びわ湖Mや福岡Mといったエリートレースではスペシャルドリンクの設置が認められています。

しかし、このような大会に出場できる市民ランナーは少ないため、ネットを調べてみても情報は少ないし、実業団のようにノウハウもないということで何を用意すればいいか困っている人も多いと思います。そこで、自分が本読んで勉強した内容をもとにスペシャルドリンクについて考えた内容を共有したいと思います。


この後内容は長いので先に結論を言ってしまうと、

・モルテン320を二つ分8カ所に分けて設置し、その場の位置どり、余裕度に合わせて取るかは決める。

・時々水分補給の為にゼネラルドリンクをとる。


スペシャルドリンクを摂取する目的

 以下の様なものが挙げられます。

・糖質補給

・水分補給

・+αの効果を期待して

 

糖質補給

マラソンは血中乳酸濃度が2mmolから競技選手では4mmolあたりになるペースで走っていると言われています。つまりLTかLTを少し過ぎたくらい。そこで以下の図を見てわかる様に



糖代謝由来のエネルギーの寄与率がそれなりに高いことがわかります。それにも関わらず体内に貯蔵されているグリコーゲン量は多く見積もって2000kcal程度です。(マラソンの消費カロリーは自分の体重で簡単に見積もって2447kcal程度)ただし脂質代謝由来のエネルギー等もあるので補給しないとエネルギーが足りないと言いたい訳ではありません。ただ糖質補給の重要性を伝えたいだけです。実際に30kmの壁、35kmの壁と言ったものはこの糖質が欠乏する事によるものだと考えられています。


水分補給
この重要性については言うまでもないと思います。ただ以下の図を見てわかる様に

冬場に行われるマラソンにおいては夏ほどは重要性が高い訳ではないと考えられます。このことは感覚的にもみなさんわかりやすいと思います。とはいえ、冬のマラソンや駅伝中継で脱水症状でふらふらになる選手をたまに見たりする様に侮って良い訳ではありません。結局何が言いいかというと、冬場のマラソンのスペシャルドリンクにおいてミネラル等まで考えてマネジメントするよりも、先述した糖質補給の方が重要なのでは無いかということです。水分補給についてはスペシャルドリンクに含まれる水分やゼネラルドリンクで賄うようにすれば良いのです。水分補給におけるゼネラルドリンクの良さについては後述します。

+αの効果
+αの効果を付与するものの代表としてカフェインが挙げられます。お前の大好きなやつやん!と思われる方もいるかも(?)ただ僕はカフェインはスペシャルドリンクには入れないつもりです。確かにカフェインは覚醒作用による疲労感の軽減、パフォーマンスの向上
また交感神経活動の亢進→アドレナリン分泌の促進→フォスフォジエステラーゼの働きを阻害→脂肪分解酵素の働きを高めるという機構で脂肪分解を高めることができると知られています。
しかし、問題が二つあって、まず、利尿作用がある事。自分は割とお腹が弱い方なので普段モンスターを飲んでもトイレに行きたくなります。これがマラソン中に起こったら困るのは言うまでもありません。
あともう一つは割と多くの量を摂取しなければならない事。これはレース前の推奨摂取量ですが、体重1kgあたり3〜6mgです。自分の体重で計算すると174mg〜348mg。僕の大好きな355mlモンスターに換算すると役1.2本〜2.5本。なので最低でも500mlのでかいモンスターを飲まなければなりません。
いや多いわ!
まあと言うわけで、期待した効果を得る為には沢山飲まなきゃいけないと考えられる事、それに伴いトイレリスクも上がるって言う事でカフェインは採用しません。
因みにですが、同じ理由で自分はトラックレース等でも試合前にはカフェインを摂りません。レース後やポイント練習後のご褒美として飲むようにしてます←周りの人に理解されない。

実際に何をどのくらい取るか
とりあえず糖質摂取が大事なことは分かった。じゃあ何をどのくらい摂れば良いのかって話になります。
ここで必要な情報は以下のものです。

・糖質の摂取量は1.0g/分が推奨
・8%程度までの糖濃度にしておくべき
・一度に多量に摂取するのではなく10〜15分毎に小分 けに摂取すべき
・グルコースとフルクトースを2:1で摂るのが良い

