monster3900のブログ

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俺の部屋にアイツが入り浸って何日が立つだろうか。


コンビニへ寄り、少し買い物をしたビール袋をぶら下げたまま、俺は自宅アパートの俺の部屋がカーテン越しに淡い光を放っているのを見上げる。


はー


そして俺はため息をついた。


ため息は長く白く冬の寒空に登って行った。


そんなため息を見送るように夜空を見上げると、空には冬のすんだ空気によく煌めく星々が、俺の疲れた肩を癒すようにその儚い光で照らしてくれた気がした。


重い足で階段を登る。


深夜、静まり返ったアパート周辺。階段を登る俺の足音とビニール袋が擦れる音がやけに響いた。


鞄から鍵を取り出し、ドアに差し込み鍵をまわすとカチリと子気味のいい音が響く。


普通ならここで、一日の疲れという荷を卸ろし、自宅の床を踏めるのだがここへ来てそれもままならない。


何故なら、我が家の蛍光灯の光がこの玄関扉を開けて俺を照らす瞬間から、さらに俺を疲労させるアイツが俺の部屋に当然のようにそこに居座っているからだ。


「ただいまー」


俺の声がワンルームの部屋にけだるく響く。


「ん、おかえりー」


女の高く澄んだ声が俺を出迎えた。


ついでに暖房の効いた温かな空気に乗ったアイツのおかげでこの部屋を占める甘い香りもだ。


「あはははー」


俺の帰りを迎える気はさらさら無いようで、アイツは深夜のトーク番組に夢中になっていた。


部屋の中央にあるコタツの中に入り、その机の上にはベタにみかんが小さなバスケットに入っていて、それを二つほど食べた形跡があった。


因にそのみかんは俺の実家の仕送りだった。そして、一人暮らしだった俺が愛用し座っていたハズの座椅子にはそのみかんを今さっき貪ったであろう犯人が堂々と居座って、暢気にテレビを見て笑ってやがる。


コタツの上にビニール袋を置くと、俺もコタツに納まり膝を丸くする。


「あー寒かったー」


「お、シュウちゃん、もちろんクリームインプリンは買って来たよね?」


既に風呂は入ったのだろう。


寝間着にしている、白を基調にピンクのボーダーの入ったフワモコ生地のフードパーカーのルームフェアをきている。


小首を傾げ、大きな目をぱちぱちと瞬かせながら当然のように聞いてきた?


トリートメントで手入れしたばかりの淡い茶色のショートカットの髪が少し揺れた。


「ふー、あったきゃい」


俺はヤツの質問を無視した。


俺は一日の仕事を終え、冬の寒空から帰宅した俺の労を無条件に暖め、癒してくれるコタツの温もりに寄り添うのだった。


「ねーえー!プリン早く袋から出して!ふた開けて食べさせてー」


シュウとは俺へのコイツの呼び名である。因に本名はシュウヤ。


「あーごめん、買うの忘れた。お前がもっと毎日働く俺を暖かく迎えてくれるような良い奴ならそんな俺の優しさも垣間みれるぞきっと」


「むー」


すると頬を膨らませ、今までコタツに潜んでいた両手を発動させビニールを漁りだした…


「なーんだ、あるじゃん、クリームインプリン!ありがと、シュウ」


不機嫌から一転。


甘い猫なで声でプリンを頬にあてながらお礼を言うコイツの名前はケイタ、だ。


漢字で書けばこうなる、『圭太』と。


今のケイタは、というか普段の常日頃のケイタも他人が見れば間違いなく女だと思うだろう。


身長も身体のラインも、着る服も声も顔も体毛の生え方も、普通の一般的な女の子と何を取って比べても比類なく、間違いなく女の子だった。


しかも、普通よりもその見た目は女の子の中でも可愛い部類に入る。


しかし、そんな”彼女”の名前はケイタであり、ケイタという名前を聞いて思い浮かべる性別がその名前の主が男であるように、その理由はまぎれも無く男だったからだ。


それは異国ではそれが一つの性として確立されつつある、心が産まれた身体に反するがいわゆるゲイやオネエではなく、ケイタの場合は心も身体もまぎれも無く男だった。


ケイタは普通の男と同じように女の子が好きだし、可愛い子には恋をする。


ケイタは、ただ女装が趣味で、しかも仕事でもそれを生業としている、つまりれっきとした『男の娘』なのである。
「礼には及ばないよ。だって無い方が面倒くさいし、オマエ」


