数ヶ月前の
話なんだけど
80歳前後の女性の
患者さんを受け持った

その患者さんAさんは
発熱・体調不良で入院、
検査で癌が発見された。
そして
Aさん、ご家族ともに
医師から病状についての
説明がされ
癌の告知もされた。
私が受け持ったのは
Aさんが医師から説明を聞いた
次の日だった。
癌の告知は
とてつもない
ショックを受ける。
がんの告知後の
精神状態は不安定になる。
また医師の話を
どこまで
理解されているかも
確認する必要がある。
朝訪室し検温をすると
Aさんはまだ
熱が引かず
辛そうであった。
お話ができる
状態じゃなかった。
解熱剤を使用した。
そして
午後
訪室し様子をお伺いした。
私
「体調どうですか?」
Aさん
「楽になりました。ありがとね。」
とAさんはすっきりとした
穏やかな笑顔をみせられた。
熱は下がっており
気分も良さそうだった。
ただ体調とは別に
気分は落ち込んでいることを
想像していた私は
Aさんの穏やかな笑顔に
違和感を少し感じた。
「熱も続いていてお辛いですよね。」
と声をかけると
Aさんは穏やかな表情のまま
「そうね。熱はこのまま下がってほしいね。」
と言われた。
話が続く中で
私は聞いてみた。
「Aさん、昨日先生からの
お話どのように聞かれましたか?」
私も落ち着いた表情で聞いた。
Aさんは
穏やかな表情のまま
答えられた。
「癌があるってね。治療法はこれから
体調を見ながら決めていくって
話だったね。でもね
私もういつ死んでもいいの

もうやりたいことも
全部やったし
もうなんにも悔いもない。」
そう言って
笑顔を見せられた。
Aさんの表情や言葉は
強く、そして穏やかであった。
看護師に
強がり虚栄心を見せる患者さん
本心ではない言葉を言う患者さん
投げやりになる患者さん
悲しさやショックを表出
される患者さん
塞ぎ込まれる患者さん
考えることを辞めようとする患者さん
いろんな患者さんがいる。
受容の段階は本当に
人によってちがう。
ただやっぱり
Aさんのような反応をされる方は
すごく珍しい。
"否認"でもなく
"怒り"でもなく
ただ冷静。
ショックを受けて
混乱していたり
不安をもたれたり
するものだと
思っていた私は
衝撃を受けた。
もしかしたら
Aさんは
入院される前から
すでに
いろんなことを考え
向き合われてこられた
のかなと思った。
"もういつ死んでもいい
"

すごく爽やかに
その言葉を言う。
"やり切った。もう満足"
そんな人生があるんだ
と思った。
私はAさんに興味を持ち
もっとお話を
したかったけど
その後すぐ
転棟となってしまい
お話ができる機会が
それ以降
なかった。
どんな生き方を
されてきたんだろう。
Aさんにまた会って
お話を聞きたいな
