「はい、どうぞ!」
ぽん、と青いラッピングのお菓子を手渡されて、ルイは困惑する。
にこにこと微笑んでいるのは、ミーティアス王国第一王女・マーガレット。彼女は楽しそうに笑っていて、しかしその笑顔が何を意味するのか察することができず、ルイはとりあえず笑みを作る。
「ありがとうございます、王女殿下。……ええと、これは……」
「ホワイトデーよ」
「ホワイトデー?」
「ほら、バレンタインにお花をくれたでしょう? そのお返し」
バレンタイン……。
バレンタインといえば、慌ただしかったのを覚えている。ジェイドから「バレンタイン」の存在を教えてもらって、慌ててプレゼントを準備したのだ。ルイはそれはそれは多くの人に世話になっているので、人数分を用意するのに苦労した。そのなかに、マーガレットも含まれている。
ちなみに、ルイはマーガレットからチョコレートをもらっている。つまるところ、プレゼント交換をした。
「ホワイトデーは、バレンタインのお返しをする日なのですか?」
「そう! まあ、バレンタインにも渡したけれど、もう一回渡してもいいかなって! あのとき、ルイも私にくれたものね!」
「……なるほど」
そういうものか。
バレンタインには花を渡したが、今度は何をあげればよいだろう。
うーん、とルイが悩んでいると、マーガレットがくすくすと笑う。
「ゆっくり考えて。楽しみにしているわ」
ルイは参ってしまって、苦笑い。るんるんとどこかへ言ってしまった彼女の背を見送った。
*
ばん! とジェイドが勢いよく扉を開ける。
ここは、ルイの作業場であるアトリエだ。この部屋にルイがいるだろうと、ジェイドはほくほくしてやってきたのである。
「せーんせ! ホワイトデーだよ! プレゼントもってき……、あれ?」
ジェイドが見つけたのは、机に突っ伏しているルイ。その横には、大量に積まれた宝石がある。
「先生? これ、なに?」
「魔石」
「先生の魔力の?」
「うん」
魔石――魔力を固めて作る石のことだ。作ろうと思えば誰でも作れるが、魔力の量や質によってその出来は異なる。ここに積まれている石は、非常に輝度の高い紫の石だ。宝石にも等しい価値の持つ、超スーパーウルトラハイクオリティの魔石だろう。
「魔石でネックレス作ってるんだ~。ホワイトデー?」
「うん」
「それで、疲れちゃったんだ?」
「うん」
「だめだよ、こういうのは計画的にやらないと」
「うん」
魔石は魔術で作れるが、それをアクセサリーにするのは手作業である。この量を作るとなると、とんでもなく時間がかかるだろう。ぐったりとしたルイを見て、ジェイドが苦笑いをする。
「手伝おうか?」
「いいの?」
「あとで、俺にもプレゼントをくれるなら」
「これのこと? うん、あげるよ」
「ほかにも、もうひとつ」
「? 欲しいのがあるの?」
「終わったら教えるね。さ、作業にとりかかろうか!」
ルイはぼーっとした目でジェイドを見つめる。
何が欲しいんだろう……。
まあ、そんなことは今はどうでもいいや、とにかく手伝ってほしい……。
ルイは特に深く考えることなく、ずるずると腕を伸ばして再び作業を始めるのだった。
*
なんとか全員にプレゼントを渡し終えて、ようやく夜を迎える。夕食を食べて、仮眠をとって、ルイとジェイドは寝室でまったりとしていた。
「なんとかなったねー。みんな嬉しいんじゃない? 宮廷魔術師ルイの魔石を使ったネックレス! ご利益がありそう!」
「投げつければ小さなドラゴン一体くらいなら退治できるよ」
「いや、威力やば」
けらけらと笑って、ジェイドは立ち上がる。手に取ったのは、青いリボン。ジェイドがルイに渡したプレゼントに着いていたものだ。
「そうそう、先生。手伝ったんだから、プレゼントくれるよね?」
「そういえば、ほしいものがあるって……」
ジェイドは振り返り、にっと笑う。
ルイに跨がると、するりとその首にリボンを巻いた。優しく、きゅ、とちょう結びにする。
「先生が欲しいな」
「……え」
ルイが返事をする前に、ジェイドはルイの唇を奪う。
「んっ……」
ふ、と唇が離れる。
「ねえ、先生。俺が一番欲しいものわかるでしょ? 俺は、先生が欲しいよ」
どき、とルイの胸が高鳴る。
まっすぐに見つめてくる彼。「欲しい」がどういう意味なのか、流石のルイもわかっている。
ルイは首のリボンに手を添えて、揺れる瞳でジェイドを見上げた。
「うん……あげる、ジェイド」
ホワイトデーとか、お礼とか、色んな名前はあるけれど。喜んでくれるなら、なんだってあげたい。
