恋の矢 あたしのオトコ ヒミツ



今日はいい天気でしたねぇ晴れ
私は洗濯を2回もしました。
そして大掃除も。
あーきれいな部屋は気持ちがいいわぁードキドキ


そしてよくあることですが、大掃除中に昔の写真が出てきて、ついついそれに見入って掃除は中断。
ひとりで大盛り上がりでした。


そしてふと、あることを思い出しました。


確か中2のとき、群馬に住むおばあちゃんのところへひとりで行くことにしました。
どうしてそうなったのか経緯は覚えていません。
とにかく、ひとりで、しかも初の電車で電車
いつもは親の運転する車でしたから。


青春18きっぷを使って行くことにしました。
おばあちゃんの家までは、上越線で約2時間半を揺られ、乗り換えてさらに30分。
山間の小さな駅に着きます。
そこから今度はバスに乗り、15分。
やっとおばあちゃんの家まで歩けるところに到着。
そこから徒歩10分、という不便な場所です。


電車を降り、2時間に1本しかないバスを待ちます。
使う人が少なく、廃線になるかもしれないとのこと。


もうお尻が痛くなるくらい硬いベンチで待ちくたびれて、やっとバスが見えたときには、心細さから少し開放されて、あやうく泣きそうでしたガーン


運転手さんが、まるで異国のようなこの場所まで私を救いに来てくれた王子さまに見えてしまいそう。
王子さま(実際には白髪のおじさん)の運転するバスに乗り込んだときに、そのオモシロ事件は起こりました。


ハスには先客として、おばあさんがふたり乗っていました。
バスが発車すると、のどかな景色が車窓を流れていきます。
ああ・・・田舎だなぁ・・・空気が気持ちいいなぁ・・・。


そんなことを思いながら、長旅の疲れでちょっと眠くなってきました。
しかし、おばあさんの会話が耳に入ってきた瞬間、眠気が吹っ飛んでしまいました。


「・・・そういうわけでねぇ、今日は男に会いに行くのさ」
「へぇ。 そうかい。 あんたは男がいていいねぇ。 何人いるんだっけ?」
「3人さね」
「そうかい。 それじゃ、忙しいねぇ。 全部の様子を気にしてないといけない」
「まぁねぇ。 どれも優しい男だよ。 あたしを大切にしてくれるねぇ」


・・・マジですか目汗
ちらっと見ると、ふたりとも、70歳とかそのくらいのおばあさんに見えます。


元気だなぁ。。叫び


でも、いくらなんでも、恋人が多すぎやしないだろうか。
3人って・・・。


「あたしんとこは女しかいないんだよ」
「そうかい。 女は、嫁に行っちゃうからねぇ」


あ。
もしかして、自分のお子さんの性別のことですか、男とか女って。
息子さんが3人いるってことですね・・・。


中学生の私は、自分の想像力の無さに、いや、おかしな方向にあることに、人知れず赤面したのでした禁止


さて、明日もお仕事がんばりましょう・・・。
おやすみなさい三日月


MOMOKOぶーぶー



















UFO 年上の女 ガックリ


今日は土曜日。
そして、もうすぐGWですねニコニコ
嬉しいなぁぁ~ラブラブ


とまぁ、そんな感じで今日は仕事をちゃっちゃと片付け、夕方から私の大好きな親戚のお姉ちゃんと、赤坂のオシャレなレストランでゴハンしてきましたナイフとフォーク

「お姉ちゃん」は、「アラフォー」で、丸の内でバリバリ働くキャリアウーマンです。

『あたしは見た目はアラフォーには見えない。 まだ若い子に負けない』

というのが、お姉ちゃんが内心思っているところだったのですが、今日、彼女のその自信を打ち砕く事件が起こりましたガーン

土曜日の午後4時、お姉ちゃんと私は丸の内線に乗り、お目当てのレストランに向かうところでした。

電車に乗ると、2つまとまって空いている席がなかったので、私とお姉ちゃんはそれぞれ空いている席に勝手に向かい、座りました。

結果、ちょうど正面に向き合って座るような形に。
それほど混んでいなかったので、座席の前に立っている人はまばらでした。

しばらくすると、私の右隣に座っていた若者ふたりが、ひそひそと話しているのが耳に入りました。
「おい。 オマエ年上好きじゃん。 ああいうのはどうなの」
「どれ」
「前にすわってるおばさん」
「あ? ・・・おいおい。 年上っつっても限度があるだろ。 あれは無理無理」
そしてふたりで、だよなぁ!とうなづきあい、いひひひひ、と頭悪そうな笑い声をたてましたドクロ

そうです。
彼らの言っている「おばさん」とは、私のいとこのお姉ちゃんのことだったのですパンチ!

