朝9時。ビルセキュリティを解除して室内に入ると、
小さなデスクが一つ。
古いHPのプリンタが一つ。
ファクスが一つ。
電話が一つ。
小さな本棚が一つ。
その上にポットに入ったガジュマルが一つ。
その隣に幸せの木のポットも一つ。
ほぼ真四角の部屋の窓は北東向きらしく、薄暗い。
私は囚われの身だ。
ここが仕事場だ。
イスは何故か4つある。
その一つにカバンをおいて、その向こう隣のイスに座る。
せめてコーヒーでも買ってくればよかったかな。
テレビもないしラジオも無い。パソコンも無い。
広さは10坪くらいか。壁紙は新しく綺麗だ。
必ずここから脱出する。
1日だってここで仕事なんてしたくない。
とは思っても与えられている仕事はない。
赤字を出せば6ヶ月で終わる。それも脱出かもしれない。
そうなれば脱出というより無職だ。
まぁ悪くないかも知れない。
でもそれでは復讐できない。
もちろん俺をここに押し込んだ奴に。そしてそれを黙認した奴に。
俺が役に立たないからじゃない。奴らの違法取引を知っているからだ。その証拠も保持している。
公にするつもりは無い。してしまえば奴らに対する有利が失われるからだ。
これを抱えたまま奴らを小さなオリに閉じ込めてやる。
それが狙いだ。
悪賢い奴が怖いわけじゃない。人一倍柔和な奴が怖いわけでもない。
隙を見せない奴でもない。
本当に怖いのは徹底している奴だ。
徹底する。俺はここから脱出し奴らに復讐することを。