ジェイドはルイの言葉を聞いて、は、と瞠目した。そして、再びちゅっとキスをする。
「ふふ、とびきり甘いのが欲しいな。ねえ、先生?」
「うん……」
いつもは恥ずかしくてためらってしまうようなこと、今日はがんばってみようか。
声を……我慢しないようにするとか。
考えるだけで恥ずかしくなって、ドキドキする。
「先生」
「あ、」
ジェイドがルイのガウンをほどく。リボンはそのまま。ちゅ、ちゅ、と首筋、鎖骨、胸……身体にキスをされて、ルイはもがく。
「あぁっ……!」
「ふふ、可愛い。先生。もっと声を聞かせて」
「んんっ……」
臍にキスをされて、ルイは腰をくねらせた。
恥ずかしい、恥ずかしい。その思いを押し込めて、ルイは腰を浮かせて腹をジェイドの顔に押し付ける。そして、彼の髪をかき混ぜるようにして頭を抱いた。
「あぁっ、あ……もっと、ジェイド……」
「ふふ、先生、エロい。最高」
つう、とジェイドが舌を這わせる。
彼の熱い舌が身体をなぞるたび、ぞくぞくと甘い電流が下腹部に響く。いつもはビクつく身体を抑えていたが、本当はこうしてジェイドにすべてを許したかった。恥ずかしくてどうにかなってしまいそう。ホワイトデーという言葉で誤魔化して、いつもとは違う自分になってゆく。
「先生。脚……開いて」
「はい……」
ジェイドの命令に、ルイは素直に従う。
自らの膝を抱え、大きく脚を開いた。秘部が全て、彼に丸見えになる。ヒクヒクしているそこも、ぜんぶ、ぜんぶ。
「ねえ、なか、見せてよ」
「……ッ、うん……見て……」
かあっと顔が赤くなる。それでも彼の言葉に従った。ルイは自らのいりぐちに指を添えて、ぐっと左右に引っ張る。
「先生、エロすぎ。このまま舐めるから、ちゃんと声を出すんだよ。指、離しちゃだめだからね?」
「はいっ……、あっ、ひゃっ……! あぁっ……!」
ゾクゾクゾク、と真っ白な痺れが脳天を突き抜ける。
舌が……なかに入ってきた。
ルイはのけぞって甘い声をあげる。そして、恥ずかしさを押し殺して、腰を揺らし、彼という雄を誘った。
「あっ、ぁあっ、あんっ、あ、あっ、だめっ、だめっ……!」
「だめ、じゃないよね?」
「……ッ、も、っと……もっと、舐めて……!」
「どこをどう舐めてほしいの?」
「なか、を……ぐりぐりしてください……」
「ふふ、いつから先生こんなにいやらしい子になったの?」
「あ――あぁっ! だめ、……も、っと、もっとして……! あぁあっ、そこ、そこ、もっと……!」
ぐちゅぐちゅ、とジェイドがわざと音を立てて舌を動かす。あまりの快感に、頭がおかしくなってしまいそうだ。
「あぁーッ……!」
ルイの堅くなったものから、ぶぴゅぶぴゅと白濁が飛び散る。それはルイの胸にかかり、どろりと胸を白く照らした。
「はは、先生……すご……」
ジェイドはぐいっとルイの尻を掴んで笑う。
ルイの身体は特別だ。ジェイドに触れられて感じると、花の蜜のような愛液が溢れる。
穴からとぷとぷと大量の愛液があふれ、つうーっと滴っている様子はあまりにもいやらしかった。ジェイドは蜜を手に取り、指でとろりと銀の糸を作ってルイに見せつける。
「見て、先生。先生の身体、こんなに感じてるよ」
「や……恥ずかしい……ゆるして……」
「ううん、もっとだよ先生。もっと、先生のいやらしいところ見せてよ」
ジェイドはつぷ、となかに指をいれる。もう何度も何度もジェイドを受け入れているそこは、抵抗なく指を飲み込んだ。柔らかくもきゅうきゅうと吸い付くソコのいやらしさに、ジェイドはごくりと唾を飲む。
「あ……」
ぐ、と指の内側に力を入れる。ふく、と膨らんでいるそこに、圧力をかけた。
「あぁ……」
ぐ、ぐ、ぐ、ぐ、と一定のリズムで圧をかけてゆく。
「あぁ、ぁあぁあ……」
少しずつスピードを早めて。ぎゅーっと締め付けが強くなるが、それでも構わない。ぐっと圧をかけたままグチュグチュとなかを掻き回した。
「あぁ――……」
プシャ! とルイは潮を吹く。ジェイドがなかの刺激を続ければ、ぷしゅ、ぷしゅ、と連続して潮を吹き続けたら。
「あぁあぁ――ッ!」
ルイの身体は自らの潮でびしょびしょに濡れてゆく。ジェイドはその姿を見下ろし、恍惚と微笑んだ。その表情にルイはゾクゾクしてしまい、また、昇りつめてしまう。
「イクッ、イク――……」
「はー……先生……最高……」
潮を最後まで絞り出し、ようやくルイは開放された。びっしょりと濡れた身体が、くたりと横たわる。
