ぶーぶー ポール・オースター, 柴田 元幸, Paul Auster
幽霊たち

「まずはじめにブルーがいる。次にホワイトがいて、それからブラックがいて、

そもそものはじまりの前にはブラウンがいる。」


本屋さんでこの本を手にとり、冒頭の何文かを読んだだけで、即購入しました。

で、そのままの勢いで読了。薄い本なので読み終わるのにそう時間はかからない、

でも、いつまでもその意味を考え続けてしまうという一冊です。


体裁としては「探偵小説」というのでしょうか、探偵であるブルーがホワイトという

人物から、ブラックという人物の見張りを依頼されるところから話が始まります。


ネタバレになってしまうので、ストーリーについてはあまり細かく触れませんが、

これ以上の事件らしい事件が起こるわけではありません。シチュエーションは

現実的なのですが、ストーリーはとても抽象的。結論めいたものが出るわけでも、

事件が解決するわけでもない。でも、どんどん引き込まれて行く。


こればかりは、一度読んでその作品世界を体験してみて下さい、としか言いようが

ありません。薄くて安い文庫本ですから、ぜひ。私は永久保存版として、ハード

カバーを買っちゃいましたけどね。彼の他の本も全部読んじゃいました。今後、

当Blogに登場することになると思います。


著者のポール・オースターさん、とてもかっこいい方です 足あと

ずいぶんと久しぶりの更新です。久しぶりの更新にあたり、さて何を書こうかとしばし考え・・・決めました。

年末年始に実家に帰りましてですね、掘り出して来たこの一冊。


ぶーぶー ビル ブライソン, Bill Bryson, 高橋 佳奈子
ドーナッツをくれる郵便局と消えゆくダイナー

「こんな事実がある。最新の『合衆国統計要録』によれば、毎年40万人以上のアメリカ人が

ベッドやマットレスや枕が関係する傷害を負っているそうだ。」


「最新型のダッジ・キャラヴァンのように、17個ものカップホルダーが備え付けられている車もある。

(中略)

なぜ一人に2.43個ものカップホルダーが必要なのだろうか?いい質問だ。」


・・・だそうなんですよ。

何で枕etc.でそんなに怪我ができるんでしょうかねえ。

何ゆえにそんなにたくさんのカップホルダーが要るんでしょうかねえ。

先が読みたくなります。


ビル・ブライソン氏の本はどれも大変に面白いと思うのですが、最初に手に取ったのがこれ。


アメリカ人の著者が、十数年のイギリス暮らし(奥様はイギリスの方だそうです)を経て、アメリカに戻ってきた際に

雑誌のコラムとして連載していたものとのことですが、もうとにかくその視点が面白い。

中には、辛口なアメリカ文化の批判めいたことも含まれているのですが、ユーモアたっぷりに面白おかしく語って

いるので、批判された側も怒りにくいでしょう。語り口はとにかく軽妙でシャープ。


翻訳された文章には(特に純文学系の作品では)どうしても限界を感じてしまうことが多いのですが、これについては

元の語り口さえも想像できるような、クリスプな気持ちのよい文章が並んでいます。


コラムと言っても侮ることなかれ、私はかれこれ5年くらいにも渡り、何度も読んではくすくすと笑ってます。

中毒性アリマス足あと

ぶーぶー 枡野 浩一, 朝倉 世界一
ほぼ日ブックス#006 石川くん

「友達が 俺よりえらく見える日は

花を買ったり

妻といちゃいちゃ 」


石川啄木・・・なんて言うと、教科書の中に出てきて、どんだけ働いても暮らしが楽にならないなぁなんて

じっと手をみてる人、くらいのイメージしかないと思います。

が、当時としては革新的な歌人だったんですね、石川くん!


苦労人ぽいイメージがあったのですが、どうも誤解だったらしいということがこの本でわかりました。

相当の遊び人だったようです。(ならあの「じっと手を見る」の歌はフィクションか?!)


