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近所の家で、白梅が咲く。
わたしは、他人の家で留守番をする。
ご主人様の言いつけは、庭の水やりと部屋の掃除かけ。
枯れた草木の鉢に、水をやる。
ドボドボ、ジョボジョボ。
土の中でまだ何かが生きてるかもしれぬ。
100はあるのか、鉢。
ジョウロは重たく、身体にこたえる。
ご主人様が帰ってくる音がする。
身を硬くする。
ゆうべ男に愚痴ってみた。
愚痴ってもよいか。うまく説明できないけれどよいか。
あらかじめ念を押す。
男はすこし機嫌がよいようで、ノープロブレムといった顔をする。
きょうね、仕事のメールが2通きて、内容を読んでも送った人の意図がわからず、ついついかっとしてしまう。どうすればいい? いつもならかっときたまま、返信MAILを書いちゃうけど、きょうはまずはスルーし考える時間を作っているところ。
回答は、以下のごとし。
おまえの前には変な筒がある。その筒を通して物事を見たり、聞いたりしていないか。
それをなくしてしまえ。なくしてからそのメールを読め。
男は言い終えると、やれやれと、しかし機嫌はそれほど悪くなく、布団部屋へ消えていった。
おまえのいうとおりだ、おかしいよ、変だよ、おまえは悪くない、いい女だよ、と言って欲しかったのかな? どうだろう?
筒。筒ね。
私の前にもやもやと、私のアタマの上にどっしりと、口元にうじゃうじゃっと。眉間にうごうごと。確かにある。
男が去ったあとも、わたしはそのままスパイダーソリティアをやり続ける。

