私はどちらかというとミステリーの方が好きで、人が不可解な状態で死んだり、様々な伏線が張り巡らされていて、最後に劇的に解決!という小説をよく読む。
なんならグロくて、人の闇をつくような方が先が気になってすぐ読み切ってしまう。
「暗いところで待ち合わせ」は、幻冬舎文庫25周年大ベストセラーのコーナーで平積みにされていた本である。
大ベストセラーとなれば新聞の広告だったり本屋さんだったりで何かしらできっとお目にかかっているはずだ。
表紙もなんとなく見たことがあった。
男とも女とも言えない目が真っ黒な人間が鼻を触っている絵が表紙だ。
私はあきらかに勘違いしていた。
きっととてつもなく怖いミステリーだ。
大ベストセラーだからおもしろいだろう、とりあえず買おう、と背表紙のあらすじは見ずに購入した。
いわゆるパケ買いだった。
簡単なあらすじはこうだ。
『目の見えない女性の家に人殺しの男がひっそりと逃げ込み潜む』
こう書くとかなり怖くないか?
目が見えない彼女にとって長年暮らした家が唯一安心できる場所に見知らぬ男がいるのだ。
知らないところで誰かに自分の私生活を見られているという恐怖。
しかし読み進めていく内にこれはヒューマンドラマかもしれないと思い始めた。
まず人殺しをしたかもしれない男。
彼には善良な心があり、なんなら気が弱そうだし、人付き合いが苦手な共感しやすい人物だ。
人間らしさのある弱みもある。
その弱みが彼の『犯罪行為』に発展しまったのだと思う。
家主である彼女にバレないようにしているのも、彼なりの気遣いだとわかる。
彼を応援したくなっている自分がいた。
そして目が見えない彼女。
彼女は最初から目が見えないわけではなく、事故によって視力を失ってしまう。
目が見えなくなってしまっても、絶望的にはなっていない。
目が見えないことも受け入れて、家の家具の一部のように毎日動かずジッと死を待っているようだ。
彼女も彼と同じく人間関係が得意ではなく、似たような過去を持っていることがわかる。
そして、だんだんと彼女は家に潜む彼に気付き始める。
あることをきっかけに自分の家に違う誰かが潜むことを確信し、そこからなんとも言えない2人の交流が始まるのだが、これがなんとも焦ったい。
読んでいて、「もっと仲良くなれるのに!!」とか「このまま2人すごくいい感じになるのでは??!」というミステリーとは違うワクワク感、ドキドキ感がここで生まれた。
根本的に似ていて、心優しい2人。
まさにヒューマンドラマのラブストーリーだと思って、ニヤニヤしてしまった。
結果的にお互い助け合う形になり、事件は解決を迎え、彼も家に潜むことはなくなる。
結果的に読み終えて、ホラーミステリーではなかったな、と感じてまたニヤニヤしてしまった。
設定自体、怖いのかもしれないが、そこには人間の優しさ、弱さが溢れている。
人は1人では生きていけない。
たとえ孤独を好んでいても、人と話すのが得意ではなくてもいずれ誰かの助けが必要になる。
そんな物語だと思った。
心があたたまる作品、乙一さん、ありがとうございました。