風立ちぬ(ネタバレあるかもよ) | このために生きてる。

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※すべて個人の感想です

飛行機設計士 堀越二郎の半生。
イタリアの設計士カプローニと夢でつながり、結核の少女菜穂子と出会い、零戦を作るひと。

ものすごくファンタジーな映画だと思う。
描写の話ではなく、お話が。
トトロやナウシカ、ラピュタに比べると史実を元にした話だからファンタジーではないかもしれないけど、それでもファンタジーだった。

だからかどうか分からんけども、私は終始泣きっぱなし。

最初に二郎と菜穂子が出会う場面はメルヘンだし、その後大震災が起こるのはドラマティック(タイミング的な意味で)。
その後二人が再会するのが(多分)どちらも弱って静養しているところで、ドイツ人カストルプから世界の弱っている状況を聞いて、付き合いを始める。

二郎は同期の本庄と会社で出世しながら、ひたすら美しくて飛ぶ飛行機を作り続ける。
貧しい人を救うよりも戦争の道具を、お金をかけて作るという世界の矛盾に気づくけど、それよりも自分の理想を追い求める。
(理想は世界の理想じゃなくて、飛行機の理想)

思想犯とか、社会の意思とか、いろんなものをヒント無しに詰め込んでちょっと分かりづらかったけど、それも二郎の興味のなさと思えばさもありなん。

二郎が菜穂子に惹かれた理由がどうも言葉にできないんだけど、まあなんとなく腑には落ちる。
どこかの解説で菜穂子がただ美しかったから、てあったけどどうなんだろう、ちょっと分からない。
菜穂子が最後身を引いたのは美しくない自分を見せたくないってことだったけど、どうなんだろう。
本庄の「しっかり仕事するために身を固めるという矛盾」が終わったからじゃないのかなあ。
零戦ができたから、菜穂子はもう役目が終わったって。

理想の機体が出来てしまったから、二郎は死んでも良かったけど菜穂子が手を振ったから、生きねばと思ったんじゃ、と私は思った。

でもそんなのファンタジーだ。
ただ理想を創り出すことを何よりの第一項としたアーティストの話だ。
実際の堀越二郎がどうだったのかは私には分からないけど。

公式HPの企画書にある「 自分の夢に忠実にまっすぐ進んだ人物を描きたいのである。夢は狂気をはらむ、その毒もかくしてはならない。美しすぎるものへの憬れは、人生の罠でもある。美に傾く代償は少くない。」が結局全て。

でもって、男はロマンを追いかけるし女(加代)はリアリストだねwww



庵野の声は期待してなかったけど、人間味のない感じがよかった。
淡々とした奥に優しさとか人間らしさを求めたくなるけど「あるかもしれないね」で答えをくれないあたり。

本庄は可愛いし、黒川さんもかわいい。
街も村も生きてる。
SEが声とは分かんなかった。
アレを見て喫煙どうこうって議論はあほかと思う。

確かにこれ作っちゃったらもう暫く作ろうとか考えられないな。

とかいろいろ言ったけど、もう一回見たい。
でもこれは現実に似たファンタジーだから、家では見ないな。
現実が少しでも脇目に見えたら、すごく意味のない話になるんじゃなかろうか。


※以上の文章全てに「だと私は思う」が付きます。