き・・・きこえたんじゃないだろうか・・・本人に叫び
傷つく。 これは傷つくぞ。

お姉ちゃんを見ると、文庫本を膝の上に開いて、その上に目を落としていました。
その様子からは、聞こえなかったのかそれとも聞こえてしまったのか、判別がつきませんガーン

私はチラっと、笑っている隣りの若者を見ました。
高校生くらいでしょうか。ニキビの浮いた頬をした、腰パンと汚れたスニーカーの若者ふたりでした。
髪はぐちゃぐちゃと跳ねていて、はたしてそれであっているのかどうかはわかりません。
背中か腰かわからないくらいの位置でだらしなく座席に座り、そのために通路の真ん中くらいまで、たいして長くもない足を突き出していますグードンッ

私とお姉ちゃんは赤坂で電車を降りました。
お姉ちゃん、無口になっているところを見ると、やっぱりさっきの聞こえたんだろうな・・・。
私は、まるで自分が悪いことをしたかのような気分に。

「・・・こっちから願い下げだっつーの。 あんな汚いクソガキっむかっ爆弾
低い声で、吐き捨てるようにお姉ちゃんが言いました。

「だ、だよねビックリマーク
思わずどもりながら相槌を打つ私叫び

お姉ちゃんは、おびえている私をじろっと見ました。
そして、次の瞬間、大笑いしました。

「あんたがビビらなくてもいいでしょーが! ばかねぇ。 あんな子供の言うこといちいち気にしてて、アラフォーやってられるかっつーの」

実際、お姉ちゃんはまだまだイケてますグッド!
あ、ちゃんと、優しくてかっこいい彼もいるしねビックリマーク
結婚式はまだはてなマーク
お金貯めて、私がブーケを贈るからねブーケ1


MOMOKOコスモス





ハンバーガー 『ハンバーガー』 ビール

先日、滅多に行かない「八王子」という場所で、これまた滅多に会うことのない友人「タクマ」とすれ違いました。
なお、タクマは成人男子、私は成人女子です。

しかし、私たちはお互いを異性であると意識したことはなく、これからも多分、ないでしょうあせる

そういう感じではありますが、なにしろ会ったのは数年ぶり、しかもお互いアウェーな八王子なんて街で偶然に会ったものですから、そのシチュエーションになんだか盛り上がってしまい、

「おおービックリマーク 久しぶり!! あ、ヒマなら今からメシでも行くはてなマーク

という話になりました。

聞けば、タクマは、今からあるバーに向かうところ、とのこと。
しかし、その目的は「ハンバーガーハンバーガー」だといいます。

「この辺にうまいバーガー屋があるっていうんで、わざわざ来たんだ」そうです。八王子まで。
ちなみにタクマの家は、埼玉県さいたま市とのこと。
ここからえらく遠いな。。ショック!

バーでハンバーガーというのは意味がよくわかりませんでしたが、そのとき私はとてもお腹がすいていたし、ハンバーガーは大好物なので、黙ってタクマについてくことにしました。

歩くこと10分強、そのバーに着きました。
オールドアメリカンな感じで、いい雰囲気。
なるほど、この雰囲気ならハンバーガーはありだな、と思いました。

開店したばかりで、お客さんは誰もいませんでした。
まだ午後6時で、バーに人が集うには早すぎたのでしょう。

タクマも私もお酒が飲めないので、バーのカウンターの隅っこに陣取るなり、

「ハンバーガーふたつと、ジンジャーエールとコーラ」

と注文しました。

マックに来た大学生かガーン
と自身に突っ込みつつ、空腹の私はハンバーガーを楽しみに待ちました。

5分ほどして出てきたハンバーガーは、小さめバンズから具があふれんばかりの、かなり高さのある、いかにもおいしそうドキドキな様子をしていました。
そこに、瓶入りのケチャップとマスタードをたっぷり塗って、かじりつくと・・・

うまい!!

