photograph by Getty Images