ケイタがもし女子ならそんな皮肉は言えるたちではない俺だった。


しかし男の娘なら別だ。俺は少々きつい言葉を浴びせるにはためらわれるような可愛いその笑顔にも、躊躇なくそんな言葉を吐く。


「よく分かってんじゃん」


ケイタはいたずらっぽく笑って僅かに頬を赤らめた。


アゴを引いて、嬉しそうに笑いながら早速プリンを食べようと、コンビニで貰ったスプーンを開け始める。


「んじゃ、俺は風呂入ってくるかな」


俺はそう言って立ち上がろうとした。


「あ、待って」


するとケイタは立ち上がろうとしたオレの頬にキスをしてきた。


それは不意の出来事だった。


頬に唇が触れるフレンチキス。


そしてすぐに離れた。


頬が少し濡れた感触がした。


風のように過ぎ去った一瞬の温もり。


その後、俺はどんな顔してケイタを見ていただろうか。


ケイタは僅かに頬を赤らめ、俺の頬に押し付けた唇をパーカーの袖で抑え、明らかに恥ずかしそうにして横を向いてしまっている。


ぐッ…


コイツが女だったら、この瞬間俺は理性を保っていられなかったのかもしれない。


俺は普通の女より可愛いコイツを、少なくとも俺の周りでは一番可愛いコイツを男として扱う努力をして来た。


そんな努力は忍耐の他でもない。こんなにも傍にいて、一番身近な存在でいろんな意味で辛い相手はコイツがこんな風に特殊だったからだ。


それはケイタの心は正真正銘の男であって、身体は女であるという外面的には曖昧であっても、内面的な境界がはっきりしているから、当然俺の中の理性は男に劣情をもよおすことに抵抗できた。


しかし、今まさにケイタは、そんな境界も曖昧も関係なく俺を混乱させるだけ混乱させるまぎれも無い現実を突きつけてきた。


こんなにも急に、不意に。


一瞬のキスには、それだけの破壊力が備わっていた。


「シュウ、明日から週末じゃん。私、この土日で引っ越すね。短い間だったけど、こんな私を面倒みてくれてありがとう…」


そう言って、ケイタは再びコタツに入り直り三角座りをした。


恥ずかしそうにしながら、コタツ布団でその口元を覆って、上目遣いで何か他に訴えたいことでもあるように俺を見てくる。


その姿に、どこか寂しさが滲んでいるように見えたは気のせいだろうか。


俺は、膝立ちのままそれを聞いて、コタツで丸くなるケイタの傍まで近寄った。


ついているはずのテレビの音は雑音というよりも遠く、俺の耳には届かなかった。


そしてそのまま、ケイタの傍で膝を折って、ケイタの首筋から風呂上がりの石けんの匂いが香るほどの距離まで俺は顔を近づけた。


その瞬間、ケイタは俺の行動を感じ取り、その動機の意図を受け入れた上で、敢えて反応を示さないまま、布団に口元を埋めたまま俯いていた。


髪が小さな白い耳にかかり、もみあげの産毛の生え方を見ても、その横顔はまさに女の子そのものだった。


俯くためにカーブした首筋はさらに白く、柔らかそうで、近くで見ればみるほどその美しさに、触れてはいけないと分かっていればいるほど触ってみたくなるような、そんな症状にかられる。


俺は手をのばし、ケイタの頬に触れそのまま俺の方へ顔を向かせた。


強引かと思った俺の行動も、俺の意図を飲み込んだ上で同意するように、いともかんたんにケイタの整った顔は俺の方へと傾いた。


薄い唇はどこか緊張に結ばれ、大きな瞳は何かをほしがるように濡れていた。


俺の指が触れるケイタの柔らかい頬は、僅かに熱を帯びた気がした。


「引っ越す?お前、今更なに勝手な事ぬかしてんの?」


「え?」


今度は俺から、ケイタの唇に唇を重ねた。


ケイタの唇は緊張のせいか固く結ばれていたが、すぐにあきらめるように柔らかくなり、俺の唇に馴染む感触が伝わった。


ケイタとのキスは狂いそうなほど妖しく甘い香りと柔らかさに満ちていた。


欲望に溺れぬよう、緊張感を保つのが精一杯だった。


部屋の空気は冷たく、音の無い部屋で俺たちはキスをしていた。


昨日まで、ただの親友のように共有していた賑やかだった部屋の空間全てが、その表情を変えた気がした。


俺たちは男女じゃない。


今更そんなことを思い出すと俺は、根拠の無い罪悪感に襲われ、唇を離してしまった。


「シュウ…」


しかし、すぐにケイタの二つな大きな黒目がちな双眸が欲しがるように濡れた。


不安そうに眉を八の字にゆがめて、おぼつかない手で俺の服の袖口を掴んでくる。


その瞬間、俺は確信した。


というか、だだ俺の我慢の限界だったのかもしれない。


俺は再びケイタに唇を重ねた。


今度は俺の唇を歓迎するように、ケイタの唇は俺の唇を受け止めた。


俺の舌はケイタの唇をこじ開け、その生暖かい口内に侵入し、緊張したように静止する舌を捉えるとくすぐにケイタの舌をなでるように舐めた。


「ん、んあ、は…」


するとケイタは可愛い反応を示した…


こうして、俺は破ってしまった。


ケイタが男の娘であるが故に、ケイタに誓った決意を…


そして魅了され、墜ちた。


男の俺が、男の娘の魅力に。