ちょっと待てよ。上の2つから考えると
自分の目標タイム2時間20分で考えると飲むべきドリンクの量は少なく見積もっても....
1.0(g/分)×140(分)÷0.08=1750(g)
1.75kg!?
フルマラソンの給水として飲める量じゃないですね...
うーん、もっと効率良く糖質を摂ってできる限り、糖質の推奨摂取量に近い量を取りたいところですね。
どうすれば良いのだろうか?
(僕がいるよ)
こ、この声は!
はい、近年話題のモルテンですね。モルテンの公式のサイトによると「ハイドロゲル」と言う新技術の発明により16%の炭水化物濃度にする事を可能にしたそうです。
という事は単純にモルテンなら0.825kg飲めば良いという事になります。
一回の給水で飲める量っていうと感覚的に紙コップ(約200mlらしい)の6割くらいな気がするから、モルテンならざっくり7回給水すればOKてところですかね。
びわ湖でおけるスペシャルドリンクは8カ所だから、出来るだけ毎回取るようにした方が良いですね。
また、給水所は4〜5kmおきなので、10〜15分おきに摂取と言う観点で見ても良いですね。
他にも、糖質飲料のメリットとして、味覚で甘さを感じるとドーパミンが放出され、運動中においては疲労感の軽減やモチベーションの維持を助ける事があります。そのような観点でもこまめに給水を取るのは良い事だと考えられます。
ただ、レース中だと位置取りや余裕度によって取りにくいこともあると思います。無理に取りに行って体力を削るのは良く無いと思うので、実際本番では、準備の段階でこの理想量より少し多めくらいを準備して(モルテン320を二つ分を8個に分ける)、実際に取るかどうかは本番の感覚で決めようと思います。 

また、追加してモルテンの良さについて語るとすると
グルコースとフルクトースを2:1で摂るのが良いと先ほど述べましたが、これは小腸にて糖が体内に吸収される際にグルコースはSGLT1,フルクトースはGLUT-5という事なる輸送体をもって体内に吸収される為良いとされています。簡単に言うと小腸にてグルコース専用の入り口とフルクトース専用の入り口があって、両方の入り口を使った方が効率が良いじゃんという事です。
ここでモルテンに話を戻すと、モルテンにはグルコースが複数繋がった形のマルトデキストリンと、フルクトースが含まれています。この観点からもモルテンなら、効率良く糖質を吸収できるといえます。
(マルトデキストリンをグルコースに分解する手間の影響とマルトデキストリンの形でモル濃度を小さくでき、体液との濃度勾配が大きくなり、浸透圧によって吸収されやすい影響の塩梅がわからない為グルコースとマルトデキストリンどちらが良いかは自分にはわかりません。)
2:1に関してはモルテンの公式にマルトデキストリンとフルクトースの含有量に関する記載が書いていなかったので分かりませんでした。

水分補給における理想
今回スペシャルドリンクに関しては糖質を摂ることをメインで考えて、モルテンを採用する事にしました。では水分補給についてはどう言うものが理想だと考えれるのでしょうか?
良く水だけでなく塩分を取れと言いますが何故でしょうか?
これは生体内における体液量の調整が「浸透圧調節系」と「容量調節系」の二つの系によって行われていて、特に暑熱環境下において喉の渇きとより深く関係しているのは「浸透圧調整系」と言われています。これは文字通り浸透圧(簡単に言うと水分が薄い方から濃い方に行こうとする力)によって水分量が調整されているので、塩分を取らないと不都合が生じます。以下にわかりやすい図を示します。

汗は水分だけではなく塩分も多く含んでいるから、汗をかくと水分も塩分も失われます。ただし、水分量の消失の方が大きいから塩分濃度自体は高まり、浸透圧が上昇します。そこで水分のみを摂取すると運動前と比べて少ない水分量で正常な浸透圧になってしまいます。(これ以上水分をとっても尿として体外に排出される)これを自発的脱水と言います。
ではどの程度塩分があればいいのか?
日本救急医学会によると食塩濃度0.1%〜0.2%、ナトリウム濃度にすると100mlあたり40〜80mgが推奨されています。市販されているスポーツドリンクはこの範囲に調整されている場合が多いです。
その為ゼネラルドリンクは水分補給として適していると考えられます。
また、この事から水分補給もしたいからと言って、市販のスポーツドリンクを薄めて使ったり、スペシャルドリンクを使う際に市販のスポーツドリンクで割るのは思っていた効果が得られない可能性があると考えられます。

スペシャルドリンクについての内容は以上です。
今回主に参考にさせて頂いたのは寺田新先生のスポーツ栄養学という本です。他にも面白い内容が沢山あったので興味のある方は読んでみてはいかがでしょうか?

参考文献

寺田新著
スポーツ栄養学

東京大学大学院総合研究科身体運動研究室編
身体動作科学アドバンスト

八田秀雄著
乳酸サイエンス-エネルギー代謝と運動生理学-