いじめのスタートはとにかく、クラス全員からの無視だった。最初は『かわいそうに』という同情の視線もあったと思う。でも人間の適応能力はすごいもので、少ししたら無視することが当たり前になっていく。
私も変なプライドがあり『別に1人でも特に困りませんけど?』みたいなオーラを出して、とにかく平然を装っていた。
おそらくその行為のせいで、無視するだけでは物足りなくなってきたようだった。相手にとって、私が普通に生活しているように見えることが何より腹立たしいのだろう。
でも私のクラスは進学コース。直接手をあげたり暴力的なことは何もなかった。とにかく精神的に私を追い詰めること、それが彼らの目的だったのではないか。
まず始まったのが『私の行為ひとつひとつの実況』だった。頭をかくだけで『頭痒いんかなー、きたなー』と笑われる。くしゃみしたときには『やばいやばい。変なのとんでくるってー、バカでも風邪引くんかなー』と笑われる。何も言われたくないからなるべく静かに過ごすことを心がける。それはそれで『動かないんだけどーアレ生きてる?』と笑われる。
特にお昼ご飯はしんどかった。ご飯なんか教室で食べようものなら『えーごはん食べてるー!食べる意味ないのにー食べなかったらそのまま死ねるのにねー』と笑われる。
お弁当を教室から離れた棟のトイレに持っていき、お昼休憩はその個室内でずっと過ごすことになった。さすがにトイレでご飯は食べたくない。でも食べずに持って帰れば母に怒られる。そのため、毎日母が作ったお弁当をトイレに流して、お箸もわざわざ汚して"食べました感"を出してお弁当袋にしまう。
想像以上にしんどかった。どうしたらいいのか分からなかった。助けてくれる人が1人もいなかった。
思ってた以上に世の中は冷たく、ドラマのような私を助けれくれるヒーローは存在しなかった。