もうこれはだめだ。
一生この人の顔を見たくないと思った。
その後主治医へ現状を相談し
メンタル的なフォローが必要との判断で
Hさんは後日
精神科の受診となった。
偶然にも精神科の受診の日
再度Hさんを受け持つことになった。
今思うと
私はこの日
看護師として大きく変わったんだと思う。
精神科の先生の依頼で
看護師の私も受診に同行し
日常の様子を説明したりし
一緒に話を聞いた。
先生の話によると
Hさんの行動にはすべて意味があり
ナースコールを頻回に呼ぶのも
意味がある。
具体的に何かしてほしいことの
場合もあるが、
ご自身では伝えることができない
苦痛があり
辛くてなんとかしてほしくて
看護師さんを呼んでいる
場合もある。
でも来てくれると
安心して
伝えることを忘れてしまう。
また自分でも上手く言葉に
することが出来ないから
看護師さんには伝わらない。
その自分と他者の間の
ギャップが大きくなってしまう。
Hさん自身も辛い。
このようなことを言っていた。
看護師5年目の私は
患者さん側からの見える
世界を知った。
私は
Hさんが辛くてしょうがない
ことに気がつかなかった。
それで看護師を呼んでいたと
思いもしなかった。
助けてほしかったことに
気づかなかった。
ナースコールしていたのに。
自分の未熟さを知った。
患者さんを理解する
それは
こういうことなのかと
やっとわかった。
Hさんはその後間もなく
在宅での療養の準備が整い
退院されていった。
もうそれからお顔を見ていない。
でもたまに思い出す。
今ならHさんの辛さに
気づく私になっているのかな、と。