乾いていく父
食欲がなくなり、水分も取らなくなり、声も皮膚も乾いていく。
それでも、話しかけると絞り出すように掠れた声で返してくれる。
一日中ベッドの上で過ごし、小型のポータブルテレビをぎゅっと握りしめている。
父は毎日どんなことを感じ、思い過ごしているのだろう。
言葉にならない想い。
力なく見つめる目。父の左目は義眼。
若い頃、追突され助手席に乗っていた父の左目に割れたガラスが刺さったそう。
それからずっと右目だけで生きてきた父。
今日は、うつむきポータブルテレビをぎゅっと握りしめる父の左目(義眼)だけが
じっとこちらを向いていた。意思を持たないであろう義眼だけが見開き
ただただ正面からこちらを見つめていた。
帰りがけ、「○○(息子)をお願いね。」と声をかけると
「おお」とはっきり返してくれた。
今日から数日間、高校生の息子が実家にお世話になる。