前回のブログ、思いの外たくさんの方々にお読みいただいたようで、大変ありがとうございました。
今回は前回に書ききれなかったことを、懲りずにつらつらと語らせていただきたいと思います。
まぁ、たくさんあるんですが…本当にたくさんあるんですが…またあんなに長くなると大変なので、今夜のところはひたすらこの刀剣男士について語らせてください。
どうやらこのシリーズで重大な役割を負っているらしい、鶴丸国永について。
舞台「刀剣乱舞」維伝 朧の志士たち(再)
…と、これまでの全ての刀ステにおける鶴丸国永について。
さて。
今作品維伝で鶴丸国永を演じているのは染谷俊之さんです。
前回の記事でも書いたとおり、このシリーズで鶴丸国永を演じている俳優は二人います。染谷さんと、虚伝再演から前作の慈伝までを演じてきた健人さんです。
つまり、染谷さんは久々の登場でした。それだけに、キャストが発表された時にはものすごく騒ついたわけですが。
実際舞台を観て、「役者が違う刀剣男士は別個体」説が有力だと確信した方々は、多かったのではないかと思います。それくらい、二振りの鶴丸国永は全く違います。
それで、今回。
染谷俊之さんの演じる鶴丸は、本当に明るくて天真爛漫です。驚きをこよなく愛し、他人(刀)を巻き込んで悪意のない悪戯を連発するどうしようもないお調子者。そして、戦闘になると他のメンツを置き去りにするほど燃え滾って熱くなる。
同じ刀のはずなのに、健人さんの演じる鶴丸とは全く違います。彼の鶴丸は、もっとスタイリッシュで大人っぽく、面倒見の良さの方が際立っているような気がする。男子高校生の悪ふざけのように他人を巻き込む悪戯については、存分に度を弁えている。戦闘時にも、作戦を計画通りに着実に遂行していく冷静さを感じます。
驚きを愛するというのは、鶴丸国永の根本的な特徴ですが、健人鶴丸には驚き以上に彼を動かす何かがありそう…で、染谷鶴丸には、予想外の出来事こそが彼の原動力とでも言うような、驚きに対する強い希求を感じる。
もうほとんど正反対と言ってもいいくらいに、違うキャラクターになっています。
それが面白い。
染谷鶴丸は解き放たれた獣のように(笑)今作の笑いどころの8割以上に絡んでいます。笑いあるところに鶴丸あり。凄まじいまでの笑いのセンス。若者風に言うならば「ギャグセン高すぎ」ってやつです。
しょっぱなから飛ばしに飛ばす染谷鶴丸ですが、個人的にお気に入りの笑いどころは、まずここ。
戦闘でヘロヘロになった堀川国広をよしよししつつ、懐かしのおはぎネタをぶっ込んでくる。爆笑
突然のおはぎネタ。
事情が分からない方には全く訳わからなかったでしょう…が、ここで笑った人は、確実に虚伝を観てます。笑
いやね、虚伝で有名な軍議のシーンがありまして。そこで、三日月宗近と鶴丸国永がちょいと悪ふざけをしていたんです。
なにしろ演じている鈴木拡樹さんと染谷俊之さんは座組みの中で比較的ベテランでしたし、その遊びっぷりが絶妙すぎてですね…軍議はその後、初演再演通して最も注目されるシーンになったわけですが。笑
その、注目のきっかけになったのが「おはぎ事件」なんです。まぁ、詳しくは虚伝のDVDを観てください、マジで後を引く面白さなので。
実際刀ステでは鉄板ネタ、さらに映画の時にもメイキングでネタにされてたくらいです。
それが、そもそものきっかけを作った染谷鶴丸が自ら蒸し返したわけですから、もう笑うしかない。笑
そしてついでに、あー、やっぱりこれ、染谷鶴丸は健人鶴丸より後っぽいし、ということは虚伝は再演→初演の順なのかな〜なんて、考えさせられたりもした次第です。
次。鶴丸が敵の残骸をめちゃくちゃたくさん持ってくるところです。これは外せない。笑
ネタバレなんて無粋な真似をしてはなりませんが。絶妙な裏声と、なんだかんだ真面目な二振りをとことん揶揄おうとする徹底的な悪戯野郎感。爆笑
私は断言しますよ。
このシーンは、蔵出し映像集で日替わり映像としてコンテンツを確立する。
笑
このコミカルさがあったからこそ、この直後の岡田以蔵と肥前忠広のシリアスなシーンが引き立ちます。
笑いあり、涙あり、というのを地でいくようなこのワンシーンが、創作的なテクニックの結晶という気がします。
舞台「刀剣乱舞」という末満健一さんを中心とするチームが作り上げたシリーズの魅力は、こういう目立たないけどものすごく高度な工夫に裏打ちされているんだなぁとしみじみします。
もちろん、何度も繰り返して見て、冷静に色々考察しないと全く全然気づかないんですけども…初見で見破れたらかっこいいんだけども(´・ω・`)
さて。面白鶴丸シーンとして推したい最後は、高知城下を吹っ飛ばす爆弾のスイッチを渡された鶴丸の芝居!!です!!