またジンジャーエールもうまい。
バーガーとめちゃめちゃ合います。

タクマと私はあっというまにハンバーガーを完食し、追加でピクルスとポテトを注文しました。
それを食べながら、ふと思いました。

タクマは確か、数年前に結婚したはず。
家に帰ってご飯を食べなくていいのだろうか。

「タクマはこうやって、ちょいちょい女の人とふたりでご飯食べるの?」

タクマはうーん、と考えて、

「まぁ、来るっちゃ来るね」

と言いました。

「奥さんなんも言わないんだ?」
「いちいち報告しないもん」
へー。 まぁ、・・・だよね。

「彼女も仕事で毎日けっこう遅いから、晩飯は別々なんだ」
「ふーん。 子供は?」
「まだいない」

子供のいない夫婦って、恋人同士とあんまり変わらないのかなぁ。
タクマも独身の頃とあんまり雰囲気変わってないもんなぁ。

「モモコは結婚してないの?」
「してない。 未遂はあるけど」
「未遂・・・変なの」
まぁ、結婚しようかって話になったけど、結果的に別れた、ってことです。
よくある話・・・。

「そんでさ、さっきの話に戻るけど、奥さん以外の人とふたりでご飯って、アリなんだ」
「アリだろ? メシ食って話するだけなんて、なんも問題ないっしょ」
「ほんとにそれだけ?」
「それだけだねぇ」
「浮気とか」
「しねぇな。 ややこしいことになったらめんどくさいし」

さらにききだすと、タクマと妻の間のルールでは、

『平日に異性とふたりでご飯に行くのはOK。 且つ、いちいち報告しなくてもよい。 ただし、休日にわざわざ約束して会うのはNG。 グレーな場合には相談すること』

とのこと。

グレーな場合に本当にいちいち相談しているのかどうかは疑わしいところですが、興味深かったのは、休日にわざわざ会うのはだめだということ。

タクマの妻によると、仕事帰りにご飯に行くのはいいけど、お休みの日に約束して会うのはデート度が格段にアップするのでダメなんだそうです。

仕事帰りでも、したければなんでもできるような気がしますが、そこは言わずにおきました得意げ

「うちのカミサンも、同僚とかとメシくらい行くみたいよ」
へぇー。 自分もするから相手にも言わないのかなぁ。
私と話が合いそうだなぁ。

ちなみに私も、彼がいても、異性とのご飯は行く派です。
でもそれは、まだ結婚していないからということで、自分を少し大目にみているところがありますね。
だって、結婚相手には、今の彼より素敵な人がいるかもしれないですから。
逆に、イマイチな男の存在により、自分の彼の素晴らしさがわかるかもしれない、というのもあります。
だから、いろんな人を見るべきだと思うのです。
そして、ふたりでご飯を食べる、という程度のことが、深すぎず浅すぎず、相手をある程度知るのにちょうどいいのです。
まぁ、カフェでお茶する、でもいいでしょう。
いずれにしても、彼なり彼女なりと、ふたりきりで向き合っている世界はちょっと危険だと思います。
視野が狭くなりますからね。
世の中のいろんな人と関わって、そのうえでパートナーとも誠実に向き合えばよいのです。

おお。我ながらいいことを言うではないかにひひ

ということで、今日はこの辺で。
そろそろ仕事に行ってきます。
今日も偶然、珍しい友人に会ったりしたら素敵なのですがラブラブ
まぁ、ないか。

では音譜

momokoチューリップ赤






ペタしてね




人魚    (9)



「で? 言い訳してみる?」
僕はコーヒーをごくん、と飲み込んだ。
「・・・なんの?」
リョウコさんはくすっと笑った。
「まったくもう。 ・・・まぁいいわ」
彼女は、大人の女性の美しさと、幼いかわいらしさとを、両方持っている。

