昨日また、着替えを持って父のところへ行ってきた。

 

前回、職員さんに

「最近、いろんな活動にお誘いしても参加されないので、

 娘さんから散歩にでも誘ってみていただけませんか?」

と提案されていた。

 

で、昨日は天気も良かったし、

施設の周りをぐるっと散歩しようかと思っていたが、

建物の外に出る時は、たとえ散歩でも外出届を書かないといけないらしく、

面倒くさがりの私はそこで断念(笑)

 

すると職員さんが、屋上なら外出届も要らないと教えてくれ、

早速、父を連れて屋上へ行くことに。

 

父のいるフロアは認知症専門で、

エレベーターの前に透明のドアがある。

一見したところ、自動ドアに見えるが、

実は手動ドア。

 

手で開けると、

ビビビビビビ・・・と警報音のような大きな音が鳴る。

 

もし、徘徊してしまう利用者さんが

一人で出て行ってしまおうとしても

その音で職員さんに知らせることができるから。

 

昨日、私に続いて父がドアの外に行く時、

一瞬、戸惑うような間があった。

まるで、

「そっち側へ行ってもいいの?」

とでもいうような感じの遠慮がちな表情の父。

 

多分、自分でも

「そっち側へ行ってはいけない」

という自覚はあるのかもしれない。

 

屋上を少しブラブラした後、

談話室のテレビで相撲を見てから、

またビビビビビビ・・・という、けたたましい警報音を鳴らして

認知症フロアへ戻った。

 

そして、私が帰るとき、

父がドアの前まで見送りに来てくれた。

音がうるさいので、

早く閉めないといけないから

父には悪いけど、サッとドアを閉めてしまった。

 

父は

「自分も一緒に帰りたい」

ときっと思っているはずだけど、

虚ろな目でドアの向こう側を見ていた。

 

「越えてはいけない境界線」を

父がどんな気持ちで見ているのか、

それを考えると胸がつまる。

 

私が透明なドア越しに

「じゃあね、また来るね」

と言い、

手を振ると、

顔を上げて私を見て、

力ない表情で手を振ってくれた。

 

なんだか、今更ながらだけど、

「どこのご老人?」

と改めて思ってしまうような、

ものすごく老けてしまった父が

あちら側へ置き去りにされる姿を見て、

涙がこみあげてきて、

急いでエレベーターに乗り込んだ。