親しみやすいようにあえて今どきっぽく解釈されていることを差し引いても、いつの時代もみんな考える

ことって似たようなものなんだな、と感じさせられる一冊。石川くんが大変身近になります。


表紙も、こんな落書き、教科書にしたよなーって感じですしね。

朝倉 世界一氏の挿絵の脱力感もすばらしく、この本のイメージにマッチしています。


なんとなーく 「短歌って興味ないし~」 と思っている方におすすめです 足あと




ぶーぶー 京極 夏彦
豆腐小僧双六道中ふりだし

なぜ、手前は豆腐を持っているんでしょうか?」


ただ豆腐の乗った盆を持って立っているだけの妖怪、豆腐小僧にまつわるお話。

さて自分はなぜ豆腐を持って立っているのか、たとえば豆腐を手放したらどうなっちゃうのか? ・・・とか

考えだしてしまった小僧。その小僧になぞらえて、妖怪論が語られます。


普通に生活している分には、妖怪なんてうさんくさいモノとしか捉えていないのが普通だと思いますが、

京極氏の本を読んだことのある方は、妖怪の「意味」について少なからず考える機会があったことと思い

ます。彼の他の本ではなにかの事件に関連する形で妖怪についての薀蓄が披露されますが、ここでは

その「妖怪」がまさに主役。まさに氏の妖怪論の独断場です。


とはいえ、小難しく語るのではなくユーモアたっぷりにわかりやすく語られているので、そういったジャンル

の話はどうも苦手、という方もぜひご一読を。なんてったって豆腐小僧がお盆の水平をどうにか保ちつつ、

豆腐をぺろりとやりながら自己のアイデンティティーを模索する旅をしていくのです。


また、装丁が素敵なのもポイント高いです。明らかに豆腐をイメージした形、読みにくいったらありゃしない

のですが、この本にはこの装丁しかありえないという感じがします。他の京極本は内容はすばらしくても

ノベルズものが多く、全体の雰囲気として残念に思うことも多かったのですが、これは表紙の豆腐小僧の

キモ可愛い感じからしてやられちゃいました。ぜひ文庫になる前に買いましょう。


カバーをはずすとまさに紅葉豆腐です。お盆に載せて突っ立ってみるのは必須でしょう 足あと

ぶーぶー いがらし みきお

たいへんもいじーちゃん


「ウチワはむずかしいから・・・」

扇風機がキライなもいじーちゃんがウチワを薦められていったひとこと。


いがらし みきお氏といえば「ぼのぼの」で大変有名な方ですが、あえてこの本。

もともとは某ファーストフードショップ店で配布されていた小冊子に記載されていたのを読んで衝撃を受け、

ある日それがまとまった本が店頭に並んでいたので即ゲットしたものです。


「もいじーちゃん」という3歳の女の子の日常が描かれているだけの漫画ですが、小さい子の不条理さとか、

意地っ張りなところとか、かといって都合の悪いことはすーぐに忘れることとか、とにかく淡々と描かれて

います。


なにがどうすばらしいということもなく、読んで感動するってぇ訳でもありませんが、

なぜか何回も読んでしまうこと請け合い 足あと



ぶーぶー 建畠 晢
そのハミングをしも

「馬鹿野郎、茄子は"色"ではないと言っておいただろうが。

形態家と心象家の狭間に生まれ、それなりの辛酸をなめてきたはずの茄子を『構造的には余暇の海老の

擬態である』などとしたり顔で解説するのは、単なる無知で済まされる話ではない。」

(「茄子の構造」 より)


茄子っぽい色で引用してみました。


第一弾からやっかいな本を選んでしまったものですが、面白いんですからしょうがない。

文学的バックグラウンドのない私には詳しいことはわかりませんが、「散文詩」なるジャンルのようです。

こんな調子でなんとも解釈に困る言葉が並びます。が、とにかく何回も読み返さずにいられません。


個人的には、引用した「茄子の構造」が一番のお気に入りなのですが、これを読んで「これだけ弁護してもらえるまら、生まれ変わったら茄子ってのもありだな。できれば最終的には麻婆茄子となり生をまっとうしたいものだ」などととりとめのないことを考えた次第。


なかなか手にとることのないタイプの本だとは思いますが、ぜひご一読を。

えーと、読むのに若干パワーを消耗しますので、元気なときにしといたほうがいいですね 足あと