まーくんとはクラスが離れてしまった。
そして、和ちゃんと初めて同じクラスに。
なぜか席もお隣。
女の子達の視線が痛い。
「るー。」
横からにゅっと手が伸びてくる。
和ちゃんの手。
5年生の後半からぐんぐん背が伸びて、あっという間に私を追い越した和ちゃん。
和ちゃんが和ちゃんでなくなっていくような……そんなちょっと変な気持ちになったりしたけど……。
やっぱりこの手は全然変わらない。
まあるくて優しい和ちゃんの手。
「何してんの?は・や・く。」
催促するみたいにぐーぱーって手を開いたり閉じたり。
『自分の使えばいいのに。』
昨日もおとといも……じゃなくてもっとずっと前から。
たぶん席が隣になった日から毎朝繰り返されてる二人の会話。
「やだ。るーのコレ書きやすいもん。」
ペンポーチから取り出そうとした黄色いシャーペンをささっと奪う。
「二本持ってんだからいいじゃん。どうせるーはそっちしか使わないんだし。」
奪い取ったシャーペンで私の赤いシャーペンをちょんとつついた。
「減るもんじゃないし……ケチケチすんなや。」
カチカチっと芯を出して黒板の文字を書き写している。
『……シャー芯は減ってると思う。』
和ちゃんが少し顔を上げてちらりと私を見る。
「ま、多少の犠牲はあるとしてもさ……あっ、やばっ。」
さっと手を伸ばして今度は消ゴムを持っていく。
『あっ、ちょっと!!』
取り返そうとした手はむなしく空を切った。
真奈ちゃんとおそろいの宝物なのに……。
あたりまえのように私の消ゴムを使う和ちゃんに口を尖らす。
「ん?」
『ん?……じゃなくて!ほらそこに自分の!』
和ちゃんの机の上にはちゃんとペンポーチが置いてあって、少し開いてるファスナーからはゲームのキャラクターの消ゴムが顔を出していた。
「あー、これね。これは消ゴムであって消ゴムではないの。」
透明の袋に入ったままのそれを大事そうに持って眺める。
「去年の誕生日にねーちゃんが買ってくれた限定品なんだよ。激レアなの。命の次に大事なもんなの。」
印籠みたいに私の目の前にかざし、またそっとペンポーチへと戻す。
「だからこれは使えないってワケ。はい、どうも。』
命の次に……って、消ゴムが?
呆気にとられてる私の手に使い終わった消ゴムを置いた。
「とにかくさ、るーは俺にいっぱい借りがあるんだから。」
頬杖をついてちょっと意地悪な笑みをうかべる。
「るーの恩返し……ってことで、ね。」