ジェイドがルイの身体を濡らす潮を、舐め取ってゆく。ルイはぴく、ぴく、と身体を震わせながら甘い声をあげた。
「先生、いれていい?」
「うん、いれて……」
「ふふ、可愛いね、先生」
ジェイドはルイに覆い被さって、キスをした。舌を絡めて、身体をまぐわせる。
舌を放して、ジェイドははあ、と熱い息を吐く。ルイはうっとりとジェイドの顔を見つめて、脚を開いた。ジェイドがふっと笑って、熱をそのいりぐちに押し当てる。
「あ……あぁ……」
ずん、とジェイドが根元までいれると、ルイがビクビクンッとのけぞった。ルイのものから、どぷっと液体が溢れ出る。
「あ、あ、……」
「はは、先生……もしかして、イキっぱなし?」
ルイのなかはギチギチとジェイドの熱を締め付け、そしてピクピクと小刻みに痙攣していた。可愛い、ジェイドはルイに愛おしさを感じる。ぐ、と奥に押し込むようにしてルイに覆い被さると、ルイの唇を覆うようにキスをした。
「んっ……」
ルイは全身を包み込む快楽に、頭が真っ白になっていた。なんとかジェイドの背に腕を回して、彼から注ぎ込まれる甘い熱に身を任せる。
もう、どこが感じているのかもわからない。全身が気持ち良くておかしくなりそう。
ルイがぼんやりとする意識の中でジェイドのキスに酔っていると、ずん、と奥を突かれるのを感じた。
――だめ、だめ、キスしたまま、だめ……イク、イク――……!
ビクビクッとなかが震える。
何度イッたのかもわからない。もうずっとイッている。
ずん、ずん、ずん、ずん、と何度も奥を突かれて、ルイは飛びそうになった。
ぷは、とジェイドが唇を解放して、だん、とベッドに手をつく。「先生、頑張ってね」そう言って、ジェイドは激しく腰を振り始めた。
「あっ! あ、あ、あ、あ、」
パンッ、パンッ、と肉と肉がぶつかる音が響く。ルイはされるがまま、ジェイドに身体を揺さぶられていた。突かれたびにぷぴゅ、と僅かな潮が飛び出て、自分の身体が壊れてしまったのかと錯覚する。
壊れてみたい。彼でめちゃくちゃになってみたい。
自分の身体が言うことをきかないことすら興奮して、ルイは激しく乱れた。
「あっ、あぁっ、ジェイドッ、あぁっ!」
「先生ッ……! はぁ、は、……すごい、先生……」
「もっと、もっと、奥、ついてっ……! もっと……!」
「エッロ……はは、先生、今日すごいねっ……!」
激しい音を立てて、2人は交わった。ぽたた、とジェイドの汗がルイの身体に飛び散る。その僅かな刺激さえ拾って、ルイはおかしくなるくらいに感じていた。
ジェイドがルイの腰をガッシリと掴んで、根元まで押し込む。
あ……
ルイの瞳から涙がぽろりと落ちる。感じて、感じて、涙腺も壊れてしまった。ゆらぐ景色、ジェイドの余裕のない表情が映り、胸が満たされる。
「なか……ぜんぶ、注いで……ジェイド」
は、とジェイドの息遣いが聞こえる。
ジェイドはどぷどぷっ、とすべてをルイのなかに放った。
ルイの甘い香りに誘われると、なぜだか精液の量が増大する。どんな魔力の作用なのか。
全部注げば、ルイのなかはたっぷりとジェイドの精液で満たされた。
ルイは恍惚とみずからの腹を撫でて、「あぁ……」とため息を漏らす。
「ジェイド……」
「はぁ、はぁ……先生……さいっこうのホワイトデーだね」
「ん……」
ホワイトデーってなんだっけ。
ルイは全部頭の中から吹っ飛んで、ただ、ジェイドのことでいっぱいになって。
ゆらり、意識が薄れていった。
*
ぼーっとする。
目を覚ましたルイは、天上を見上げた。
ひどく身体が重い。
何がどうなったんだっけ。
記憶を辿りながら何気なく横を向くと。
「うわっ!」
じーっと自分を見つめるジェイドがいた。
「ありゃ、おはよう先生」
「おはよう……」
まだ日は登っておらず、部屋は夜で満たされている。
あ……ジェイドとセックスをして、それで……
ようやく朧げに思い出して、ルイはほわっと顔を赤くした。
「ハッピーホワイトデー。先生」
「……ハッピーホワイトデー……」
「そういえば、先生がほしいもの聞いていなかったね。何がほしい?」
「……」
ホワイトデー、と言う言葉がおまけのように感じた。
ルイは苦笑して、ジェイドの頬に手を添える。
「もうもらった」
「……ふふ、そっか」
ジェイドが嬉しそうに笑う。
言葉もなく、キスをした。ジェイドがルイに覆い被さって、キスを深めてゆく。
「愛してるよ、先生」
「……俺もだよ、ジェイド」
2人は笑って、そのまま夜へ溶けていった。