これ、めちゃくちゃ可愛くて。大好きなんですよ、あの、本当にほんの一言なんですけど「わ、わくわくするなぁ…っ!」って、もうめちゃくちゃ声が震えてて。あれ、大袈裟なようですごく自然だと思いませんか。すごく、こう…自分の身にも覚えがあるような気がしません?あの感じ。
ワクワクしてどうしようもなくて、胸の高まりが抑えきれずに声も何もかも震えまくって制御出来なくなる感じ…傍から見たら「おめぇ泣いてんの!?なんで!?笑」ってなる感じ。笑
健人鶴丸は、こんなに子どもっぽくなかったんですよ。いや、それがいいとか悪いとか、好きとか嫌いとかじゃなくて、どちらもすごくいいんですよ。
面白いじゃないですか、こんなに純粋無垢にお祭り騒ぎができる刀と、どこかキャラクター付けとしてはしゃいでいるような大人びた刀が、同じ刀だなんて。
俳優の、あるいは彼らの演技の違いが刀の個性へと拡散していく…人間が演じるのでなくては表現できない、複雑な面白さだと思うんです。
すごく短いシーンだったけど、だからここ好きだなぁって。単純に笑えるだけじゃなくて、色んなものを内包しているシーンだから、好きだなあって思うんです。
ここから、加速度的にシリアスな、胸が苦しくなるよなシーンになって行きますからね、特に。
このシーン、心の拠り所です。
いや、もちろん、全編通してちょこちょこあるんですよ、鶴丸が支える笑いどころはめちゃくちゃたくさんあるんです。そんなに飛ばさないでくれよってお願いしたくなるくらい。笑
「ちょっとちょっと刀剣男士ぃ!」
のくだりとか。ヤバい。初めて会場で聞いた時には泣いた。マジで、笑いすぎて。
戦闘シーンも、相手を明らかにおちょくってる感じ、もうめちゃくちゃ面白いんですよ…これは染谷鶴丸ならではって感じで、鶴丸国永お得意の「後ろだぜ?」ってセリフに余裕を感じるんですよ。それも健人鶴丸のスタイリッシュな余裕ではなく、ただの男子。おめー中高生男子かよみたいな。笑
そんなわけで、全部挙げていたらきりがないので、笑いどころを語るのはこれくらいにしておこうかな。笑
さぁ、で、最後に語りたいのは。
染谷鶴丸の染谷鶴丸らしいなと感じるところ。きっと、この全く同じシーンを健人さんが演じたら、違う鶴丸になるんだろうなって思うシーン。
それは、特命調査の最後。敵の首魁を倒し、任務が終了した後に、鶴丸と小烏丸とが二人きりで語り合うシーンです。
陸奥守吉行が坂本龍馬との物語を閉じ、改変された朧の文久三年土佐高知城下の淀みが晴れた頃。鶴丸と小烏丸の二振りは、三日月宗近が閉じ込められている円環について考察しています。悲伝の内容を継承した話です。
すなわち、この鶴丸は、自分がいない本丸(悲伝の鶴丸は健人鶴丸でした)で起きたことも、きちんと認識しているんですね。
お前も三日月宗近を円環から連れ出す手立てを探していたのだな、という小烏丸に、鶴丸は言います。
「そんなんじゃない…俺はただ、寂しいだけだ。」
寂しい…とは。
なんと単純で感情的な言葉であることか。
小烏丸はその言葉を「らしくない」と言いますが、きっとそれは互いに分かり合いたい事柄から、だいぶズレた言葉だったのでしょう。
鶴丸はそれが「らしい」かそうでないかは自分でも分からないと笑い、小烏丸も失言だったと笑います。笑ってはいるけれど、きっと二人の間には、二人にしか分からない、なんらかの「秘密」があるのでしょう。
感情的で人間的。
虚伝初演以来の染谷俊之の鶴丸を象徴するような、そんなセリフでした。
「俺はただ、寂しいだけだ。」
維伝は、悲伝とは違う方向性だけど、辛いな。
何度観ても泣いてしまう。人間も、もしかしたら、自分を何者かと思い込んでいる朧ろな存在なのかもしれない。そして同時に、傍から見たらその姿はあまりにバラバラでどこにその本当があるのか分からない…そんな虚ろな存在なのかもしれません。
舞台「刀剣乱舞」、これからもますます、目が離せませんね。
というわけで、今夜はとことん、染谷さんが演じる鶴丸国永について語りました。
次は、また違うところに注目しながら見たいと思います。笑
最後までお付き合いくださった方がもしいらしたら。本当にありがとうございました。
いつか是非、あなたと語らいたいです。
では、また!