高校2年を迎えた頃だった。


学校生活に影が差した。



もともと、私は緊張しやすいものの、本番になると、肝が据わって、緊張が無くなっていくタイプだった。


だから、緊張には少し免疫があったつもりだった。


だけど、新しいクラスが始まって、


全く今までのタイプとは違うクラスメイトの中に入ってしまった。

 

30人近いメイト全員が、影を持つ生徒だった。


人の陰口を言い、平気で晒す。


そういうクラス。


いや、学校だった。


もともと、その学校は知性に欠ける偏差値で、授業も寝ている生徒が多かった。


だけど、そのクラスはその中でも、並みの高校受験に失敗した「落ちた」生徒の受け皿のようなクラスの集まりで、1年の頃から、その教室だけは、友達と行く度に柄が悪かった。


教室に入った瞬間からわかる、異様な視線。


蔑むような、バカにするような、とにかく絡めとってやろうとでもいう様な、


捕食者のような空気だった。
 

 

でも、まともな学習のクラスに行くには、そこしか通り道が無かった。


大学を目指すには。


だから、希望した、そのクラス。


けれど、いざ入ると、視線が怖い。


仲の良かった友達も、それに気づいているのか、気づいていないのか。


こちらよりも新しい友達にばかり話をしかける。


だから、私は黙って。新しいクラスで、極力目立たないように。


失敗しないように、生活していった。

 

 

でも、現実はそうも上手くいかないもので。


ある時、私が最も警戒する時間がやって来た。


順番にやってくる音読の時間だ。


座っている生徒の順番で、次々に教科書を読み上げる後ろの生徒と前の生徒たち。


私は緊張したが、この際、頑張るしかない。


と、思って。


順番を待った。


けれど。


―――この空気のクラスで、失敗したらどうなる?

―――考えてみたか?


そんな考えが、よぎりだした。
 

 

振り払っても、振り払っても、


湧いてくる。


どうしよう。


どうしよう。


そんなの嫌だ。


私もイジメられるのか?


嫌だ。


どうしよう。



そう。
このクラスには既にイジメられている生徒が居たのだ。


私の苗字とよく似た、生徒。


前歯に特徴がある、外見は、まぁ中の中ぐらいの女の子だ。
 

 

私がこういうと、とっても上から目線になってしまって


申し訳ないんだけれども、可愛いかと言われると、普通な子。


それが、どうしてか私が1年の頃からいじめの標的にされていようだった。


性格は、普通、いい子だと思う。





なぜ、苛められているのか私にはよく分からなかったけれど、中学の頃も、私はイジメられる子と何かと縁があって、


中学の頃は、4つあるクラスの、学年中からイジメられていた子と、仲が良かった。


見た目は、上の中くらい。


はっきり言って、可愛かった。


その子も、何故イジメられているのかは分からない。
 

 

ただ、ロッカーにチョークは粉だらけにぶち込まれているわ、


画鋲が刺されているわ、持ち物は隠されるわ、あからさまに暴言を吐かれていることもあって、


気の毒だった。


でも、私は加害者側にいた。


イジメられるのが嫌だったから。


ただ、そんな理由。


けれど、ある時期になって、「これでいいのだろうか」と思うようになった。


「私はこの子が嫌いなわけじゃない。むしろ、話しみたいのだ」と。


だから、思い切って、声をかけた。


その子は、私がしてきたことも何も言わず、受け入れてくれた。


とっても優しい子だった。
 

 

でも、私が一番彼女に惹かれた理由。


それは友人になってもらってから分かった。


「バッカみたい」


彼女はそう言って、イジメの結果を見つめていたのだ。


ロッカーにゴミが放り込まれていても、持ち物を汚されても。


「アイツらガキかよ…」


と、笑っていたのだ。


強いなぁ、この子。


私はますますその子が好きになった。


でも、やはり、私が彼女の傍にいるようになったのは、イジメの加害者たちには


はっきりと映っていた。