602号室 コリアンおばちゃん
(2007年入居 推定当時55)
学生時代、ある商業施設の中の店でバイトをしていた。
割と有名な観光スポットだったので、海外からの観光客もかなり多かった。
欧米の方が目立ってはいたものの、実際はおそらく韓国・中国人の方が圧倒的に多かったと思う。
その時の話だ。
あたしは語学が堪能でないので、外国の方に話しかけられるのが苦手だった。
英語ならまだ努力のしようもあるのだが、(受付を指して「インフォメーション!」と叫ぶ。)
それ以外は完全にお手上げだ。
特に韓国のおばちゃん。
恐ろしいことに、1%のためらいもなく自国語で話しかけてくる。
何の自信?
あちらのガイドブックには
「日本のショップのサービスは極めて質が高く、ことサービス業に従事する者はコンビニ店員から屋台のおやじまでおおむね8ヶ国語に堪能である。」
とでも書いてあるのか。
はたまた
「片言の英語でも使おうもんなら、政治犯もしくはテロリストとして国際指名手配を受けかねない。」
と硬く信じているのか。
詳細は不明である。
そんな感じで、その日もひとりのコリアンおばちゃんがつかつかと近づいてきた。
顔だけでは日本人と区別がつかないが、韓国のおばちゃんたちはファッションに特徴がある。
彼女らは、緑×オレンジとか青×ピンクとかの非常にサイケデリックな色彩の組み合わせを好んで着用するのだ。
そしてなぜかサザエさんパーマが大流行している。
そのおばちゃんももちろんサザエさんパーマ。
服は黄色のパンツに赤いポロシャツを着ていた。
プーさんか。
そして、例によってものすごい勢いで韓国語で話しかけてきた。
「日光、鯖がドル安アーエー!ジョン、池で4倍増殖ニダ!」
…わからん。
皆目わからん。
がんばってネット日韓辞典とかをひっぱったりしたが、結局おばちゃんは喚きながら行ってしまった。
頑張ったのに。
それから2週間ほどしたある日のこと。
その日もあたしはバイトだった。
仕事の合間に従業員トイレに行くと清掃中。
「ごめんなさい、こっち使ってもいいですか?」
屈み込んで奥を掃除している清掃員さんに声をかけた時だった。
「はい、どうぞどうぞ~。お疲れさまです~。」
と振り返った清掃のおばちゃん。
この間のコリアンおばちゃんやんけーーー!!!!
しかも名札「高橋正子」だし!
衝撃のあまりジャックはPTSDに陥り、四つん這いでぐるぐる回りながら
「カウンセラー呼んで~」
と叫んでいた。
後日、必死の情報収集でわかったのは、正子が純日本人だということと勤続18年のベテラン清掃員だということだけだった。
何がしたかったんだ、正子。
それからも時々モップを持ってイソイソ歩く姿を目にすることはあった。
熱烈な韓流ファンなのか。
実は劇団ひとりだったのか。
相変わらず詳細は不明である。
↓正子が脳裏に浮かんだ気がしたら。