半額の日、俺達は巣を旅立つ


普段は隅でじっとしてるだけ


半額だから、借りられる


俺のタイトルは


『悪夢の街、テラー』


B級ホラー


久しぶりに怖がらせるか


俺をカウンターへ連れて行く


派手なネーチャンに、ニーチャン


今日も仕事、お疲れ様


バーコード読まれて袋詰め


着いたのはアパート


俺が入ったのは


ホームシアターじゃなくて


ただのテレビデオ


再生、最初はトバすなよ


俺、PRもしてるんだから


本編始まっちゃったよ


早送りし過ぎ


「怖くないじゃん」


「お前がアフターしてるから」


そうだよ、半額の日だし


喧嘩しないで見てくれよ


あ、俺に物投げるなよ


借りモンなんだからさ


「だったら出てくよ! 」


「行けよ、どこでも! 」


喧嘩は止めてくれよ


俺、ちゃんとミイラ映してるから


俺、ちゃんと叫び声聞かせてるから


「シューちゃん、いっつもそう」


すぐ仲直り


俺、無視されてR18が始まる


見せつけないでくれよ


俺だって隣の「恐怖の鬼女」が


恋しくて仕方ないんだから


一週間って長いよ


どうせこいつら、ギリギリで返却


また喧嘩しながら




俺、山形牛サーロインローストビーフ


霜降ってて、柔らかい


値段だって100g 1.380円


周りはこんがり、中真っ赤


タタキじゃないぜローストビーフ


今日、俺を指名買いしたのは


身なりのいいセレブ


パックに詰められ、タレ付けて


バスで連れて行かれる


あれ? これ団地だろ


あ、でもお皿は北欧製だよな


100均のお皿なんて嫌だぜ


パックから出た世界は


小さなテーブル、端にシール


乗せるお皿は景品の白い皿


おまけにフチが盛り上がってる


何これ、俺の長いバディ曲がる


タレそのまま掛けるなよ


おい、セレブ!


あ、小さな子が出て来た


俺は子供の食いモンじゃない


止せよ、箸で摘むなよ


うわ、食べられた


「おいしいねーおかあさん」


父親の姿が無いテーブル


隣には小さなケーキ


この子の誕生日


俺をもっと食べてくれよ


お前のご馳走になりたい