大岩周辺の捜索が始まりました。
ロンが言います。
「あの人工物が少し埋まったってことは、あの高さより低い所を探せばいいんだよ。」
それは至極当然なことね、とミィは頷きます。
さしたる時間をかけず、目的のものは見つかりました。
大岩をくるりと回りこんだ先は、緩やかな下り坂になっていたからです。
ミィとロンは、目を凝らしながら砂の丘を下って行きます。
あちらこちらに、砂の大地から突き出した大きな石や、小さな石が転がっています。
どれも疑わしく見えますが、しっかり見ればそれが自然物なのか人工物なのかは分かります。
多少風化していたって、人の手が加わったものはそれなりの形をしているのですから。
一つひとつ、近寄っていって確かめます。
「これも違う。」
次の石。
「これも違う。違うね、ミィ。」
次の次の石。
これは日が暮れそうだわ、とミィは思いました。
そもそも、こんなことして何になるなのかしら、とも。
ミィはパパとママを探しているのです。砂に埋もれた何かを探す為に旅をしているのではありません。
とはいえ、張り切っているロンにそんなことを言うのは酷というものです。
ピョンピョンと石から石へと跳んではねるロンを見つめながら、ミィはどうしたものかと溜息をつきました。
「パパ、ママ。どこにいるの?何をしているの?」
空を仰ぐ、ミィ。青色と太陽の日差しが目に突き刺さります。寂しい気持ちが膨れてきます。
「おーぃ、ミィ。ちょっと!こっち!こっち!!」
ロンの声が不意に、ミィの悲しみの心に割って入ってきます。
思わず飛び出そうになっていた涙を慌ててひっこめる、ミィ。
でもロンの姿を見つけることはできませんでした。
「ロン?どこ?」
間髪入れずに返事が返ってきます。
「こっちだよ、こっち!」
声の方向に歩いていく、ミィ。
「あ!」
ロンが思い出した様に、声を上げます。
「え?なに?」
慌ててミィは聞き返します。ロンの身に何かあったのでしょうか。心配になって駆け出します。
「ミィ、気を付けてね。」
そう聞こえた瞬間、ミィは自分の足が引っ張られるのを感じました。
一瞬のあと、ミィの前に現れたのはロンの顔でした。
心配そうにこちらを窺っています。
「ロ・・・ン?」
「ああ、ミィ大丈夫かい?大事はないかい?」
ロンは首をぐるぐる回してミィの全身を看ます。
「俺っちがもう少し早く忠告していればよかったね。」
心底申し訳なさそうな顔をしています。
ミィは周りを見渡しました。背後は大きな土の壁があります。
上から見たらちょっとした崖に見えるのでしょう。
あそこから落ちたのだ、ミィはそう理解しました。
足が引っ張られたんじゃなくて、踏むべき地面が無くなっていたのだと。
そして、ショックで軽く気を失っていたのだと理解しました。
「もう、ロンったら、普段は要らないことばかりベラベラ喋るのに、肝心なことは忘れちゃうのね!」
からかい半分でミィは言ってやりました。
「ああ、ゴメン。本当にごめんよ、ミィ。でも、それだけ軽口が叩けるなら心配要らないね。」
ロンの困り顔はなくなり、ほっとした顔になっていました。
「それより、ミィ。ごらんよ、立って見てごらんよ。」
調子を取り戻したロンは、後ろに振り返ると、右手でくいくいっと手招きします。
ミィが立ち上がり、ロンの示す方向を向きます。
そこには、町がありました。正確には町であったものですが。
かつては家であったものが、なにかの施設であったものが、モニュメントのようなものであったものが。
ほとんど形を残していませんでしたが、その構造が町であったことを物語っています。
グィユルとは違う、終わってしまった町。
グィユルはお終いの天使に滅ぼされたようでしたが、
この町は気候と時によって滅んでしまったようです。
砂に埋もれ、風に削られ、誰も住まなくなった町、見捨てられた町です。
どちらが不幸なのかしら、ミィはそんなことを考えました。
でも、どちらにしても不幸は不幸ね、ミィはとても悲しくなりました。
「こんな風景ばかりしか、この世界には残っていないのかしら。」
思わず口をついて出た言葉に、更にミィは悲しくなったのです。