ロシアに行って驚いたことは、習いたての子供から音楽院生（大学生）まで、とにかく人前で演奏する機会が頻繁に与えられるということです。

モスクワ音楽院の場合、クラスコンサート（門下ごとの発表会）は年２回、それがソロ・伴奏・室内楽それぞれであるので、これだけでもまず最低１年に６回はきちんとしたホールで・大勢のお客さんの前で演奏することになります。

これは音楽院の授業カリキュラムに組み込まれているものなので、もちろん出演費用はありません。

この他、規模の小さな演奏会（地域の美術館や図書館で開かれるものなど、アウトリーチ的なものが多いかも）への出演オファーもたくさんあります。

こういった学外の小さなものは参加費もなければ大抵ギャラもありませんが（ギャラがあるときもある）、試験やコンクール前に「場慣れ」するチャンスとして皆喜んで利用していて、大きな国際コンクールに出ているような有名学生がすごく小さなところで弾いているところに出くわすこともあります。

一方日本の音大では、在学中に出演必須の「学内演奏会」が１回、選抜制のソロ演奏会が２回程度、またまた選抜制の室内楽演奏会が年１回程度あるというのが大体平均ではないでしょうか。

選抜制演奏会に出るのは、もちろん難関です。ぶっちゃけ、どうしても毎回メンバーは似通ってきてしまいます。

門下ごとのコンサートも大抵は学外で自主的に行われていて、そうなると当然出演にあたって費用がかかります。（発表会開催は、ホール代を出演人数で割ることによって成り立っているため。）

大学の中の仕組みを変えることはそう簡単ではないのでしょうが、できれば毎年学内でクラスコンサートができるくらいになったらいいでしょうね…。

ここに書いたことは、私の出身（公立芸大）の例なので、私立などはまた違うのかもしれません。

ちなみに、モスクワ音楽院はレッスンも基本的に週２回で、それはそれはハードです。単純に日本の音大生の２倍はレッスンを受けて勉強しているわけですから、そりゃ力もつきます。

「音大に行っても将来の仕事がねぇ…」などとよく巷では言われますが、そもそも日本の音大の４年間の授業だけでは「音楽を仕事にするレベル」の知識や力をつけるのは難しい気がします。（ここでいう音楽の仕事＝ソロの演奏家だけではないことを念のため強調しておきます。）

だからみんなさらに大学院に行ったり留学したりするんですよね。

最近は、ものすごく頑張ってる学生は学外でもレッスンに通っている（他大の先生や著名なピアニストに継続的に師事する）パターンも多いような気がします。

本当は、一つの大学に入ったならその中で100%学び切れるのが理想な気がしますが…なかなか難しいですね。

ロシアで突然与えられる演奏の機会といえば、こんなものもありました。

約2年前にモスクワの聖チーホン正教人文大学にて、ある教授（兼神父）を偲ぶ会がありました。

私の日本人の友達がその教授の指導学生だった縁で、少し演奏をしてくれないかとお声がけいただき、喜んでお受けしました。

大学の中のカンファレンスホールで、メトネルの「おとぎ話」と「春」を演奏しました。

演奏機会の多いロシア