アルバムの制作意図(引用ここから)
僕の失恋に名前なんてない(CDブックレットより)
前作「彼氏のマストアイテム」(2015)から4年半が過ぎた。
「彼氏の〜」は「人生に絶望した男が恋をすることで前向きになっていく物語」をミュージカルやドラマCDのように描いたが、彼の恋が成就したかどうかは描かれていない。なぜなら、彼は僕であり、僕が成し得なかったことは描きようがなかったからだ。
「成就とそこからの愛のある暮らしの様子」は前作の「次回予告」でタイトルのみを予告した「彼女のポップアイコン」に先送りになり、その間に僕はアイドルマスターシンデレラガールズの諸星きらりに出会い、二次元アイドルに夢中になった。
「同人イベントへのサークル参加権」獲得を目的とした「グレイトプレゼント」を作曲して以来、音楽活動の軸足はすっかり二次元コンテンツに向けられ、結果としてそれは「みんなでプリズムジャンプ」というアルバムに結実する。自画自賛で恐縮だが、「みんなで〜」は、明るく、楽しく、カラフルであり、音楽の持つ煌めきに溢れたものになったと自負している。
反面、私生活はどうだったか。
僕は恋をしてたような気もするし、失恋したような気もするし、何か静的なことや素敵なことを妄想してたような気もする。
僕の私生活に名前はない。
何もなかったのか、何かあったのか、全てがぼんやりしてる中、いくつかの楽曲や基本曲のマテリアルを再利用したものが散らかっていて、とりあえずまとめてみようかと思った。
それがこの「僕の失恋に名前なんてないから、僕はとりとめのない妄想をする」だ。
「単体ではセールス的に厳しい」という思いから「みんなで〜」と抱き合わせにしたのが正直なところだが、それでも僕はこのアルバムを愛しているし、何かしら感じていただければ幸いです。
「みんなでプリズムジャンプ」ともどもたくさんの皆様のお力添えがあって形になりました。深くお礼申し上げます。
(引用ここまで)
引用されたセルフレビューの通り、本作は「私生活の切り貼り」「寄せ集め」であり、それゆえに情報量が多い作品になっています。なお、ところどころ「movie_edition」という表記があるのは、本作が架空の映画のサウンドトラックという設定で作られたためです。どういう映画なのかわかりませんが、恐らくは単館系の地味な映画だと思います。
1.Urban Mellow
作詞作曲編曲/Theムッシュビ♂ト
初出はネットレーベルのOMOIDE LABELから2016年にリリースされた「デートコースEP We are(not) a couple」。淡々とした8ビートに乗せて諦念を歌う失恋の歌。失恋の歌ですが、どこかさっぱりした気分を表した曲になっています。サウンドコラージュなどが多いアルバムなので、全体を締めるためにオーソドックスな歌モノから始まる構成にしました。初出の音源には手を加えていません。
2.Himitsu Fictional
作詞作曲編曲/Theムッシュビ♂ト
初出はkikigatariが企画、ネットレーベルのOMOIDE LABELと迷われレコードからリリースされた「架空コンピ」(架空のレビューを元に作曲された楽曲を収録したコンピレーションアルバム)であり、更に言えば2013年にリリースされたアルバム「キラーチューンズ」にシークレットトラックとして収録された楽曲「秘密」のセルフリミックス。原曲の要素のみを切り貼りする形で作られた歪なラブソングです。
3.告白/flying_ep_preview
作詞/Theムッシュビ♂ト
初出は2015年にネットレーベルの迷われレコードからリリースされた「フライングEP We can(not) fly」で、初出時のタイトルは「フライングEP予告編」。同じEPに収録されている「翼をください」(後述)のオケに「ソニックウェーヴ」という楽曲中のセリフを乗せたもの。「告白」というタイトルのままの内容です。
4.Scrap And Build
本作のための書き下ろし曲、というにはあまりにも前衛的な楽曲。フリー素材の爆発音にVari Audioをかけてランダムな音程のベースラインを作るという手法で作りました。タイトルの通り、破壊と再生を描いた短いインストゥルメンタルです。
5.彷徨/ame_techno
本作のラストトラックである「雨」のリミックスですが、ほぼ原型を留めていません。テクノ曲ですが、意図的にモノラル音源にすることで原始的な音の塊がガツンとくるような音像を目指しました。
6.虚無/tenshino_inai_11gatsu(short_remaster)
2009年に発表したアルバム「Be Happy!!」に収録した楽曲「天使のいない11月」を短く再編集したものですが、ほぼオリジナル通りの内容。元々のコンセプトは「失恋の喪失感を感情のない音のみで構築したインスト」という非常に実験的な作品です。
7.KUSO(movie_edition)(Theムッシュビ♂ト/浅田大根)
作詞作曲編曲/Theムッシュビ♂ト