「私、あなたのこと知ってたわよ」
意外な言葉に、僕はびくっとした。
「『認識してた』って感じかな。 よくプールで一緒になるなって。 いつも見られてるのも知ってた」
バレていた。
気づかれているなんて想像もしなかったのに。
恥ずかしくて顔から火が出そうだった。

「今後のために言っておくけど、女はね、注目されていることくらい、ちゃんとわかるの。 基本的に自意識過剰な生き物なんだから」
僕はうつむくしかなかった。
耳まで赤くして、手に持ったカップの中をじっと見ていた。

「しかもあなたみたいにあからさまな態度なら、誰でも気づくわね」
「・・・きれいな人だな、と思って見てました」
とっさに言葉が出た。
リョウコさんはちょっと驚いた顔をした。
僕は言ってしまって、瞬間的に楽になるのがわかった。
彼女は優しい笑顔になった。
「そう。 嬉しいわ。 ありがと」


今度は僕がききたかった。

なぜ僕を部屋にあげたんですか。
僕があなたを見つめていたと知っていながら、なぜ?
僕を子供だと思ってからかっているんですか。

なぜ、さっき僕にキスしたんですか。


でも、僕にはどれも言えなかった。
ただ、カップの中を凝視したままじっとしていた。


リョウコさんは立ち上がり、僕の右側に座った。
体が触れるか触れないかという近さだった。

そして僕の手からカップを取り、テーブルの上に置いた。
からっぽになった僕の手は所在無さげに宙に浮いた。

浮いている僕の右腕を取り、少し上げると、彼女はその下に自分の体をもぐりこませた。
彼女の髪から塩素とシャンプーの混ざった匂いがした。
僕の好きな匂いだ。

リョウコさんの右肩を僕が右腕で抱いている形になった。
彼女の肩はちいさかった。

彼女は僕の胸に頬を寄せた。
「見た目は細いのに」
そう言って言葉を切った。
細いのに? ・・・なんだろう。

「このほうが話しやすいでしょ?」
リョウコさんは言った。

そんなわけない。絶対に僕をからかっている。
もう心臓のバクバクは最高潮だ。
きっとリョウコさんにもきこえている。

でも確かに、彼女の大きな瞳で正面から見つめられていると、何も言えなくなる。
「こうしていると、とてもあたたかい」
リョウコさんは目を閉じているようだった。
僕はそっと彼女の髪をなでた。
「しばらくこうしていてもいい?」
「・・・うん。 いいよ」

どのくらいそうしていただろう。
何も話さず、ただ彼女を腕に抱いていた。

そのうち僕は、さっきの激しい緊張から来た疲れのせいかなんなのか、リョウコさんを腕に抱いたままの体勢で、眠りに落ちてしまった。


目が覚めると、僕はベッドで横になっていた。
リョウコさんを腕枕している。
彼女は僕の腕の中で、すやすやと眠っている。
激しく混乱した。
これはどういうことだ?

着てきたジーンズとTシャツではなく、スゥエットらしき上下を着ている。
リョウコさんが何を着ているか暗くて見えないが、手触りからすると、つるっとした素材のパジャマらしい。

裸でなくてよかった。とっさにそう思った。

体を動かしてリョウコさんを起こさないように気をつけながら、ベッドサイドの時計を見た。
深夜2時。

必死で考えた。
どうしてこの状態になったのか。

次第に思い出してきた。
僕たちはなにもしていない。
ただ、こうして寝ているだけだ。

彼女がそうしたいと言った。
よかったら朝まで抱いていてほしいと。

僕は、いいよ、と言った。
そして、彼女を大切な卵を抱く親鳥みたいに腕に抱き、ただ一緒に眠ったのだった。

僕はそっとリョウコさんの髪にキスをした。
腕に抱いた彼女のぬくもりが心地よかった。
そうしているうちに僕はいつのまにかまた眠っていた。



その翌日、リョウコさんの部屋を出たのは昼過ぎだった。
自分のアパートまでたどりつき、ドアを開けると、ゆりえが部屋の中で待っていた。
合鍵を持っているので勝手に入れる。

