8月13日(金)
その日、僕はじりじりと照りつける晴天の下のトウモロコシ畑の中を、ひたすら西へと自転車をこいでいました。
5時をまわったくらいです。
急に、それまでの青空が嘘だったかのように西の空から灰色の雲が空を覆い、あっという間に空は暗くなってきました。
西の空の雲はますます不気味さをまし、それはもう灰色というよりは黒色の空といった様子でした。
瞬間、真っ黒な西の空が真っ白になります。雷です。
数分もしないうちに、無数の稲妻がごろごろという地響きのような音とともに姿を現してきました。
やばい!あと数分でこっちにも嵐が来る!!
そう思ったのは、1km位目の前にあったはずの小高い丘が、地面まで続く真っ黒な雲に覆われてその姿を消していたからです。
すごい勢いの雨が降っていることは、容易に理解できました。
ちょうどそのとき、道のそばに農家の人が青空市場で使用していると思われるプレハブ小屋を発見。
なかにはだれもいない。鍵もかかっていない。
僕はいそいでその小屋に逃げ込みました。
まさに、小屋に逃げ込んだと同時に、すさまじい突風と共に、滝のような雨が地面を叩きつけました。
鼓膜を破るのではないかと思うほどのバキバキーッという雷鳴は、本当に大地を切り裂くかのようで、僕は音の大きさもさることながら、恐ろしさのために必死で自分の両耳をふさいでいました。
小屋の窓にはガラスがはめられておらず、上下左右から雨が容赦なく飛び込んできます。
小屋の中にいるにも関わらず、全身ビチョビチョ!
その窓の外では、置かれていたベンチや簡易トイレBOXが、まるでダンボールのように軽々と風で吹き飛ばされていきます。
僕は、この小屋も吹き飛ばされないだろうかと、本気で恐怖を感じていました。
圧倒的な大自然の脅威の中で、ただひたすらに耳をふさいでうずくまり、嵐が過ぎ去るのをただただ祈っていた僕の恐怖感、心細さを十分に表現する方法を僕は知りません。
一時間後、嵐は過ぎ去りました。
もし、あの時運良く小屋を見つけることが出来なかったらどうなっていただろう。
考えると恐ろしくなります。
このあと、やっとの思いでたどり着いた町は、真っ暗。
停電です。
泊まった先のモーテルのおねえちゃんと話してたら、五年間この町に住んでるけど、こんなに恐ろしい嵐は初めてだと言っていました。
そんな嵐にトウモロコシ畑のど真ん中で遭遇した僕は運がいいのか悪いのか??
無事に帰ってこれた今、運が良かったのかなとも思えますが・・
嵐が過ぎ去った後の空。