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窓ぎわのトットちゃん(黒柳徹子 著)

私がこの本に出会ったのは、いつだったのかなあ。
覚えていないのですが、母に勧めてもらって読んだ記憶があります。

今見ると、いわさきちひろさんの優しいイラストが本当に素敵ですね。
いわさきちひろさんは、約7000点の作品を遺されたそうです。
「窓ぎわのトットちゃん」が書かれたのは、いわさきちひろさんが亡くなられてからですので、作品用に描き下ろしたわけではなく、黒柳さんが内容に合わせて絵を選ばれたそうです。

描き下ろしではないにも関わらず、いわさきさんの絵は違和感なくとけこみ、この作品の魅力を更に深めています。いわさきさんの、子どもに対する優しいまなざしを感じます。

「窓ぎわのトットちゃん」は、全世界で翻訳され、読み継がれてきた作品なので、内容は多くの方がご存知だとは思いますが、黒柳徹子さんの自伝でもあります。

【内容】
活発すぎるため、小学校一年生にして、「退学」になってしまった、トットちゃんこと黒柳さんがお母様に連れられ、新しく通うことになるトモエ学園を訪ねるエピソードから始まります。

トットちゃんは、学校にチンドン屋を呼ぼうとしたのが最後の決め手となり、退学になってしまったのでした。
トットちゃんは、ジッとしていられない子でした。黒柳さんがADHDである、とよく耳にしますが、担任の先生が根をあげる行動をみると、なるほど、と思います。

トットちゃんのお母さんは、トモエ学園への入学を断られたらどうしよう、と不安でいっぱいでした。

けれど、トモエ学園の校長先生、小林先生に会って、その不安は解消されます。そして、小林先生の教育に対し、深く感心します。

たとえば、トモエ学園はお弁当制ですが、そのお弁当のおかずを、海のものと山のものにしてください、という言葉で表現されること。山のものは肉や野菜。海のものは、海苔などでも構いません。
こんなにかんたんに、必要なことを表現できる大人は、校長先生のほかには、そういない。
トットちゃんのお母さんの言う通り、校長先生はこどもに伝わるように、こどもがわかりやすい言葉で大切なことを伝えます。

そんなトモエ学園で、トットちゃんが生き生きと学校生活を送る、そんなお話です。


この作品を読むと、校長先生がどれだけ子ども達に愛情を注ぎ、子ども達の気持ちを理解し、尊重していたかがよくわかります。

私がいま、子ども達と真剣に関わるのも、もしかしたら小林先生のお考えが私に伝わっているのかもしれません。

トモエ学園の校舎は、使われなくなった電車だということだけでも、小林先生が、子どものことを深く理解されていたことが伝わってきます。

黒柳さんは、あとがきでこう書かれています。
私のことでいえば、「君は、ほんとうはいい子なんだよ」といい続けてくださった、この言葉が、どんなに、私の、これまでを支えてくれたか、計りしれません。もし、トモエに入ることがなく、小林先生にも会わなかったら、私は、おそらく、何をしても「悪い子」というレッテルをはられ、コンプレックスにとらわれ、どうしたらいいかわからないままの、大人になっていた、と思います。

そして、もし、今でもトモエがあったら、「登校拒否する子なんて、一人もいないだろうな。」と考えます。

本書を読むと、黒柳さんがそう言われるわけがわかります。

当時、窓ぎわ族という言葉が流行っており、退学になった学校で感じた【疎外感を表す言葉として窓ぎわという言葉をタイトルに用いられそうです。

私も子育てをするなかで、「悪い子」というのは、大人が作り出すんだな、と感じることが多々あります。

多分、そこまで問題でないことに対し、過剰なほど大人が反応したり、本来なら大人が原因で起きていることを、こどものせいにする。

私の子育てを決定してくれた、尊敬する友人の素敵な言葉があって。
こどもに騒がれて嫌なんやったら、騒いだらダメなとこに連れて来なければいい。
親の都合でこどもを連れてきて、行動を縛るのは、親の勝手だ。

本当にそうだな、と思ったし、素敵な考え方をするひとだな、と思って、ますます友人のことが好きになりました。

私も基本は頼るひとなく(というか、頼りたくなった)、一人で子育てをしていたので、どうしても騒いだらダメな場所に連れていかなければならない時もありました。

それでも、こどもにとって、「行動が抑制される負担のある場所につれてきている」と思うと、騒ぐのは当たり前やし、と、腹をたてることはなくなりました。
あまりにひどく騒ぐときは、もちろん注意はしますが、無理に連れてきてごめんね、と伝え、静かにしてもらえるようお願いし、事が済んだら「付き合ってくれてありがとう」と伝えます。

以前、アドラー心理学について書きましたが、大人であれ、子どもであれ、一人の人間である、という意味では同等で、尊重すべき存在です。

トモエ学園のベースにあるのは、その考えだと思います。

そして、こどもの力を信じ、信頼関係を結んで、それぞれを伸ばす声かけ(勇気づけ)をする。

本当に、こんな学校があったら、毎日学校に行くのが楽しいと思います。



もちろん、時代は違いますし、今、この形の教育ができるかはわかりません。

でも、ニュースや娘を通して今の子ども達が置かれている世界を見ると、大切なことが伝えられないまま大人の世界が子ども達に流れ込み、子ども達にとってしんどい状況が作り出されているな、と感じることが多いです。
・・・しんどいよね。


子ども用にルビもふられているので読みやすいと思います。
今がしんどい子どもさんや、そんな子どもさんをもつ親御さんに読んでもらいたい一冊だな、と思います。