ゆりえは僕の顔を見るなり、手元にあったティッシュの箱を投げつけた。
「今までどこでなにしてたのっっっ!?」
すっかり忘れていたけれど、昨日の夜はゆりえと会う約束をしていたのだった。

「男友達の家で飲んだくれて、つぶれて、具合が悪くて連絡できなかった」
僕は本当に体調が悪そうな様子でそう言った。
めんどくせぇな。そう思ったからか、自然とそういう態度になった。

「バカ! うそつき!」
今度は床に転がっていた教科書をつかみ、僕に投げつけた。
そして僕の横をすり抜けて、部屋を飛び出していった。

うそつき。
ゆりえはそう言った。
どうして嘘だとわかってしまうんだろう。
女の子は不思議だ。


そのまま1週間ほど、ゆりえは連絡をよこさなかった。
僕からも連絡しなかった。
考えるのは、リョウコさんと過ごした夜のことばかりだった。
現実とは思えない。
彼女が僕の腕の中にいたなんて。


あの夜僕は、リョウコさんを胸に抱いたまま、朝まで眠った。
彼女が腕の中で動く気配がして、僕も目覚めた。

「おはよう」
彼女が大きな目を細くしてほほえんだ。
化粧っけのない顔は、朝日を浴びて、幼く見えた。

「おはよう」
僕はリョウコさんの髪をなでた。
彼女は僕の首筋に顔をうずめた。

「久しぶりに本当によく眠れたわ」
「そっか。 よかった」

それだけ言い合うと、ふたりは黙った。
どのくらいたっただろう。
小さな声で、リョウコさんが語り始めた。




あなたがドーナツ屋で見た男性ね、わかったと思うけど、あれは私の恋人だった。
今はもう違うの。
別れたわ。

彼は女にだらしなくて、何度も浮気した。
しかも、わかりやすいの。
すぐにばれるの。

私と一緒に暮らそうとか、結婚しようとか言っておきながら、他にも付き合ってる人がいた。
それもひとりじゃなくて、ふたりとか、多いときには3人とか。
それでも私は彼が好きで、失いたくなかった。
だから気づかないふりをしていた。
結婚すれば落ち着いてくれると信じて、見ないふりをしていたの。

でも、最悪なことが起きた。
交際相手のひとりが妊娠してしまったの。
妊娠したのは、私たちが行ってたあのスポーツクラブのインストラクターよ。
彼もあそこでインストラクターをしていたの。
あなたも見たことあったんじゃない?

その妊娠したひとも、自分だけが彼と付き合っていると思っていたらしいわ。
だから職場で堂々と、彼の子供を妊娠しているって話したんですって。

妊娠が周知のこととなり、彼はあとにひけなくなって、その人と結婚することになった。
2ヶ月ほど前に彼から突然そう告げられたの。

私は悲しかった。
彼を失うなんて絶対にいやだった。

でも別の人を妊娠させてしまった事実を、無かったことになんてできない。
実際に命が芽生えてしまっているんだから。

私たちは別れるしかなかった。
彼をさんざん責めて、泣いて、叫んで、もう気が狂いそうで。
彼も泣いていた。
私と別れることがつらくて泣いているのかと思った。
浮気を後悔しているのかと。
泣いて私に謝るのかと。

でも、そうじゃなかった。
彼の口から出た言葉を聞いて愕然とした。

俺は誰とも結婚なんかしたくない。
子供なんて欲しくない。

彼はそう言って号泣した。
私は耳を疑った。
そしてやっと気づいた。
この人は、自分のことだけしか考えていない、だめな男なんだって。

気持ちがいっきに引いていくのを感じたわ。
チャラチャラといつまでも、若いときのように大勢の女たちと遊んでいたかっただけ。
責任感のカケラもない。
彼と結婚する女性がむしろ気の毒。

