2番目の恋人 その4
濱さんは彼女であるあたしの友人へ、
あたしは吉野へ、ぞれぞれ会いに行った。
2人とも、もう覚悟は決まっていた。
そんな覚悟を知ってか、吉野は、
黙ってうつむいてるあたしの頭を
くしゃっとなでながら、
「いいよ、分かってるよ、頑張れよ」
と、優しい声で言った。
濱さんと会ってるあたしの友人も、何も言わず、
濱さんのたどたどしい説明を、
黙って聞いてたらしい。
でもあたしは、申し訳なくて、
しばらく友人とは顔を合わせられないと思った。
公認になった事で、あたし達は以前より
もっと行動範囲が広がった。
どこに行くにも2人だった。
周りがうらやむほど、いつも仲が良かった。
あたしの母にも会いに来た。
母は、
「礼儀正しい良い子だねぇ。
前の湯川君とは全然違うタイプだねぇ。」
と、気に入ってるようだった。
4月、濱さんは高校を卒業して社会人になり、
あたしは高校3年生になった。
濱さんは社会人になってすぐに車を買った。
「この車があれば、お前を乗せてどこでも行けるよ。
助手席はお前の特等席だからな、誰も乗せないよ」
と、うれしそうに言った。
その言葉通り、濱さんは毎日仕事が終わると、
変わらずあたしを迎えに来てくれて、
助手席にあたしを乗せてドライブしたり、
夜は河川敷に車を停めては、
暗闇の中で毎日のように体を求め合ったり、
2人で共有する時間はどんどん増えていった。
夏が過ぎ、クリスマスが過ぎて、元旦を迎える夜、
濱さんは日の出を観に行こうと、誘ってきた。
朝早いのが苦手なあたしは、まだ眠い目をこすりながら、
河川敷の上に停めた車の中で、
濱さんと共に日の出を待った。
1時間くらい待っただろうか、
大きく、そしてまぶしいくらいに輝いた太陽が、
向こう側の土手から少し顔を出したかと思ったら、
河川敷の暗闇を、どんどんと明るく照らし始めた。
濱さんは日の出に向かって手を合わせると、
黙って目をつむった。
あたしはその様子がおかしくて笑ってしまったら、
濱さんは手を合わせたまま横目でチラッと
あたしを見て、また黙って目をつむった。
しばらくして濱さんは満足そうに手を下ろし、
あたしに言った。
「実はさ、元旦の日の出に向かって願い事するとさ、
叶うんだって親父が言ったんだ。
だから今日はどうしても、お前と来たかったんだよ」
そう言い終ると突然あたしを抱き寄せ、
強く抱きしめて言った。
「俺ら、まだ若いのは分かってる。
でも俺はきっとこの先もお前が好きだ。
もう1年だけ待ってくれ。そうしたら、俺ら、結婚しよう」
あたしは驚いたけど、とてもうれしかった。
あたしも濱さんとずっと一緒にいたいと思っていた。
でも、言葉にしてしまうのは、嫌だった。
それを言葉ににしたとたん、
夢が消えてなくなってしまいそうだったからだ。
しばらくボーっとしてたら濱さんが言った。
「まだ返事聞いてないよ」
あたしはその言葉に促されるように、
「うん」
とうなずいた。
河川敷の辺り一面は、
完全に昇った太陽の光でキラキラと包まれていた。
しかしその光は、冬の寒さまでは溶かしきれなかった。
強く抱きしめ合うあたし達の吐く息は、まだ白かった。