本作のための書き下ろし曲。続く「KUSO」の英訳アカペラ曲です。本当はオケも作っていましたが、ゲストボーカルの浅田大根さん(「しおさい恋唄」のボーカルの方です)の歌声があまりに良いため思い切ってアカペラにしました。歌詞の内容はここでは書けないようなものですが、それゆえに浅田さんのボーカルが説得力を担保していると思います。本当に感謝です。
8.KUSO (Theムッシュビ♂ト/浅田大根)
作詞作曲編曲/Theムッシュビ♂ト
先述した「KUSO」の日本語ヴァージョン。ピアノとドラムは僕の生演奏です。
9.回想/sunao_ni_narenai(off_vocal_short)(Theムッシュビ♂ト/堀本陸)
作曲/Theムッシュビ♂ト 編曲/堀本陸
2015年のアルバム「彼氏のマストアイテム」に収録した楽曲「もうすぐ素直じゃなくなる」を「ピアノと歌のみ」にしたリミックス「Sunao Ni Narenai」からボーカルをミュートし、短く編集したものです。原曲のアレンジをしてくれた堀本陸くんによるピアノのパラデータと自分で作ったアンビエント音のみで構成しています。
10.Summer Screen(Theムッシュビ♂ト/中島ミチカ)
作詞作曲/Theムッシュビ♂ト・編曲/中島ミチカ
「みんなでプリズムジャンプ」に収録した「夏の映幕」と全く同じ楽曲/音源です。テイストが全然違う「みんなでプリズムジャンプ」と本作ですが、全く同じ曲が1曲あることでその両者を繋ぐような演出ができるのではないかと思い、こちらにも収録しました。
11.Himitsu Fictional(short)
「Himitsu Fictional」のショートリミックスです。ピアノ中心の曲が続くので、印象を締めるために入れました。
12.shinkai_kara_sora_wo 「音奏で君を想う」「あおなみ線」より(MCムッシュ)
作詞作曲編曲/Theムッシュビ♂ト
初出はネットレーベルの絶滅レコードからリリースされたコンピレーションアルバム「psychedelic trash vol.2」。「彼氏のマストアイテム」に収録された「音奏で君を想う」という曲のイシダストン氏のピアノ演奏を元に構成したオケに即興の詩を乗せたポエトリーリーディングです。初出時は即興朗読をそのまま収録しましたが、本作では即興ゆえのテンポの悪い箇所を1ヶ所だけカットしています。
13.翼をください(Theムッシュビ♂ト/Orca Life(Cris Roberts)/沙糸しろたま)
作詞/山上路夫・作曲/村井邦彦・編曲/Theムッシュビ♂ト
初出は2015年に迷われレコードからリリースされた「フライングEP We can(not) fly」。言わずと知れた超名曲のカヴァーです。ピアノは僕の生演奏で、オケには2014年に僕がプロデュースした沙糸しろたまというシンガーの「君に届け」をアメリカのアンビエントアーティスト・Orca Life氏がリミックスした音源を使用しています。著作権の関係で配信版には収録していません。
14.統合(movie_edition)
作曲編曲/Theムッシュビ♂ト
制作中の歌モノ楽曲からサビのメロディを引用して作ったショートトラックです。
15.希望/happy_happy_wonderland(piano_solo)(Theムッシュビ♂ト/I.Schumi)
作曲/Theムッシュビ♂ト・編曲/I.Schumi
諸星きらりちゃんイメージソング「はぴはぴ☆わんだーらんど」をI.SchumiさんがピアノソロアレンジしてTwitterに上げていた動画を許可を得てオーディオ化したものです。
16.やさしい調教
作詞作曲編曲/Theムッシュビ♂ト
ある人のR-18小説作品の「主題歌」として2018年に作った楽曲ですが、このアルバムの中で最もポップなナンバーかもしれません。
17.雨(Theムッシュビ♂ト/堀本陸/馬瀬みさき
作詞作曲/Theムッシュビ♂ト・編曲/堀本陸・馬瀬みさき
2016年夏にライヴで弾き語りを披露し、2017年12月30日に音源をsoundcloudで公開した楽曲です。Lantanの2人によるピアノとチェロの編曲が美しいバラードナンバーで、鈴木知聖さんによるチェロ生録をした贅沢な作品ですが、リリースのタイミングを逸してしまい、ここまで寝かせてしまいました。歌詞に登場する「砂糖の心を持った天使」は言うまでもなく佐藤心のことですが、Pになる前に佐藤心の名前が出た理由とはなんなのでしょうか。
18.Answer For Voices(2020_new_mix)
作詞/MCムッシュ(原作詞/覚和歌子)・作曲/菅野よう子
新井昭乃さんの「Voices」をサンプリングしたトラックに僕がラップを乗せた楽曲で、2016年にsoundcloudで公開したものです。オリジナルはサンプリングでしたが、CD収録にあたり著作権をクリアするためにサンプリング部分のボーカルはOrcaさんに歌っていただいたものに差し替えています。なお、この曲のトラックメーカーの方は「リリースは自由ですが、ボーカルをサンプリングから新録に差し替えるということは僕のトラックに手を加えることになるので僕の作ったものとして名前を出さないでほしい」という意向からクレジットしていません。
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