頭ではそうわかった。
だから、別れることについては躊躇しなかった。

でもね、ずっと好きだった人を忘れるとか嫌いになるのは難しいわ。
気持ちはコントロールできない。
少なくとも私には、できない・・・。

今でも嫌いにはなってないみたい。
まだふと、会いたいって思ってしまうもの。

そんなことがあったから、しばらくはあのプールに行く気が起きなかった。
でも、もう大丈夫よ・・・。



「変な話をしてごめんなさい。 とても若いあなたに私の気持ちをわかってもらうのは無理がある」
確かに僕には実感できないことだ。

でも、理解はできる。
リョウコさんのつらさや悲しみは理解できる。

そう思ったけれど、僕はなにも言わなかった。
彼女は多分、僕になにかして欲しいわけじゃないだろうから。
彼女のことを本気で心配する誰かに、話をきいてほしかっただけだと思うから。

もし僕がその大切な聞き役を果たすことができたなら、とても嬉しい。
だから僕は、あいづちのかわりに、ただ黙って彼女の髪をなでていた。


別れ際、僕たちは電話番号やメールアドレスを交換したりはしなかった。
僕は名前さえ名乗らなかったことを後で思い出した。
リョウコさんも僕の名前をたずねなかった。



リョウコさんは、それ以来プールに来なくなった。
理由はわからない。


リョウコさんの部屋へは、あれ以来一度も行っていない。
部屋番号がわかっているのだから、彼女の部屋のインターホンを押すことはできた。
でも、僕はそうしなかった。


1週間ほどして、ゆりえが連絡してきた。
自分から電話してきたくせに、声が少し不機嫌だった。

「もう私がきらいなの」
ゆりえは泣きそうな声で言った。

「きらいじゃないよ」
ゆりえは本当に電話の向こうで泣き出したようだった。

ちゃんと謝らないと。
僕は急に我にかえった。

「本当にごめん。 ゆりえが好きだよ。 それは変わらない」
「じゃ、どうして電話してくれなかったの。 メールもなかったし」

だよな。そりゃそうだ。

「携帯は切って、毎日座禅を組んで反省していたから」
「ばか。 ふざけないで」
泣き笑いの声でゆりえが言った。
確かにバカだよな。ゆりえもいい迷惑だ。僕は勝手だ。

「ごめん。 本当に反省してる。 今から行っていい?」
「うん。 ・・・きいていい?」
「なに?」
ゆりえは、しばらく間を置いて、小さな声で言った。
「私のこと好きなのは信じるけど、・・・他にも好きな人がいるの?」
「いないよ」
僕は即答した。
「ゆりえだけだから。 何も心配はいらない」
ゆりえは、うん、と素直に言った。

僕たちは仲直りして、また前みたいに毎日を一緒に過ごすようになった。



僕たち若者には、毎日毎日違うできごとが起こる。
そして、今この瞬間は、どんどん過去になっていく。
半年前のリョウコさんとの出来事。
たった半年だけど、とんでもない昔のことのように思える。
でも、昨日のことにように思い出すこともある。


リョウコさんと過ごした夜から1年が経った頃、僕は例のマンションの入り口で、リョウコさんの部屋のインターホンを押した。
「はい」
リョウコさんではない、年配の女性らしき声がした。
「リョウコさんはいますか」
リョウコさんの苗字を知らないので、こうきくしかなかった。
「はい? そういう人はうちにはいませんけど」
女性が怪訝そうに答えた。
「・・・そうですか。 失礼しました」
ブッ、とインターホンが切られた。


やっぱり。
リョウコさんはもうあの部屋にはいない。

僕はなんとなくわかっていた。
もう彼女はきっといないと。

今日ふとそれを確かめたくなって、この1年足を向けることのなかったマンションの前まで来たのだ。
彼女はもう僕のアクセスできない場所へ行ってしまった。
探さないけれど、もし万が一探したくなったとしても、何も手がかりはない。

会ってしまえば、リョウコさんの存在は、今でもきっと僕の心を乱す。
でも会わなければ、時とともにだんだん忘れることができるはずだ。
もう、リョウコさんを探す手がかりはないのだ。
偶然どこかで会うとか、そういった可能性もほとんどないだろう。

良かった。
もう自分がこのマンションに来てしまうのではないかと心配しなくて済むのだ。
これで本当にリョウコさんから卒業できる。


僕は思う。リョウコさんは人魚だった。
そして今はもう、どこか遠くの海へ行ってしまった。
今度彼女がみつける人間の王子様は、誠実なひとでありますように。



(終)